来週の株式相場に向けて=「ITバブル」と「生成AIバブル」の類似性
2日の東京株式市場は日経平均株価が前日比376円高の3万1524円と大幅続伸し、バブル後高値を更新した。プライム市場の9割の銘柄が上昇する全面高の様相を呈した。
市場の関心を集めたのは、相場の牽引役となっていたアドバンテスト<6857>など半導体関連株の上昇が一服する一方で、トヨタ自動車<7203>が円高のなか新高値に買われたことだ。「トヨタを買ったのは外国人だろう。出遅れ大型株に加え、中小型株にも動意がみられるだけに、外国人物色の裾野が広がりつつあるのかもしれない」(アナリスト)と指摘する声が出ている。
海外投資家は現物株ベースで5月第4週まで9週連続買い越しとなり、この間4兆円超の日本株を買った。ただ、2月後半から3月にかけて売り越し基調だったこともあり、「まだ買い余力は十分あるのでは」(市場関係者)との声も出ている。特に、中国株を売り日本株を買う動きも囁かれている。
この日は上昇一服したものの、生成AIの急成長を材料視した半導体関連株への物色人気は強い。あるアナリストは「90年代後半のITバブルと足もとの生成AIバブルの類似性が気になっている」という。
ITバブルは、98年のヘッジファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)の破綻やアジア危機などを背景に、米連邦準備理事会(FRB)が利下げを進めたことが背景となり一気に膨らんだ。一方、23年は米地銀破綻が相次いでおり、先行きFRBが利下げに転じることを先取りして生成AI関連などのハイテク株が人気化している側面も指摘されている。今晩の米5月雇用統計の結果次第では、利上げ継続の可能性も否定できないものの、今後、生成AIバブルが膨らむことを睨み、その恩恵を受ける日本の半導体関連株を買う動きも外国人買いの背景にはあるかもしれない。
来週は9日に先物のメジャーSQがあり、「日経平均は3万2000円を意識する展開となるかもしれない」(市場関係者)との見方も出ている。
スケジュール面では、来週は海外では5日に米5月ISM非製造業景況指数が発表される。また、アップル<AAPL>の年次開発者会議「WWDC」が開催される。ヘッドマウントディスプレー(HMD)が発表されるとの観測もある。7日に経済協力開発機構(OECD)経済見通しが公表され、9日に中国5月消費者物価指数(CPI)が発表される。
国内では8日に1~3月期国内総生産(GDP)・2次速報と5月景気ウォッチャー調査が公表される。同日に積水ハウス<1928>の決算発表が予定されている。来週の日経平均株価の予想レンジは3万1000~3万2100円前後。
最後に、セゾン投信の中野晴啓会長の退任が報道された。投信に限らず日本の金融業界の改革の先頭に立つ一人だっただけに残念でならない。「フィデューシャリー・デューティー(顧客本位の業務運営)」の信念を基にカムバックを切に願いたい。(岡里英幸)