プラス圏でもみ合う展開/後場の投資戦略
日経平均 : 32315.61 (+255.70)
TOPIX : 2294.12 (+13.23)
[後場の投資戦略]
15日の日経平均は312.62円高の32372.53円と反発して取引を開始した。ナスダック総合指数が1.05%上昇、主要な半導体関連銘柄で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)が2.87%上昇と、東京市場でハイテク株や半導体関連株の株価支援要因となった。また、円安・ドル高が進行したことが、東京市場で輸出株などの株価を支える要因となった。一方、25日移動平均線が上値抵抗線となり、中国の景気懸念が意識される中、ここからの上値は大きくないとの見方があった。買い一巡後は上値の重い展開となっている。
新興市場もはまちまち。マザーズ指数は上昇スタート後即座にマイナス圏に転落、前場中ごろに下げ渋ったものの戻りは鈍い。一方、グロース市場の時価総額上位20銘柄で構成される東証グロース市場Core指数は上昇スタート後、プラス圏での推移が続いている。米ハイテク株に買い戻しの動きが広がったことは国内の投資家心理を改善する要因となった。ただ、米長期金利が4.2%台まで上昇しており、バリュエーション面での割高感が意識されやすい新興株を手掛けにくい地合いが続いており、時価総額上位銘柄中心に注目が集まっている。前引け時点での東証マザーズ指数は1.39%安、東証グロース市場Core指数は1.22%高。
4-6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は前期比年率6.0%増と、3四半期連続のプラス成長となった。前期比で内需がマイナス0.3ポイント、外需がプラス1.8ポイントの寄与度だった。半導体の供給制約が緩和された自動車の増加がけん引したほか、インバウンド(訪日外国人)の回復もプラスに寄与して輸出は前期比3.2%増で2四半期ぶりのプラスとなった。また、輸入は同4.3%減で3四半期連続のマイナスとなりGDPを押し上げた。一方、物価高が続く中で個人消費は同0.5%減と5期ぶりのマイナスとなっており、個人消費の減退が継続するかには注目しておきたい。
そのほか、イエレン米財務長官は14日、米経済に対する楽観的見方を著しく損なうものではないと語っており、成長は減速しつつあるが労働市場は極めて力強く、インフレ率も低下している米国についてポジティブに捉えているようだ。ただ、中国の経済的苦境について米国にとって「リスク要因」との認識を示し、米国にも一定の波及効果があるだろうと語っている。前日の当欄でも示唆したが、各国の経済状況を注視するだけでなく、今後は米国と中国の動き、台湾情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクを念頭に置いて相場や企業の動向を見守っていく必要があるだろう。
さて、このような状況下、出遅れ感や割安感が残る中小型株のほか、中国人の旅行需要というカタリストが意識されはじめたインバウンド関連などには引き続き注目しておきたい。日本円は対人民元で今年4.8%下落と他のアジア諸国通貨に比べ最も下げており、中国からの観光客を呼び込みやすいという見方もある。また、今年の訪日中国人旅行者数はコロナ禍前に比べてわずか13%しか戻っていないようで、今後の増加余地は大きい。
日本政府観光局のデータによると、中国人訪日客は2019年には国・地域別で最多の959万人に上り、1兆7000億円以上消費していたという。2023年4月-6月の訪日中国人の観光・レジャー目的の支出において、最も大きな割合を占めたのは「買い物代」で、次いで「宿泊費」「飲食費」となっている。今後仮に中国人観光客が回復すると、訪日中国人に人気のある「化粧品・香水」や「菓子類」「医薬品」などの購入がつながるドラッグストア、コンビニエンスストア、空港の免税店などは恩恵を受けそうだ。また、宿泊や観光関連の企業のほか、百貨店各社も引き続き好影響を受ける可能性がある。
国内企業の4-6月期決算発表は昨日で一巡した。8月は海外の投資家の夏休み入り、国内投資家の休日も重なり売買が細りやすい傾向があるほか、株式市場が下落しやすい季節性も存在する。ひとまず、決算発表を受けて個別銘柄への注目が続きそうで、決算を受けて上下に大きく動いた銘柄、好決算でありながらも動意の乏しかった銘柄についてはピックアップしておきたいところか。また、上述のインバウンド関連も目が離せない。さて、後場の日経平均はプラス圏でのもみ合い展開継続なるか。決算発表を終えた銘柄の値動きに注目しておきたい。(山本 泰三)
《AK》