明日の株式相場に向けて=ソシオネクスト、反撃高の号砲鳴る
週明け31日の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比412円高の3万3172円と急反発。前週末の米株市場は 半導体関連などを中心に高く、為替の円安も追い風にリスクオンに傾いた。月末の大口クロスが観測されたとはいえ、売買代金は前週末に続き5兆円を上回る大活況で、これはTOPIXがバブル後高値を更新したということ以上にインパクトがある。前週末と合わせた2営業日合計で10兆8000億円は特筆に値する。
今週は、週末4日に7月の米雇用統計発表を控えるとはいえ、前週の中銀ウィーク通過と企業の決算発表本格化が入れ替わる形で、マクロからミクロへと視点が移りやすい週だ。日銀は「政策変更はしない」と口で言いながら、緩和策の出口をまさぐるような曖昧戦略を打ち出し株価を乱高下させた。マーケットとの対話という点で問題点を残したが、株式市場は株価さえ上昇トレンドを維持できれば“おとがめなし”という世界でもある。その意味で今週の日経平均がどういう軌道を描くかは、日銀にとっても手に汗を握る場面といえる。
そうしたなかソシオネクスト<6526>がようやく反騰態勢を明示、75日移動平均線をマドを開けて上回るとともに、25日移動平均線とのマイナスカイ離を解消する動きをみせた。商いも高水準に膨らんだ。きょうは売買代金で不動の首位の座を占めるレーザーテック<6920>にこそ及ばなかったものの、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>やソフトバンクグループ<9984>を押しのけ堂々の2位に入った。ネット証券大手の店内では「ソシオネクストについては個人投資家の信用枠をフルに使った買いが活発。きょうは目先筋の利食いを映して(個人は)売り越しだが、同社株への関心の高さはひと頃のレーザーテックを彷彿とさせる」(同証券のマーケットアナリスト)という。
前週末発表した同社の24年3月期第1四半期(23年4~6月)決算は営業利益段階で前年同期比8割増となる101億円と急拡大した。SoC(システム・オン・チップ)の量産本格化に伴い収益が押し上げられた。同社の4~6月期が好調であることは事前のコンセンサスとしてあった。その意味で、元来なら好決算が素直に評価されるかはフタを開けないことには分からない部分もあるが、「(同社の場合は)予想を大きく上回る好決算であったことに加え、株価が底値圏にいたことで物色人気に一気に火をつけた」(同)とする。
きょうはソシオ・ショックならぬソシオ効果が期待されるところだったが、東京エレクトロン<8035>やディスコ<6146>、ルネサスエレクトロニクス<6723>などは買われた一方、アドバンテスト<6857>が軟調な値動きでSUMCO<3436>もほぼ横ばいの推移となるなど、必ずしも半導体主力銘柄にリスクを取る動きが一様に波及する地合いではなかった。円安も考慮すると、きょうの値動きはある意味で拍子抜けだった部分もある。ただし、半導体セクターを取り巻く環境は以前とはかなり変わってきている。米国株市場ではフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)の上昇が顕著で既に年初来高値を更新中だ。日本の半導体関連は比較感から買われやすい面はある。
特に生成AI市場の拡大に合わせて商機が高まっている半導体関連はことさら注目度が高い。イビデン<4062>は8月2日決算で目先は買いにくいが、エヌビディア<NVDA>のGPU向けパッケージで収益機会を有する企業として、中期的に株価の居どころが変わる可能性があり、決算発表通過後に買いの機を探る対象としてチェックしておきたい。中小型株ではエヌビディア関連の一角であるAKIBAホールディングス<6840>なども思惑買いの対象となりやすい。このほか、半導体関連では次世代パワー半導体分野も注目で、こちらは貸株による空売り残が溜まっているMipox<5381>などが目先マークされる。
あすのスケジュールでは6月の有効求人倍率、6月の失業率のほか10年物国債の入札が予定される。海外では7月の財新中国製造業購買担当者景気指数(PMI)、豪中銀の政策金利発表、6月のユーロ圏失業率、7月の米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数、6月の米建設支出、6月の米雇用動態調査など。国内主要企業の決算発表では、アステラス製薬<4503>、ローム<6963>、トヨタ自動車<7203>、三井物産<8031>、三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>、日本航空<9201>などが予定される。また、海外ではメルク<MRK>、ファイザー<PFE>、キャタピラー<CAT>、アドバンスト・マイクロ・デバイシズ<AMD>などが決算発表を行う予定。(銀)
最終更新日:2023年07月31日 18時09分