来週の相場で注目すべき3つのポイント:パウエル議長の議会証言、株主総会、IPO合計5社

市況
2023年6月17日 18時00分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限34500円-下限32500円

来週の来週の東京株式市場は一進一退か。週初は米国市場が祝日で休場、週後半22日からは端午節の関係で中国(~23日)・香港市場も休場となる。経済指標の発表も少なく、全体的に手掛かり材料難のなか、主要中央銀行の金融政策決定会合を無難に消化した安心感から、堅調な地合いが続きそうだ。月後半にかけては株主総会が集中しており、株主還元の強化策などへの思惑が強まることも相場をサポートしよう。

日本取引所グループ(JPX)が公表する投資部門別売買状況によると、海外投資家は6月第1週(6月5-6月9日)に現物・先物合算で1兆5691億円と10週連続の買い越し、現物だけでは9864億円と11週連続の買い越しを見せた。連続記録も驚異的だが、ここにきて再び現物での買い越し金額が1兆円規模にまで膨れ上がったことには脱帽だ。今回の海外勢による日本株買いはアベノミクス以来、10年に一度あるかないかレベルの大規模なものといえる。ビッグトレンドとも呼べる今回の上昇相場については、急激な外的ショックの発生や、もしくは米国株の大幅下落でもない限り、簡単には崩れそうにないと思われ、中長期目線では押し目買いスタンスが奏功しそうだ。

一方、岸田文雄首相が今国会会期中の衆議院解散を見送る考えを表明したことが失望感を誘い、日経平均は今週末に一時下落。また、その前日15日には午後に高値を更新しながらも引けにかけて失速するなど、日経平均は34000円を手前にやや買い疲れ感も見られた。需給面では、東京証券取引所が公表する裁定取引に係る現物ポジションによると、6月9日時点の裁定残高はネットベースで1兆1570.58億円の買い越しで、前週(1兆1828.55億円の買い越し)から小幅に減少、積み上がった裁定買い残の解消売り圧力が始まっているようで、下値は堅くとも、短期的には上昇一服で上値の重さが意識される頃合いと考えられる。

来週の注目イベントは21日に予定されているパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の米下院での議会証言だろう。今週開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では年内残り2回の利上げが示唆され、パウエル議長からは「利下げは2、3年先になるかもしれない」などとタカ派な発言が見られた。これに対し、市場は実際のところ結局は経済データ次第で、FRB自身も本当に利上げに固執したいとは考えていないと見透かしており、タカ派な姿勢をそのまま真に受けていない。ただし、議会証言でパウエル議長が改めて必要以上にタカ派な姿勢を見せると、市場が期待する米経済のソフトランディング期待が後退し、ハードランディングへの懸念が高まる可能性もあるため、この点は注意しておきたい。

ほか、米国市場は今週末にトリプルウィッチング(株価指数先物取引、株価指数オプション取引、個別株オプション取引の3つのデリバティブ取引の取引期限満了日が重なる日)、すなわち米国版のメジャーSQ(特別清算指数)を迎えた。米株式市場は好調が続いているが、バリュエーションの割高感が指摘されているなか、SQ通過後の来週からは需給の転換も意識されやすいため、米国株の動向には注意を払いたい。

5月第5週からは出遅れ感の強い中小型株や新興株にも買いが入り始めている。上昇相場前半の値がさハイテク株の一極集中から次第に大型株、そして中小型株・新興株へと良い形で物色が循環してきている。この形が続くようであれば足元の上昇相場は息の長いものになっていきそうだ。この先は、月末にかけて株主総会シーズンの終了に伴う材料出尽くし感や、四半期末に伴う年金基金によるリバランス(資産配分の調整)目的の利益確定売りが想定されるため、4月以降の上昇率が大きい値がさ株や大型株よりも、依然として出遅れ感の強い中小型株・新興株に投資機会を見出していきたい。

■為替市場見通し

来週のドル・円は上昇一服か。日米金利差拡大によりドルは下げづらいが、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締めが米国経済に与える影響を見極めようと、ドル買いは慎重になりそうだ。また、米ドル高・円安が加速しており、日本政府・日本銀行による為替介入が意識されやすいこともドル円の上値を抑制しよう。

FRBは6月13-14日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送った。同時に公表した金利見通しでは、年内2回の利上げの可能性を示唆しており、市場ではタカ派的なスタンスと受け止められた。

ただ、パウエルFRB議長は次回7月開催のFOMC会合での利上げについて明確な方針を明らかにしておらず、引き続き経済指標を点検しながらの相場展開となりそうだ。足元の経済指標で小売売上高は予想を上回り、堅調な消費を反映。一方、フィラデルフィア連銀製造業景況指数は7月以降に製造業の景況感が大幅に改善する可能性が低いことを示した。6月23日発表の製造業とサービス業のPMIが市場予想を下回った場合、年後半の景気減速懸念でドル買い・円売りは縮小する可能性があろう。

一方、日本銀行は6月15-16日の金融政策決定会合で現行の金融緩和政策を継続することを決めた。金融政策の早期修正は想定しにくいが、1ドル=141円台では日本政府・日銀による為替介入が実行される可能性があるため、新たなドル買い材料が提供されない場合、リスク選好的なドル買い・円売りが一段と拡大する可能性は低いとみられる。

■来週の注目スケジュール

6月19日(月):日・首都圏新築分譲マンション(5月)、米・NAHB住宅市場指数(6月)、米・株式市場は祝日のため休場(奴隷解放記念日「ジューンティーンス」)、米・ブリンケン国務長官が中英訪問(21日まで)、など

6月20日(火):日・鉱工業生産(4月)、日・株主総会(日本電産、ANAHD、デンソー、商船三井)、中・ローンプライムレート(LPR)、米・住宅着工件数(5月)、米・セントルイス連銀総裁が講演、米・ニューヨーク連銀総裁が講演、など

6月21日(水):日・日銀政策委員会・金融政策決定会合議事要旨(4月27・28日分)、日・オービーシステムが東証スタンダードに新規上場、日・シーユーシーが東証グロースに新規上場、英・消費者物価コア指数(5月)、ブ・ブラジル中央銀行が政策金利(セリック金利)発表、米・パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が下院金融委員会で証言、米・シカゴ連銀総裁が講演、など

6月22日(木):日・リアルゲイトが東証グロースに新規上場、日・アイデミーが東証グロースに新規上場、スイス・中央銀行が政策金利発表、英・イングランド銀行(英中央銀行)が政策金利発表、トルコ・中央銀行が政策金利発表、米・中古住宅販売件数(5月)、欧・ユーロ圏消費者信頼感指数(6月)、メキシコ・中央銀行が政策金利発表、中・株式市場は祝日のため休場(端午節、26日取引再開)、香港・株式市場は祝日のため休場(端午節)、米・FRB議長が上院銀行委で証言、米・クリーブランド連銀総裁が講演、米・リッチモンド連銀総裁が講演、など

6月23日(金):日・消費者物価コア指数(5月)、全国百貨店売上高(5月)、日・ARアドバンストテクノロジが東証グロースに新規上場、株主総会(みずほFG、JAL、スズキ、川崎汽船、三菱商事、伊藤忠、丸紅、住友商事)、日・欧・米・製造業PMI(6月)、米・セントルイス連銀総裁が講演、米・クリーブランド連銀総裁がイベント閉会の挨拶、など

《YN》

提供:フィスコ

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