明日の株式相場に向けて=崩れそうで崩れないヤジロベエ相場

市況
2023年6月20日 17時00分

きょう(20日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比18円高の3万3388円と小反発。終始方向感のはっきりしない不安定な地合いだった。前日の米国株市場が休場だったことで、必然的に足もとの相場の流れは欧州株市場の動向に左右されやすい。前日は独DAX、仏CAC40、英FTSE100などが軒並み軟調な展開であり、前週末まで一本調子に上がってきた日経平均も、目先高値警戒感から利食い急ぎの動きが表面化して全く不思議はないところ。しかし、崩れそうで崩れないのが今日の相場の特徴でもあった。目先買い疲れ感は拭えないが、売り方も安易に動けずという微妙なバランスのなかで、前日終値を挟んでヤジロベエのようにフラつく相場となった。

朝方は安く始まった日経平均だが、午前10時20分頃に先物主導でプラス圏に急浮上する場面があった。これは中国人民銀行がローンプライムレート(最優遇貸出金利)を引き下げたことに反応したものだ。最優遇貸出金利は優良企業向け融資の指標であり、実質的な政策金利に相当する。世界的なインフレ懸念を背景に各国で利上げ続きの環境にあるなか、利下げの動き自体は基本的に株式市場にポジティブに作用する。中国では当局による景気刺激策への期待が強まっているが、その一環として利下げのカードが切られた形だ。

ところが、市場筋の顔色は冴えない。いわく「(中国では)金融緩和は事前に予想されていてサプライズではない。むしろ利下げ幅が0.1%と小さかったことで失望売りを誘発することもあり得た」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。利下げ発表後に上海総合指数は下げ渋りはしたものの、大きく好感された形跡はなく、香港ハンセン指数に至っては発表後も下値模索の動きを続ける状況だった。こうなると東京市場でも買い戻しは早とちりとばかりに、その後に日経平均は売り直される展開を余儀なくされた。

しかし、後場寄りに先物主導で一瞬売り仕掛け的な動きがみられたが、下値も岩盤だった。叩き切れずに売り方の手仕舞い買い戻しを誘う展開となり、日経平均は下げ幅を縮小した。スケジュール的には明日にパウエルFRB議長の米下院での議会証言を控えており、これを波乱要因として警戒する向きもある。だが市場では、「パウエル氏はおそらくタカ派寄りの姿勢を示すとの見方が強いだけに、どちらかといえば売り方にとって“伸びしろ”の少ないイベント」(中堅証券ストラテジスト)という。日経平均は短期急伸の反動に身構えるタイミングにみえるが、「為替は1ドル=142円台まで円安が進んでおり、今日はリスクオフの流れではない」(同)と指摘する。結局、日経平均は前日終値をまたいで右往左往した後、最後にプラス圏へ足を踏み込んだところで取引終了となった。

ネット証券大手の信用評価損益率の直近データでは、売り方の苦境が見て取れる。全市場ベースの信用評価損益率はマイナス4.0%と一段と改善傾向にある。これが0%に近づくにつれて過熱感が高まるが、既にかなりヒートアップした状態だ。一方で売り建てている方の信用評価損益率はマイナス17.3%と“踏み上げ誘発ゾーン”に近づいている。生成AI をコアにAI関連 の範疇で括られる中小型株は暴発気味に値を飛ばしている銘柄が相次いでいるが、貸株調達を含め売り残を上昇エネルギーに変えているものも少なくない。

直近IPOではABEJA<5574>、プライム市場ではさくらインターネット<3778>が生成AI関連のメインイベンターとなっているが、次にどこにバトンが渡されるのかに市場の思惑が錯綜している。前日取り上げたデータセクション<3905>がストップ高に買われたが、これも需給のなせる業。今期決算予想が低調だったエッジテクノロジー<4268>の切り返しも、外資系証券手口で貸株調達に伴う空売りのアンワインドが浮揚力を与え意外高につながった。引き続き物色の裾野は広がり続けているが、まだ見落とされているAI関連として、共同ピーアール<2436>に穴株素地がある。このほか、AI関連から人気が派生しているセキュリティーではフーバーブレイン<3927>の押し目もマーク。

あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨開示(4月27~28日開催分)、5月の訪日外国人客数など。また、この日は通常国会の会期末にあたる。IPOが2社予定されており、東証グロース市場にシーユーシー<9158>が、東証スタンダード市場にオービーシステム<5576>が新規上場する。海外では5月の英消費者物価指数(CPI)のほか、ブラジル中銀の政策金利発表。米国では20年国債の入札が予定されている。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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