プラチナはトレンド模索、米利上げ停止観測や中国の消費回復策が下支え <コモディティ特集>

特集
2023年8月2日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は7月、米連邦準備理事会(FRB)の利上げ停止見通しが強まると、買い戻されて堅調となり、約1ヵ月ぶりの高値992ドル台をつけた。その後は、景気減速懸念に上値を抑えられたが、中国の消費回復策が発表されたことやユーロ圏の域内総生産(GDP)でプラス成長を回復したことを受け、923ドル台で下げ一服となった。欧米の利上げが発表されており、景気減速懸念が強まれば戻りを売られる可能性があるが、9月以降は米FRBの利上げ停止見通しが強く、ドル安に振れれば下支えになるとみられる。当面は経済指標を確認しながら900~1000ドルで方向性を模索することになりそうだ。

6月の米消費者物価指数(CPI)は前年比3.0%上昇と前月の4.0%上昇から伸びが鈍化し、約2年ぶりの低水準となったことで米FRBの利上げ停止見通しが強まった。ただ、労働市場が堅調なことで高インフレが続くとの見方も残っている。26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では0.25%ポイントの利上げが決定され、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標は5.25~5.50%となった。パウエル米FRB議長は9月の米FOMCでも利上げを決定する可能性があるとしたが、市場では利上げ停止を織り込んでいる。CMEのフェドウォッチでは、9月の米FOMCでの金利据え置きの確率は81.5%(前月69.1%)となっており、年末まで維持されるとみられている。

また、27日の欧州中央銀行(ECB)理事会でも0.25%ポイントの利上げが決定された。インフレ抑制のため、今後の利上げ継続見通しが強かったが、ラガルドECB総裁が記者会見でデータ次第と述べたことから、9月の利上げ停止の見方も出た。

一方、28日の日銀金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロール(YCC)柔軟化を決定し、長期金利がそれまでの上限であった0.5%を上回ることを容認した。ただ、金融政策の正常化は年末以降とみられるなか、週明けに臨時の国債買い入れオペを通知し、長期金利の上昇を0.6%で抑えた。金融緩和継続を受けて円安が続くとみられているが、資金の本国回帰が始まるかどうかも当面の焦点である。

●中国はGDP鈍化で消費回復策などを発表

第2四半期の中国の国内総生産(GDP)は前期比0.8%増と事前予想の0.5%増を上回ったが、第1四半期の2.2%増から伸びが大幅に鈍化した。中国の景気回復の遅れに対する懸念が強い。中国は28日、消費者向け産業を後押しする計画や証券取引所の成長促進策を発表した。

また、中国国務院は31日、自動車、不動産、サービス部門の消費回復・拡大策を発表した。7月の中国の製造業購買担当者景気指数(PMI)は49.3と前月の49.0から上昇した。事前予想の48.9も上回った。50の節目を下回っているが、一連の政策を受けて回復するようなら先行きに対する楽観的な見方が戻ることになりそうだ。ただ、財新製造業PMIは49.2と前月の50.5や事前予想の50.2を大幅に下回った。

●プラチナETF残高は小幅減少

プラチナETF(上場投信)残高は8月1日の米国で30.68トン(6月末30.84トン)、7月31日の英国で13.24トン(同13.19トン)、南アフリカで13.22トン(同13.31トン)となった。英国で増加したが、米国と南アで投資資金が流出し、合計で0.20トン減少した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、7月25日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは1万5487枚(前週1万5736枚)に縮小した。7月11日に3月7日以来の低水準となる7787枚まで縮小したのち、米FRBの利上げ停止見通しを受けて買い戻されたが、戻りが一服すると、手じまい売りが出た。中国の消費回復策などを受けて安値拾いの買い意欲が強まるかどうかを確認したい。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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