【植木靖男の相場展望】 ─当面、テック株優位の展開は不変か
「当面、テック株優位の展開は不変か」
●胸突き八丁の正念場
日経平均株価は本年4月27日を起点に爆騰し、6月13日には3万3000円台に到達した。これはひとえに海外勢が買い煽った結果である。海外勢の買いで想定外の上昇を演じるのは、日本株がこれまで過去にみせてきた特徴の一つでもある。彼らの買いの思い切りのよさは、国内勢にはなかなか理解しがたいところがある。
海外勢は現物株ベースで6月第2週(6月12日-16日)まで12週連続で買い越し、その累計は比較可能な2003年以降で最大だという。だが、6月19日に日経平均株価は3万3772円のバブル後高値をつけた後は27日安値の3万2306円まで調整を入れた。第2週に海外短期筋は先物に利食い売りを出しており、第3週(19日-23日)には現物株を13週ぶりに売り越している。現物・先物合計では2週連続の売り越しである。
足もとではピーク後、経験則通りに6日間ほどで上げ転換となったが、その反発の程度は下げた分のほぼ80%。問題はこれからだ。いわば、いよいよ胸突き八丁、正念場と言える。
日柄論、波動論からすれば、7月第1週前半まではとりあえず底堅い展開となりそうだ。だが、高値を抜いてなお上昇基調を辿るとするならば、その要件を満たすものは何か。一つは、需給面で海外勢が再び買い越しになるかどうかだ。
また、ここへきてドル・円相場が1ドル=145円に突っかけたが、円安がさらに進むのかどうかも見逃せない。日銀のドル売り介入があるのかも大事だが、流れを大きく変えるほどの介入があるとは思えない。なにせ円安は内外金利差というファンダメンタルズに沿っているからだ。急激な流れに逆らって棹をさすようなものだ。
そして、いま焦点に浮上しているのが、米国株の行方だ。市場は景気のソフトランディングを熱望しているが、仮に大きな不況がないとすれば、今回の米国株の上昇は9月頃まで続く可能性があるのだ。当然、日本株もそれに従うことになるが、現時点では判断がつかない。
逆に、日本株が反発したのも束の間、再び下げに転じて6月27日の安値を下回ることがあれば、いずれ到来するバブル相場の前哨戦が終了し、秋頃までレンジ相場が続くようにもみえる。たとえは悪いが、平成バブルがスタートした2年目にブラックマンデーが起きたが、その縮小版といったところか。もっとも、バブル相場途次の下げだけに、数カ月で元の高値を更新するといったパターンだろう。
●テック株の先行指標であるエヌビディアを注視
当面の物色対象はどうみればよいのか。米景気がソフトランディングなのであれば、いまのテック株中心の上昇は不変とみてよいのではないか。
折に触れ、金融株やインバウンド関連株が物色されるにしても、持続性は未だし、であろう。そうしたバリュー株が主役として柱となるのは、本格的なバブル相場が到来する秋以降ではないか。当面はテック株の先行指標であるエヌビディア<NVDA>の動向に注意を払いたい。
今回は目先的には三菱UFJフィナンシャル・グループ <8306> [東証P]に注目したい。株価は上昇基調にあり、対応スタンスとしては押し目買いとなろう。また、ニデック <6594> [東証P]も妙味がありそうだ。押し目というより、むしろ6月29日の高値を抜いてからの方が手を出しやすいのではないか。
やや仕手性のある銘柄としては大阪チタニウムテクノロジーズ <5726> [東証P]も面白そうだ。25日移動平均線が位置する3000円処を抜いてくれば人気が高まるかもしれない。アドバンテスト <6857> [東証P]の反発にも注目だ。週末30日に日経平均株価が下げている中で上昇している抵抗力に投資家の“意欲”を感じる。
2023年6月30日 記
株探ニュース