知られざる「小型優良・放置銘柄」を探せ!
大川智宏の「日本株・数字で徹底診断!」 第113回
智剣・Oskarグループ CEO兼主席ストラテジスト
2005年に野村総合研究所へ入社後、JPモルガン・アセットマネジメントにてトレーダー、クレディ・スイス証券にてクオンツ・アナリスト、UBS証券にて日本株ストラテジストを経て、16年に独立系リサーチ会社の智剣・Oskarグループを設立し現在に至る。専門は計量分析に基づいた株式市場の予測、投資戦略の立案、ファンドの設計など。日経CNBCのコメンテーターなどを務めている。
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世界的な景気後退が懸念されている中で、日本株の堅調さが目立っています。
原動力となっているのが、3月末以降の海外投資家による強い買い越しです。これに呼応するように、米S&P500指数に対するTOPIXの相対的な強さを示す相対株価(TOPIX÷S&P500)も、力強く回復を見せています(下のグラフ)。
海外勢の買いの背景にあるのが、経済のフェーズが欧米に比して遅れていることや、東証のPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業に対するテコ入れ策といった前向きなテーマが好材料となっているようです。
■日米相対株価と海外投資家の買い越し・売り越し額(2023年~、週ベース)
出所:東証、リフィニティブ・データストリーム
「Small」は「500」にアンダーパフォーム
こうした海外勢主導の相場上昇に取り残されがちなのが、時価総額が小さく流動性の少ない小型株です。
大型株~中型株を中心に構成される「TOPIX500」と小型株で構成される「TOPIX Small」のパフォーマンスを見ると、海外投資家が買い越しに転じた今年3月末以降は、TOPIX500が良好であることが分かります。
■3月末以降のTOPIX500 とTOPIX Smallの騰落率
出所:リフィニティブ・データストリーム
資産規模が数千億円から数兆円規模の海外勢のファンドにとっては、仮に有望な小型株が存在したとしても、自分自身の取引で約定価格を押し上げてしまいます。これは、取引コストの増大と高値掴みからの利益確定売りに巻き込まれる可能性が高くなるため、デメリットとリスクしかありません。
この環境がしばらく継続する場合は、大型株に投資妙味があると見るのが自然です。しかし、すでに海外投資家は一定量の資金を投じており、大型株の株価のアップサイドは、今後それほど大きくない可能性もあります。
一方で、このラリーに参加できてない小型株は、需給的に放置されている可能性が高く、優良銘柄であってもそれほど強く買われていないかもしれません。
株価放置状態の安定成長小型株を探す
そこで、今回は対象を小型株に限定し、過去からの中長期的な視点で極めて堅調に成長を続けている割には株価が評価されていない"放置状態銘柄"に注目していきます。
母集団は、TOPIX Small指数の構成銘柄または東証スタンダード市場上場銘柄の中で、2023年5月17日時点で時価総額が500億円未満の銘柄とします。なお、東証グロース(旧東証マザーズ)については、赤字上場の銘柄が多く、過去10年間のサンプルを確保しにくいことから、対象から除外しています。
抽出にあたっては、まず過去10年間の売上高、純利益、配当のそれぞれの成長率を算出します。
次に、上の3要素について過去10年間で何年間プラスの成長を達成したのかという「勝率」を各々で計算し、勝率を平均して安定成長性をスコアリングしてランキングをしていきます。このうち、スコアが80%を超える銘柄を「安定成長小型株」として抽出します。
加えて、株価の点でも「すでに高く評価されている銘柄」や、「十分に織り込まれたうえで利益確定に押されて低迷している銘柄」を除外します。
その方法として、各銘柄の過去10年間の1年ごとの株価変化率を用います。ここから平均リターンを標準偏差で割るリターン・リスク比を算出し、その数値が低い銘柄を過去を含めて大きく業績が評価されたことはないと判断していきます。
業績データについては、2023年5月時点から遡って取得可能な1年間(過去12カ月)ごとの過去10年間のデータであり、必ずしも年度データになっていないことに注意が必要です。
まずは株価リターンを考慮しない段階の安定成長性スコアのみでの顔ぶれを見ていきます。抽出したのは、スコアの上位20銘柄(同率で12位まで)です。
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