明日の株式相場に向けて=刮目の上昇パフォーマンス3題

市況
2023年5月9日 17時00分

きょう(9日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比292円高の2万9242円と反発。寄り付きに2万9000円台を回復して始まったが、この寄り付きの株価が本日の安値という下ヒゲ無しの陽線を形成。上ヒゲもわずかで陽線丸坊主に近い。大引けもこの日の高値圏を維持したことを示している。日本時間あすの夜21時半に発表予定の4月の米消費者物価指数(CPI)の結果を目前に控え、買いポジションを積み上げにくいタイミングのはずであった。ところが、そうした思惑を嘲笑うかのように日経平均は上げ足を強めた。先物主導の裁定買いによる浮揚力が働いたのは確かだが、個別株ベースでも十分に活況ぶりが伝わってくる。この相場はいわゆる“無人のエレベーター”ではない。

4月の米CPIに関するマーケットの関心は高いが、見切り発車的な動きとなっている。しかし、楽観もできないところだ。コア指数で前年同月比5.5%上昇がコンセンサスとなっているが、仮に0.2%上にズレるとかなりの衝撃波に見舞われる。というのは、3月が同5.6%の上昇だったことから、4月はその差0.1%での「減速」が前提となっているからだ。もし4月も5.6%で横並びか、万が一加速した場合は、インフレは沈静化していないというロジックを導くことになり、6月のFOMCで利上げ継続の線が濃厚となる。一方、米国株が下げても日本株は影響を受けないと強弁できるかどうかは微妙ながら、日本株優位論を裏打ちする材料はある。きょうの東京市場は売買代金が3兆2000億円を上回るなど活況で、買い主体となっているのは海外マネーであることはほぼ間違いがない。

きょうの東京市場の個別株は輝きを放っていた。決算発表絡みで「吉」と出た銘柄についてはとことん買い上がる。どのくらいの個人投資家がこの波に乗っているのかは不明だが、波状的な買いは最後まで衰えず、強気一辺倒の地合いが演出された。注目されたのはまず、JFEホールディングス<5411>。前日引け後に発表した24年3月期の業績予想では、最終利益が前期比17%増の1900億円と2ケタ伸長を予想し、株主還元姿勢も強め今期の年間配当は前期実績に20円上乗せした100円を計画、配当利回りは前日終値換算で6.1%まで高まり、これが投資マネーの食指を動かした。株価は一時15.4%高の1885円まで駆け上がった。

同業他社では東京鐵鋼<5445>が前日の後場取引時間中に発表された好決算や高株主還元策を手掛かり材料にストップ高に買われたが、きょうもその勢いそのままに大幅続伸し、JFEと併走する形で鉄鋼セクターを全面高へといざなった。

次に目を引いたのは自動車部品セクターだ。鉄鋼株同様に低PBR銘柄の巣窟だが、業績好調かつ株価が上値追いを鮮明としている銘柄が多く、特にここ最近は派手な上昇パフォーマンスが目立つ。極め付きはGMB<7214>で今月1日に前期営業利益予想の大幅上方修正を発表。これを受け短期資金の攻勢が加速、翌2日にストップ高に買われる人気となった。5連休明けは急騰後に利食われ8日ぶりに押し目を形成したものの、きょうは再び買い直され1800円台に歩を進めた。このGMBに触発され、大豊工業<6470>、ユニバンス<7254>といった銘柄も株価を激しく動意させている。

更にインバウンド特需に沸く消費関連も気を吐いた。なかでも、外国人観光客人気に加え、新型コロナウイルスの「5類」引き下げによって株高トレンド加速となったのが居酒屋関連株だ。例えば、値刻みこそ小幅ながら大庄<9979>の三角定規で線を引いたような一直線の上昇波形成は目を見張る。日足チャートを見ると陽線だらけ、4月10日以降きょうまでの1カ月間で陰線を引いた日はわずかに1日のみである。このほか、海帆<3133>が急速人気化した。目先利食われたが、DDホールディングス<3073>などの上げ足も鮮烈を極めた。

あすのスケジュールでは、4月上中旬の貿易統計が朝方取引開始前に開示され、午後取引時間中には消費活動指数や3月の景気動向指数(速報値)が発表される。海外では、ポーランド中銀の政策金利発表のほか、4月の米消費者物価指数(CPI)に対するマーケットの関心が高い。また、米10年国債の入札も行われる。国内主要企業の決算発表では、三菱重工業<7011>、トヨタ自動車<7203>、三井不動産<8801>、富士フイルムホールディングス<4901>、日本製鉄<5401>、パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス<7532>などが予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

最終更新日:2023年05月09日 17時37分

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