馬渕治好氏【日経平均は調整局面入り? 7月の相場動向を読む】(1) <相場観特集>
―前週後半から荒れモード、不安定な地合いから立ち直れるか―
週明け26日の東京株式市場は朝方こそ売りが先行したものの、押し目買い需要も旺盛だった。日経平均株価は寄り後早々に400円近く下落する場面があったが、その後急速に下げ渋る展開となりプラス圏に浮上する局面もあった。足もとでは世界的な株価調整局面にあり、東京市場も不安定な値動きを強いられているが、ここから立ち直ることができるのか、それとも下値模索の局面に移行するのか。第一線で活躍する市場関係者2人に7月相場の展望を聞いた。
●「7月は下値リスク警戒、その後は再浮上へ」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
全体相場は根強い買いが続いているが上値は重い。これまでの上昇過程では海外資金の強力な物色意欲が反映されたが、それも目先一服した感がある。投資主体別で見た外国人部門は前々週に先物で売り越しに転じたほか、前週についてはデータがまだ確認できない状況ながら、おそらく現物も売り越しとなった可能性が高そうだ。足もとでは行き過ぎて買われた反動が出やすい状況にある。実際に、前週後半は日経平均が2営業日にわたって大幅な調整を余儀なくされた。そして、7月相場ではこの流れを引き継ぐ形で下値リスクが意識される地合いとなりそうだ。
世界的にインフレ基調が依然として収束せず、各国中央銀行による金融引き締めが長期化することへの懸念に加え、世界経済減速に対する警戒感が株価の上値を重くしている。日本株は外国人投資家の買いで5月、6月と約2ヵ月にわたり異彩を放つ株高を演じたが、その流れも変わりつつある。ここまで日本株を買っていた海外筋は、日本のことをあまり理解しないままモメンタムで買いを入れていたきらいがある。
パターンとしてはアベノミクス相場の初動であった2013年相場に様相が似ている。この時は黒田日銀総裁(当時)がアベノミクスを強力支援する異次元緩和を4月に打ち出し、日経平均の上げ足を一気に加速させた経緯があるが、5月下旬にピークアウトしその後は急反落に見舞われた。当時も外国人投資家が原動力となったが、短期スタンスの買いも多く含まれており、その後の下げにつながった。今回もそのケースに似通った形で、日経平均はこれまでの急騰の反動が生じる公算が大きい。
7月中に3万円を下回るような深押しもありそうだ。ただし、夏場は調整局面を強いられても、年末にかけて買い直される展開を想定しており、ここからの下げは様子をみながら基本的に買い下がる方針で臨むのが有効と考えている。年末までには3万3000円近辺まで水準を戻すことが想定され、来年は更に上値を指向するだろう。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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