為替週間見通し:ドルの上昇は一服か、日本の円買い介入を警戒
【今週の概況】
■日本と欧米との金利差拡大で円売り強まる
今週のドル・円は堅調推移。6月13日発表の5月米消費者物価指数の伸び率は市場予想を下回ったことを受けて、ドルは一時139円01銭まで下落した。しかしながら、インフレ緩和のペースが速まる可能性は低いとの見方が強まり、7月利上げ観測が広がったことから、リスク回避のドル売りは縮小した。13-14日に開かれた米連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利を据え置くことが全会一致で決定されたが、FOMCの政策金利見通し(中央値)で2023年末の水準は3月時点の5.1%から5.6%に0.5ポイント上方修正されており、年内2回の追加利上げが想定されていることを受けてリスク選好的なドル買い・円売りが優勢となった。その後も、欧州中央銀行(ECB)は15日開催の理事会で0.25ポイントの追加利上げを決定し、7月も利上げを行う可能性が高いこと、日本銀行は15-16日開催の金融政策決定会合で現行の金融緩和策を維持したことから、ドル・円は141円台に上昇した。
16日のニューヨーク外為市場でドル・円は、140円92銭から141円92銭まで上昇した。ウォラーFRB理事やリッチモンド連銀のバーキン総裁が追加利上げ支持を再表明したため、ドル買いが加速。ドル・円は141円87銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:139円01銭-141円92銭。
【来週の見通し】
■ドルの上昇は一服か、日本の円買い介入を警戒
来週のドル・円は上昇一服か。日米金利差拡大によりドルは下げづらいが、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが米国経済に与える影響を見極めようと、ドル買いは慎重になろう。また、米ドル高円安が加速しており、日本政府・日本銀行による為替介入が行われる可能性があることも意識されそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は6月13-14日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げを見送った。同時に公表した金利見通しでは、年内2回の利上げの可能性を示唆しており、市場ではタカ派的なスタンスと受け止められた。
ただ、パウエルFRB議長は次回7月開催のFOMC会合での利上げについて明確な方針を明らかにしておらず、引き続き経済指標を点検しながらの相場展開となりそうだ。足元の経済指標で小売売上高は予想を上回り、旺盛な消費を反映。一方、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は前月より改善したものの、7月以降に製造業の景況感が大幅に改善する可能性は低いことが示された。6月23日発表の製造業とサービス業のPMIが市場予想を下回った場合、年後半の景気減速懸念でドル買い・円売りは縮小する可能性がある。
一方、日本銀行は6月15-16日の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策を継続することを決めた。金融政策の早期修正は想定できないが、1ドル=141円台では日本政府・日銀による為替介入が実行される可能性があるため、新たなドル買い材料が提供されない場合、リスク選好的なドル買い・円売りが一段と拡大する可能性は低いとみられる。
【パウエルFRB議長講演】(22日開催予定)
22日に予定されているパウエルFRB議長の講演はFOMC後の定例記者会見とほぼ同じ内容と予想される。7月の政策決定については明言を避ける見通しで、強いドル買い要因にはなりにくいだろう。
【米・6月S&Pグローバル製造業・サービス業PMI】(23日発表予定)
23日発表の米6月S&Pグローバル製造業PMIと同サービス業PMIは前月から改善できるか注目される。製造業は4月に景気の好不況の節目50を回復したが、5月は再び割り込んだ。一方、サービス業は好調さを反映し、50を上回っている。
予想レンジ:139円50銭-143円50銭
《FA》