もみ合いのプラチナ、米FRBは利上げ停止示唆も“経済指標次第” <コモディティ特集>

特集
2023年5月10日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は4月、米連邦準備理事会(FRB)が6月以降に利上げを停止するとの見通しなどを背景に堅調となり、昨年3月以来の高値1132ドルをつけた。ただ、米地銀ファースト・リパブリック・バンクの預金流出を受けてリスク回避の動きが出ると、利食い売りなどが出て調整局面を迎えた。同行はJPモルガンに買収されることになったが、米カリフォルニア州のパックウエスト・バンコープが、戦略的選択肢について協議していることを明らかにすると、地銀の破綻に対する懸念が広がり、地銀株の売りが加速した。

ただ、4月の米雇用統計で労働市場の堅調が示されると、地銀株は買い戻されて下げ一服となり、プラチナは1035ドルで下げ止まった。米FRBの報告で、シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行の破綻につながった要因は銀行部門に広範に見られるものではないと指摘されており、米地銀の状況は最悪期を脱したとの見方も出ている。ただ、商業用不動産に投資するファンドの動向や米連邦債務上限問題に対する懸念が残っており、先行き懸念が残ると、方向性を模索する動きになるとみられる。

一方、米政権のウクライナ支援策により軍需産業が潤っていることは米経済の下支え要因である。ただ、最大手のロッキード・マーチン社の株価は昨年12月に史上最高値を更新したが、第1四半期の決算はサプライチェーン(供給網)の混乱や労働不足で生産拡大が抑制され、減収減益となった。今後発表される経済指標で景気見通しを確認したい。

●米FRBは利上げ停止の可能性を示唆も経済指標次第

5月3~4日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.25%ポイント引き上げ、5.00~5.25%とすることが決定された。また、6月以降の利上げ停止の可能性が示唆された。ただ、パウエル米FRB議長は、今後は経済指標次第とオープンな姿勢を示した。

CMEのフェドウォッチでは、金融不安が残るなか年末にかけての利下げを織り込んだが、4月の米雇用統計で労働市場の堅調が示されると、利下げ期待が後退した。同統計で非農業部門雇用者数は25万3000人増と事前予想の18万人増を大幅に上回った。

一方、米財務省は、連邦債務上限が引き上げられなければ、6月1日にも債務支払いを履行できなくなる恐れがあるとの見方を示した。バイデン米大統領は共和党のマッカーシー米下院議長など議会指導部と会談するとしており、協議の行方を確認したい。

欧州中央銀行(ECB)理事会では0.25%ポイントの利上げを決定した。利上げ幅はこれまでの0.50%ポイントから縮小したが、ラガルドECB総裁は理事会後の会見で、インフレ抑制に向けた利上げを停止しないと述べており、利上げ継続が見込まれている。4月のユーロ圏の消費者物価指数(HICP)速報値は前年比7.0%上昇と前月の6.9%上昇から加速しており、インフレ目標の2%を大幅に上回っている。

一方、欧州自動車工業協会(ACEA)によると、3月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比28.8%増の108万7939台となった。1~3月は前年同期比17.9%増の265万0711台となった。自動車登録が回復傾向にあることはプラチナの支援要因である。

●プラチナETFに投資資金が流入

プラチナETF(上場投信)残高は5月5日の米国で29.99トン(3月末30.46トン)、4日の英国で13.74トン(同13.34トン)、5日の南アフリカで13.86トン(同12.22トン)となった。米国で利食い売りが出たが、合計で1.57トン増加した。今年のプラチナは供給不足に転じる見通しであり、調整局面で押し目買いが入るかどうかを確認したい。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、4月25日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万9617枚まで拡大し、1月10日以来の高水準となった。5月2日時点は新規売りが出て2万6687枚に縮小したが、戻り高値を更新したことでテクニカル面で強気であり、買い意欲が強い。ただ、米国の金融不安による景気減速懸念や中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)で景気回復の遅れが示されたことが上値を抑える要因であり、高値では利食い売りが出やすいとみられる。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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