来週の相場で注目すべき3つのポイント:中国PMI、米PCEコアデフレーター、IPOラッシュ

市況
2023年6月24日 17時30分

■株式相場見通し

予想レンジ:上限33400円-下限32000円

来週の東京株式市場は軟調か。バブル崩壊後の最高値圏での好調推移が続いていた日経平均は今週末に急落し、6月13日以来となる33000円割れとなっている。月末にかけては四半期末に向けた年金基金のリバランス(資産配分の調整)目的の売りが強まると想定されている。3月末比で日本株の上昇率は世界株と比べても突出しており、今回のリバランス売りの規模はこれまでに比して大きいと推察される。その先の7月に入ってからも、決算を迎える 上場投資信託(ETF)運用会社による分配金捻出のための換金売り需要が7、10日に現物・先物の合計で1兆1000億円超発生すると予想されている。このため、来週以降は安易な押し目買いを避けるべき局面となろう。

一方、今月末および来月上旬の需給イベントを通過すれば再び日本株の強さが復活するとの期待もある。しかし、英イングランド銀行やノルウェー中央銀行が0.5ポイントの大幅利上げに踏み切ったほか、米連邦準備制度理事会(FRB)は年内2回の追加利上げを示唆している。主要各国中銀による金融引き締めの長期化が世界景気のハードランディング(株価や金利などの急激な悪化を伴いながら景気が失速すること)を引き起こしかねないとの懸念が強まりつつあるなか、世界の景気敏感株とも称される日本株が無傷でいられるとは考えにくい。

日本と主要各国の金融政策の方向性の違いから、為替の円安に拍車がかかっているが、今週末は円安が大きく進行するなかでも日経平均は急落した。1ドル=145円台が近づくタイミングでは当局による為替介入が意識されてくるため、円安の進行余地は限られると推察され、素直に円安=日本株買いの構図につながっていないとも考えられる。むしろ、これ以上の円安は輸入インフレの再燃を通じて実質賃金のマイナスの長期化、ひいては国内景気の失速にもつながりかねないため、プラスには捉えにくい。

来週末30日は米5月個人消費支出(PCE)デフレーターが発表される。再び各国中銀の金融政策に対する注目度が高まりつつあるなか、同指標への注目度は高いといえる。また、週末には6月の東京都区部消費者物価指数(CPI)が発表される。エネルギー・生鮮食品を除いたコアコア指数で上振れが確認されれば、日本銀行の政策修正への思惑が再燃することも考えられる。為替の円高反転リスクも意識されるなか、週末まで押し目買いを入れづらい展開が予想されよう。

ほか、米5月耐久財受注、米6月消費者信頼感指数(27日)、中国6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)(30日)などの経済指標が発表予定だ。景気の腰折れリスクが意識されつつあるなか、これらの結果も注目されよう。20日、中国人民銀行は最優遇貸出金利を10カ月ぶりに引き下げたが、景気支援策としては不十分であるとの指摘が多かった。また、22日には、中国当局が、地方政府が抱える債務を把握するために新たな全国調査に乗り出したと伝わっている。地方政府は「隠れ債務」の公表を余儀なくされる見通しともされており、中国当局による大規模な景気刺激策への期待も後退しているといえる。こうしたなか、中国PMIが下振れた場合には景気後退懸念が強まる恐れがあろう。

個別については、各国中銀によるインフレ抑制を最優先にした利上げが世界経済をハードランディングへと向かわせるリスクが意識されつつあるなか、景気敏感株を中心に値がさ株・大型株など主力処は全般冴えない展開が予想される。リスクオフムードが強まりつつあることを想定すると、流動性リスクが意識される中小型株も手掛けづらくなってきた。こうしたなか、相対的な観点から内需系ディフェンシブセクターの妙味が高まると考える。円安によるコスト増加が再び意識されやすい食料品よりは、医薬品、陸運、情報・通信などのセクターに注目したい。来週はしまむら<8227>、高島屋<8233>など小売企業の決算が発表される予定で、決算反応を見ることで投資家のディフェンシブセクターへの注目度を確かめたい。

米国では28日に半導体メモリー大手のマイクロン・テクノロジーの決算が予定されている。業績底入れ期待や生成AI(人工知能)ブームで半導体株の上昇が続いてきたが、出尽くし感で足元の利益確定売りが強まるのか、それとも持ち直すのかに注目したい。

■為替市場見通し

来週のドル・円は伸び悩みか。パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は6月21、22日に開かれた公聴会で証言し、足元のインフレ率が物価目標を大きく上回っているため、緩やかながらも引き締め継続の必要性を強調。年内2回の追加利上げを示唆した。米国のインフレ高止まりでFRBの金融引き締め長期化が想定され、ドルは売りづらい展開となる可能性がある。ただ、円安進行を受けて日本政府による為替介入に対する警戒感が高まっている。米バイデン政権は直近の為替報告書で日本を為替操作国の監視対象から除外した。米国は日本の為替介入を容認しているわけではないが、円安けん制を後押しする材料になりそうだ。

なお、FRBが金融政策策定の判断材料としているPCEコア価格指数の5月分は、クリーブランド連銀が算出するCPIナウによると、前年比+4.70%と、上昇率は4月実績と同水準となる見通し。予想を上回れば利上げ再開を想定したドル買いが強まりそうだが、金利上昇による景気後退(リセッション)も警戒されている。この状況下で欧米諸国の株式が下落した場合、リスク回避の円買いが強まりそうだ。

■来週の注目スケジュール

6月26日(月):日・企業向けサービス価格指数(5月)、日・日銀金融政策決定会合における主な意見(6月15、16日分)、日・ブリッジコンサルティンググループが東証グロースに新規上場、日・ジャパンドローン2023第2回次世代エアモビリティEXPO2023(28日まで)、、独・IFO企業景況感指数(6月)、米・ダラス連銀製造業景況指数(6月)、など

6月27日(火):日・景気動向指数(4月)、日・クオリプスが東証グロースに新規上場、日・エリッツホールディングスが東証スタンダードに新規上場、米・耐久財受注(5月)、米・S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数(4月)、米・新築住宅販売件数(5月)、米・消費者信頼感指数(6月)、米・リッチモンド連銀製造業景況指数(6月)、など

6月28日(水):日・ノイルイミューン・バイオテックが東証グロースに新規上場、日・プロディライトが東証グロースに新規上場、米・連邦準備制度理事会(FRB)がストレステストの結果発表、欧・ECBフォーラム(最終日)、植田日銀総裁、パウエルFRB議長、ECB総裁、ベイリー英中銀総裁がパネル討論会に参加、など

6月29日(木):日・小売売上高(5月)、日・消費者態度指数(6月)、W TOKYOが東証グロースに新規上場、米・GDP改定値(1-3月)、米・中古住宅販売成約指数(5月)、米・アトランタ連銀総裁が講演、など

6月30日(金):日・消費者物価指数(東京都区部)(6月)、有効求人倍率(5月)、鉱工業生産指数(5月)、住宅着工件数(5月)、日・クラダシが東証グロースに新規上場、日・ジーデップ・アドバンスが東証スタンダードに新規上場、日・ノバレーゼが東証スタンダードに新規上場、中・総合PMI(6月)、欧・ユーロ圏消費者物価コア指数(6月)、米・個人消費支出(PCE)価格コア指数(5月)、米・MNIシカゴ購買部協会景気指数(6月)、など

《YN》

提供:フィスコ

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