来週の相場で注目すべき3つのポイント:日米欧の金融政策決定会合、米4-6月期GDP速報値、東京都区部CPI
■株式相場見通し
予想レンジ:上限33400円-下限31800円
来週の東京株式市場は強含みか。27-28日に開催される日本銀行の金融政策決定会合では現状の政策が維持され、イールドカーブ・コントロール(長短金利操作、YCC)の修正は行われない見込みとの観測報道が伝わっている。これを受けて為替は1ドル=141円台後半まで円安・ドル高が進み、週末の夜間取引の日経225先物は400円超上昇している。一方、物価見通しは上方修正される公算が大きく、YCCについても見直しに向けて議論の対象になる可能性は高い。警戒感は既に大きく後退したが、植田和男日銀総裁の記者会見でのコメントなどは引き続き要注目だ。
一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)が25-26日に開催される。26日にはパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見も予定されている。今月のFOMCでは0.25ポイントの利上げがほぼ100%織り込まれている一方、次回9月のFOMCについては、据え置きが8割以上の確率で織り込まれている。ただ、FRBは米6月消費者物価指数(CPI)の発表前ではあるが、6月FOMCで公表した政策金利見通し(ドットチャート)で年内2回の追加利上げを示した。また、その後、パウエル議長も議会証言や各種イベントでの発言機会を通じて度々、年内2回の追加利上げを主張していた。
市場関係者の多くが9月FOMCでは据え置きを予想しているが、FOMC後の会見で、パウエル議長が9月会合での利上げを否定せず、従来からの姿勢を維持した場合にはタカ派サプライズとなり、株式市場に動揺が広がるだろう。足元では米CPIの発表以降、今回のFOMCに対する警戒感が後退し、楽観ムードが広まっている印象があるため、注意しておきたい。
ほか、日米の企業決算に注目だ。米国では電気自動車のテスラと動画配信サービスのネットフリックスがともに決算を受けて株価が大きく下落した。ネットフリックスは売上高実績と7-9月期の売上高見通しが市場予想を下回り、素直に売られた。一方、テスラは値下げによって粗利益率が市場予想を下回ったものの、売上高と一株利益は予想を上回った。しかし、今後の更なる値下げが懸念され、株価は大きく下落した。東京市場でも安川電機<6506>やファーストリテイリング<9983>の決算後の反応を見る限り、株価が高値圏にある銘柄については、決算後は出尽くし感が先行しやすいようだ。
また、半導体株の行方も気がかりだ。最先端の半導体露光装置メーカーとして世界トップの蘭ASMLホールディングの4-6月期実績は市場予想を上回った。ただ、受注高の伸びは1-3月期と同様、前年同期比46%超と大幅な減少が続いたほか、先端品の見通しが下方修正され、株価は大きく下落した。さらに、半導体受託製造の世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC)の4-6月期決算は四半期ベースでは約4年ぶりの減収減益となった。また、7-9月期のガイダンスが市場予想を下回ったほか、通期の売上高見通しも下方修正された。
生成AI(人工知能)への過剰な期待が修正されつつあるなか、来週はアドバンテスト<6857>が26日に決算を発表する。同社は冴えない決算が続いているが、生成AI関連株の筆頭格として今年に入ってからの昨年末比の株価上昇率は最大で2.6倍にも及ぶ。期待先行の印象が特に強い銘柄で、日経平均への寄与度も大きいことを考えると、リスクイベントとして注意が必要だと考える。
米国ではマイクロソフトが25日に決算を発表する。生成AI関連のサービスを相次いでリリースするなど、こちらも関連株の筆頭格として注目されている。株価が高値圏にある銘柄は出尽くし感が先行しやすい傾向があるなか、市場の期待と株価水準を維持できるのかどうかを見守りたい。
25日には国際通貨基金(IMF)が世界経済見通しを公表する。米経済のソフトランディング(軟着陸)に対する期待が高まっているが、見通しが上方修正された場合にはハイテク株に比べて出遅れ感の残る景気敏感セクターの買いをさらに支援することになりそうだ。
■為替市場見通し
来週のドル・円は下げ渋りか。米国のインフレ緩和や成長率鈍化が予想され、米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続観測はやや後退した。ただ、日本銀行は現行の金融緩和政策を当面維持する見込みであり、ドル・円相場を支える要因となろう。FRBは前回6月13-14日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ休止を決めたが、7月25-26日開催の次回会合で0.25ポイントの利上げを再開する公算。ただ、市場はすでに織り込み済みで、リスク選好的なドル買いは限定的となりそうだ。同会合では9月以降の政策方針が注目される。足元の米インフレ指標は総じて弱含みとなっており、物価高は抑制されつつある。7月28日発表の6月コアPCE価格指数も弱い内容が予想され、FRBの追加利上げ余地を縮小させるだろう。
また、製造業を中心に景況感が悪化するなか、直近の小売売上高は予想を下回った。27日発表の4-6月期国内総生産(GDP)が低調なら景気後退が意識され、年内2回の利上げ観測はさらに後退する可能性もあろう。
一方、日本銀行は長短金利操作(YCC)の許容変動幅拡大などで緩和政策に修正を加えるとの観測が広がっていた。ただ事前の観測報道を受け、7月27-28日の日銀金融政策決定会合では従来通り緩和継続の可能性が高く、円売り優勢となりそうだ。
■来週の注目スケジュール
7月24日(月):日・全国百貨店売上高(6月)、日・トライトが東証グロースに新規上場、米・ナスダック100指数リバランス、など
7月25日(火):日・フラーが東証グロースに新規上場、独・IFO企業景況感指数(7月)、米・S&P/コアロジックCS20都市住宅価格指数(5月)、米・消費者信頼感指数(7月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)(26日まで)、国際通貨基金(IMF)が世界経済見通し(WEO)公表、など
7月26日(水):日・企業向けサービス価格指数(6月)、景気動向指数(5月)、日・テクニスコが東証スタンダードに新規上場、日・エコナビスタが東証グロースに新規上場、米・新築住宅販売件数(6月)、米・連邦公開市場委員会(FOMC)が政策金利発表、米・FOMC終了後、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が記者会見、など
7月27日(木):日・日銀政策委員会・金融政策決定会合(1日目)、中・工業利益(6月)、欧・欧州中央銀行(ECB)が政策金利発表、ラガルド総裁が記者会見、米・耐久財受注(6月)、米・GDP速報値(4-6月)、米・中古住宅販売成約指数(6月)、など
7月28日(金):日・消費者物価指数(東京都区部)(7月)、日・日銀政策委員会・金融政策決定会合(2日目)、終了後決定内容発表、日・植田日銀総裁が会見、日・クオルテックが東証グロースに新規上場、日・GENDAが東証グロースに新規上場、米・雇用コスト指数(4-6月)、米・個人消費支出(PCE)価格コア指数(6月)、など
《YN》