米国株式市場見通し:パウエルFRB議長の議会証言に注目
FRBが年2回公表する金融政策報告書に関し、パウエル議長は2日間の議会公聴会に出席する予定で注目だ。FRBが今週末に公表した金融政策報告では「インフレは鈍化も依然2%目標を上回っている」と慎重な姿勢を見せ、追加利上げを巡っては各会合で決定していく方針を再表明した。また、金融システムは依然堅調で柔軟性があるとした一方、実体経済については信用状況の引き締まりが経済活動の重しになる可能性を指摘。インフレ制御には潜在的な水準を下回る経済成長が必要である可能性にも言及した。民主党はウォ―レン上院議員などが「FRBは利上げを停止すべき」と主張している一方、共和党はバイデン政権の巨大な歳出拡大がインフレを高止まりさせており、支出削減の必要性を訴えている。
議員からはソフトランディングの可能性やインフレ見通し、景気後退の確率などに加え、追加利上げの可能性に関する質問が予想され、回答内容に注目したい。インフレは昨年6月にピークアウト後、原油安が奏功して鈍化基調にある。しかし、そのペースは遅く、中銀の目標である2%にはまだほど遠い。労働市場も依然力強く、利上げの必要性は残る。議長がタカ派色を再度強調した場合には株価の上値抑制要因となるだろう。
FRBは6月FOMCで市場の予想通り、昨年3月の利上げ開始以降では初めて利上げを見送った。声明では、金利据え置きにより10会合連続での大幅利上げによるインフレや景気への影響を、今後の追加経済データで見直すことができるとしている。ただ、議長は利上げ見送りが緩やかな利上げ軌道の一環だとしており、利上げ終了ではないと説明した。
FRBの見通しではピーク金利見通しが前回から一段と引き上げられ、年内あと2回の利上げを想定していることが明らかになった。議長はインフレリスクが依然上方向にあり、過去6カ月間、個人消費支出(PCE)コアインフレにもあまり改善が見られないとタカ派姿勢を維持。ほぼ全メンバーが追加利上げが適切だと見ていることを明らかにするなど、想定以上にタカ派的な内容となった。ただ、7月の追加利上げは明言せず、経済次第で、各会合で政策を決定する姿勢を示した。
投資家の間で、タカ派発言はあくまでもFRBの信用を維持するためのもので、景気や金融状況の悪化によっては最終的に年内の追加利上げに必ずしも繋がらないとの見方も浮上している。利上げサイクルの終了を視野に入れた買い戻しが相場の下値を支えそうだ。また、人口知能(AI)需要への期待を受けたハイテクセクターでの買いも継続が期待できそうだ。
なお、19日は奴隷解放日(ジューンティーンス)の祭日で株式市場は休場となる。
経済指標では、6月NAHB住宅市場指数(19日)、5月住宅着工件数・住宅建設許可件数、6月フィラデルフィア連銀非製造業活動指数(20日)、5月シカゴ連銀全米活動指指数、新規失業保険申請件数、5月中古住宅販売件数、5月景気先行指数、6月カンザスシティ連銀製造業活動指数(22日)、6月製造業・サービス業PMI(23日)、などが予定されている。また、パウエルFRB議長は21日に下院金融委員会、22日には上院銀行委での証言を予定。さらに、21日は、FRB副議長に指名されたジェファーソン理事、理事に再指名されたクック氏、新たに理事に指名されたクーグラー氏が承認手続きのための上院銀行委での証言を予定している。
主要企業決算では、運送会社のフェデックス(20日)、住宅建設会社のKBホーム(21日)、コンサルティングサービスのアクセンチュア、レストランチェーンを運営するダーデンレストランツ(22日)、自動車販売のカーマックス(23日)などが予定されている。住宅建設会社は住宅ローン金利の上昇にもかかわらず需要は根強く、サプライチェーン混乱の回復とともに業績回復に期待したい。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》