明日の株式相場に向けて=ソシオネクスS安ウリ気配の激震

市況
2023年7月6日 17時00分

きょう(6日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比565円安の3万2773円と大幅続落。日経平均の下げ幅は一時700円に達し、3万3000円台を大きく下回った。それと同時に、今年4月中旬を境とした強力な上昇トレンド形成の過程で一度も下回ることがなかった25日移動平均線をついに踏み抜く形となった。日経平均の急落は、ETF分配金捻出のための売り圧力が取り沙汰されるなかで、中国や欧州の弱い経済指標を受けた世界景気の減速懸念や、FOMC議事要旨の開示でまたぞろFRBの利上げ警戒ムードが台頭したことなど、マクロ要因が複合的に絡み合ったことが影響している。しかし、投資マインドを急激に冷やした元凶は「ソシオ・ショック」であったといっても過言ではない。 半導体関連とグロース(成長)株への向かい風が格段に強かったことがそれを裏付ける。

きょうの相場はストップ安ウリ気配に張り付いたソシオネクスト<6526>の波紋が広範囲に及ぶ形となった。文字通り“青天の霹靂”で、東京エレクトロン<8035>やアドバンテスト<6857>など半導体の主力銘柄はもとより、IT系の中小型グロース株全般が強烈な落雷に見舞われたような下落を余儀なくされた。

前日の引け後に、富士通<6702>、パナソニック ホールディングス<6752>、日本政策投資銀行が保有するソシオネクス全株式の売却が発表され、市場関係者からも驚きの声が上がった。株数は1262万株強で、発行済み株式総数の37.5%に相当するだけに、そのインパクトは大きい。この発表を受けて、きょうは朝方からソシオネクスに大量の売り注文が殺到して商いが成立せず、ウリ気配でストップ安水準の1万6950円まで急降下、そのまま気配値で張り付く格好となった。

市場では「180日のロックアップ期間が明けたとはいえ、大株主3社が合計で発行済みの4割近くに及ぶ株数を、一斉にしかも全株売却するとは完全に想定外。実際、証券会社など調査機関のレポートでもその可能性をリスクにあげていたところは見当たらない。信用枠で買っていた投資家はさすがに動揺せざるを得ない」(中堅証券ストラテジスト)とする。ネット証券の店内では、この日の引け後に発生する追い証を回避する目的で個人投資家の投げ売りが相次いだという。「ソシオネクス株を信用で買っていても、プライム市場の大型株など幅広い銘柄に投資している個人は大丈夫。だが、なかにはソシオ株に一極集中、もしくはソシオ株を先頭にグロース株に特化していた投資家もいて、そうした人たちは追い証が回避できない」(ネット証券マーケットアナリスト)とする。

しかし、今回の一斉売却はある意味で受け皿があるからこその決断で、政策投資銀も併せて全株売却に動いたということは、政治的な後押しがあったことをうかがわせる。いわく「売却先についての情報は現時点では乏しいが、海外であるということは明らかとなっている。同社株が最先端半導体分野に絡むSoC設計のキーカンパニーであることを考えれば間違っても中国系企業ではなく、米国系の可能性が高い。例えば米国の半導体関連企業であった場合は、事業連携を前提とした安定株主に渡ることになる」(同)とする。

かつてNEC・日立のDRAM統合会社であるエルピーダメモリは、米マイクロンテクノロジー<MU>に買収され、現在は同社の収益中枢となっている。これは日本の半導体産業にとって、“してやられた感”はあるが、今回もそれを連想させる要素はある。しかし、ソシオネクスを個別の投資対象として捉えた場合は、今よりも企業価値そのものはアップする可能性がある。もとより公募増資ではなく、株式の異動であるためEPS(一株利益)の希薄化は生じない。したがって、株式需給悪という思惑だけで売り叩くのは本質的には間違いで、売りが出切ってしまえば、今度こそ急速なリバウンド局面が訪れる公算は小さくない。商いが成立する瞬間を虎視眈々と狙っているトレーダーは少なくないと思われる。

あすのスケジュールでは、5月の家計調査、5月の毎月勤労統計、6月上中旬の貿易統計、5月の景気動向指数(速報値)、消費活動指数など。また、3カ月物国庫短期証券の入札も行われる。また、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にグリッド<5582>が新規上場する。海外では、6月の米雇用統計に対するマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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