明日の株式相場に向けて=今年最大の下げと大活況相場の謎

市況
2023年8月2日 17時00分

きょう(2日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比768円安の3万2707円と今年最大の下げ。先物主導とはいえ、上下に目まぐるしい投資家泣かせのハイボラティリティ相場が続いている。前日の米国株市場ではNYダウはキャタピラー<CAT>の好決算を受けた株高効果で続伸、ハイテク株比率の高いナスダック指数も軟調とはいえ小幅の下げにとどまり、為替も円安方向で、きょうの日本株は少なくともリスクオフの環境にはなかった。朝方の米国債の格下げも理由に挙げるには根拠が薄く、その証拠に米株価指数先物の下げは軽微だった。インデックス売買による需給オンリーで振り回されている感が強い。

前週末の日銀金融政策決定会合で、事実上のイールドカーブ・コントロールの許容変動幅拡大が決定された。したがって、今週は潮の流れを慎重に見極めねばならず、安易に一方向にポジションを傾けにくいという思惑が働くところ。市場関係者からも「(今週は)売り買いともに“様子見ウィーク”ではないか」(中堅証券アナリスト)とする声が聞かれた。

ところが、その予想は大きく裏切られることになる。週明け早々の31日に日経平均はロケットスタートで一時600円以上の急伸をみせ、大引けも400円強の大幅高で着地。その余勢を駆って、8月相場入りとなった前日は300円あまり水準を切り上げた。月を跨いでの2営業日で700円高という大立ち回りを演じたが、何よりも驚かされるのは売買代金である。プライム市場では前週末に5兆7000億円、週明けに5兆1000億円と連日の5兆円超え。そして前日が4兆3000億円、そしてきょうも4兆5000億円近くに膨らんだ。元来であれば“夏枯れ”のこの時期に、目を見張るほどの活況商いといってよい。

とはいえ、足もとで海外マネーの日本買いが再び加速しているという感触はない。正体は何か。市場では「決算発表シーズンに合わせたファンド筋による銘柄入れ替えの動きが観測される」(国内証券ストラテジスト)という。これは、俗に言う決算トレードとは意味が異なる。例えば具体的な例ではゼンショーホールディングス<7550>の急落。利食い急ぎで売りが売りを呼ぶことはあるが、11連騰後の理由なき“特大陰線”はあまりに不自然。「考えられるのは8月11日発表予定のMSCIの銘柄入れ替え。ここで同社株の採用期待があったが、それが外れたか、もしくはその類いの情報が何らかの形で漏れた可能性はある」(同)とする。MSCIに限らず、日本株買い一巡後の第2幕で決算シーズンに紛れてファンド筋による銘柄チェンジが活発化している気配がある。新規買いではないものの結果的に回転売買効果をもたらし、売買代金を急増させているケースが考えられる。

個別では前日好決算を発表したトヨタ自動車<7203>が、全般相場急落に流されず3連騰と気を吐いた。商いも高水準を極め、売買代金首位の座を巡ってはレーザーテック<6920>と最後までデッドヒートを演じ、結局最後にトヨタが抜き返しトップとなった。トヨタは時価総額では国内で群を抜く存在ながら、意外にもこれまで売買代金で全銘柄の首位に躍り出ることは滅多になく、ファンドによるヘビー級のリバランスが反映された可能性はある。

きょうの下げ自体は現時点で過剰に警戒する必要はなさそうだが、8月相場はスケジュール的に気になるポイントがある。市場筋によると「今月22日に行われるBRICS首脳会議に注目度が高い。対米国で利害が一致するロシアと中国がゴールド(金)をベースとしたブリックス圏内の新たな決済通貨を立ち上げるとの噂が一部にある」(ネット証券マーケットアナリスト)という。金の産出量ではロシアと中国は上位を占めており、あながち一笑に付す話ではない。22日のBRICS会議はキナ臭さも漂うだけに、相場の波乱要因となる可能性も念頭に置いておく必要はありそうだ。この話の信憑性はともかく、目先金市況の動向はマークしておきたい。

あすのスケジュールでは、8月の日銀当座預金増減見込みが朝方取引開始前に発表される。海外では7月の財新中国非製造業PMI、6月の豪貿易収支、6月の豪小売売上高、4~6月期米労働生産性指数、6月の米製造業受注、7月の米ISMサービス業景況感指数など。国内主要企業の決算発表では三越伊勢丹ホールディングス<3099>、花王<4452>、Zホールディングス<4689>、JFEホールディングス<5411>、任天堂<7974>、三菱商事<8058>、日本郵船<9101>などが予定される。海外主要企業ではアップル<AAPL>、アマゾン・ドット・コム<AMZN>の決算発表にマーケットの関心が高い。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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