来週の株式相場に向けて=20数年ぶり「米財政赤字」が焦点に復活か

市況
2023年8月4日 18時01分

今週の東京株式市場は予想外の波乱に見舞われた。日経平均株価は2日と3日で1300円強下落し、きょうは一時3万2000円を割り込んだ。

相場波乱の震源となったのは米国で格付け会社フィッチ・レーティングスが、米国の国債格付けを「AAA」から「AAプラス」へ1段階引き下げたことだ。この米国債格下げそのものが引き起こす余波は一時的とみる声が少なくない。ただ、市場関係者からは「まだ初期の段階だが、金利上昇と米国の財政赤字に目を向けさせたという点で意義深いものがある」という指摘が出ている。

米国の財政赤字問題に焦点が当たるのは、1990年代のクリントン政権時代以来、20数年ぶりともみられている。2000年代に入り、金利が低下するなか財政赤字問題は片隅に追いやられていた。しかし、インフレ懸念で金利が急上昇するなか、財政赤字による利払い負担が再びクローズアップされつつある。

「米国の長期金利4%が分水嶺であり、この水準から一段と上昇するかを注視している」と市場関係者はいう。折しも今晩は米7月雇用統計の発表がある。市場では米国の雇用動向が注視されてきたが、今後は米財政状況に目が向けられる可能性もある。例えば、来週は10日に市場が注目する米7月消費者物価指数(CPI)が発表されるが、同日の米7月財政収支を気にする動きも徐々に強まりそうだ。また、9日には米10年債の入札が予定されている。

例年8~9月の相場は波乱となることが多いが、日本でも先月の日銀金融政策決定会合以降、金利動向は注視されている。こうしたなか、金利上昇下で相場の物色の柱となるのは金融株だ。三菱UFJフィナンシャル・グループ<8306>など銀行株や第一生命ホールディングス<8750>など生損保株の相場はまだ若く、見直し余地は大きいだろう。一方、金利が低下すれば再びハイテク株が見直される。両者の綱引きはしばらく続くことが予想される。

前出以外のスケジュールでは、来週は日本の第1四半期決算が佳境を迎える。9日に400社強、10日には850社強が決算発表を行いピークを迎える。翌週14日の300社強の発表で決算シーズンは終了する。具体的には、7日には大成建設<1801>やレーザーテック<6920>、8日にはソフトバンクグループ<9984>やニトリホールディングス<9843>、9日にはソニーグループ<6758>やホンダ<7267>、10日には東京エレクトロン<8035>や楽天グループ<4755>などが決算発表を行う。11日は「山の日」の祝日で休場となる。

海外では、8日に米6月貿易収支、9日に中国7月CPIが発表される。8日にイーライ・リリー<LLY>、9日にウォルト・ディズニー<DIS>の決算が予定されている。来週の日経平均株価の予想レンジは3万1500~3万2700円前後。(岡里英幸)

出所:MINKABU PRESS

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