プラチナはレンジ形成、中国景気懸念が圧迫も米利上げ停止観測が下支え <コモディティ特集>

特集
2023年6月7日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は5月、堅調な米経済指標を背景に米連邦準備理事会(FRB)の利上げ見通しが高まったことや、中国の景気回復の遅れが懸念されたことを受けて軟調となった。また、米債務上限問題の協議の期限が迫ったことも圧迫要因となり、4月11日以来の安値991ドル台をつけた。ただ、米議会で債務上限法案が可決されると、債務不履行(デフォルト)回避の見方を受けて下げ一服となった。また、米金融当局者の利上げ停止の見方も下支えになった。

ただ、5月の米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想以上に増加し、7月利上げの可能性が残っている。一方、失業率が上昇したことから今後の景気減速の見方も強まった。米ISMが発表した5月の製造業総合指数は7ヵ月連続で好況と不況の分岐点となる50を下回った。非製造業総合指数も50.3と予想外に低下し、好調だったサービス業も減速しつつある。

当面は13日に発表される5月の米消費者物価指数(CPI)が焦点である。インフレの伸びが鈍化すると、14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では金利据え置きが決定されるとみられ、プラチナの下支え要因になりそうだ。また、欧州中央銀行(ECB)の利上げが夏場まで続くとの見方はドル安要因である。

テクニカル面では4月以降、1100ドル台でダブルトップを形成したのち、ネックラインとなる1035ドルを割り込み、1000ドルの節目を試し、値動きが一巡した。一方、ファンダメンタルズでは、ワールド・プラチナ・インベストメント・カウンシル(WPIC)が今年の供給不足見通しを上方修正したことが下支え要因である。当面は1000~1100ドルで方向性を模索する動きが続くとみられる。

●プラチナの供給不足見通しと新車販売の回復

WPICの四半期報告によると、2023年のプラチナ需給予想は31トンの供給不足と、前回予想17トンの供給不足から大幅に上方修正された。また、投資需要が13トン(前回予想9トン)に引き上げられたほか、中国のガラス生産能力が拡大し工業用需要が増加した。更に自動車触媒需要は1台当たりの使用量増加に加え、パラジウムからの代替が進んだ。

一方、供給面ではロシアの増加で南アフリカの減少を相殺できず、低迷する見通しである。南アでは電力危機を受けて2月に「国家的災害事態」を宣言した。電力省が新設され、4月に宣言が解除されたが、一部の措置は継続された。電力危機は企業に打撃を与え、第1四半期の失業率は32.9%(前四半期32.7%)から上昇した。

欧州自動車工業協会(ACEA)によると、4月の欧州連合(EU26)の新車(乗用車)登録台数は前年同月比17.2%増の80万3188台となった。1~4月は前年同期比17.8%増の345万4935台となった。また、5月の米新車販売台数(乗用車、小型トラック)は前年同月比22.9%増の137万5248台となった。1~5月は前年同期比10.6%増の632万4695台となった。5月の国内新車販売台数は前年同月比25.0%増の32万6730台となり、9ヵ月連続で前年同月を上回った。前年に半導体や部品不足で台数が落ち込んだ反動が背景にある。各国の新車販売が回復していることはプラチナの支援要因である。

●プラチナETF残高は小幅減少

プラチナETF(上場投信)残高は6月6日の米国で30.70トン(4月末29.87トン)、5日の英国で13.17トン(同13.80トン)、5日の南アで13.50トン(同13.86トン)となった。米国で安値拾いの買いが入る一方、英国と南アで手じまい売りが出た。合計で0.16トン減少した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、5月30日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは2万3406枚(前週2万7479枚)に縮小した。4月25日に1月10日以来の高水準となる2万9617枚まで拡大したのち、手じまい売り、新規売りが出た。ただ、1000ドル割れで下げ一服となると、買い戻し主導で上昇した。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きが見込まれており、買いに転じる可能性がある。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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