馬渕治好氏【下げ終了かそれとも? 夏相場後半戦の展望】(1) <相場観特集>
―為替も乱高下、日経平均3万2000円割れで思惑錯綜―
週明け7日の東京株式市場は、朝方は前週末の米株安を受け売りが先行したが、日経平均株価が3万2000円台を割り込んだ水準では押し目買いが観測され大引けは高くなった。依然として不安定な値動きを強いられているものの、今週ピークを迎える企業の決算発表はここまで良好な内容が目立つ。外国為替市場では日銀の会合後に方向感の定まらない動きにあるが、こちらも今後の動向に投資家の視線が集まる。株の見通しと為替の動向について、それぞれ業界第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「8月は下落歩調続き秋口以降に再浮上へ」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
日経平均は目先3万2000円台近辺での攻防だが、全体相場の流れは下値模索の方向にあり、今月中旬から9月初旬に向けてもう一段の下落局面があるとみている。波動のイメージとしてはいったん調整を入れてから年末にかけて高値を目指す展開を想定している。日経平均は8月は売り優勢の地合いが継続し、向こう1ヵ月以内に3万円を大きく割り込むような深押しがあって不思議はないと考える。ただし、来年も見据えた中長期トレンドは上向きなので、ここから下落局面があれば漸次買い下がっていく方針で対処したい。
米国のインフレ懸念については収束したようにも見えるが、今週10日発表の7月の米消費者物価指数(CPI)はコア指数の前年比は6月とほぼ同水準の一方で、総合指数の方は前年比の伸び率が高まるとの見方が強く、現時点で警戒要素は拭えない。また、米国ではマネーサプライの指標であるM2が、昨年12月に1960年以降の統計で初めて前年比マイナスとなり、直近まで7ヵ月連続でマイナス局面が続いている。この背景には量的引き締め(QT)や民間金融機関の貸し渋りなどがあると思われるが、いずれにしても今の米株市場はこうしたネガティブ材料が反映されない形で、買うから上がる、上がるから買うというロジックで過剰な上昇を示した。その反動がこれから顕在化する公算が大きい。
話題となった日本株に対する高水準の外国人買いも、いわば“ツーリスト投資家”がかなりの部分を占めていて、旅人のごとく一つの場所にとどまらない資金も多い。東証の改善要請を受け、企業の低PBR是正の動きなどが期待されたが、もちろん一朝一夕には結果が出るものではない。よく考えれば当たり前の話だが、こうしたツーリスト投資家の目から見れば「当初の期待から外れた」ということにもなりやすく、その資金が再び日本国外に流出してしまうという現象を映しているのが、最近の精彩を欠いた日本株の株価動向だ。今の相場は2012年12月からスタートしたアベノミクス相場の初動に似ており、急上昇後にいったん大幅な調整を挟んで、その後に本格的な上昇局面に向かうというパターンを今回もたどる可能性が高いのではないかと考えている。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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