新興市場見通し:一進一退か、自律反発狙いも上値は重い
■地合い悪化で手仕舞い売り
今週の新興市場は大幅続落。米長期金利の上昇が続くなか、中国経済の悪化を警戒してリスクオフの地合いが強まり、流動性リスクやこれまでの信用買いによるレバレッジ拡大が重しになりやすい新興株には手仕舞い売りが膨らんだ。米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨(7月開催分)は想定以上にタカ派色の濃い内容で、米10年債利回りは週後半には昨年10月高値を上回る水準にまで上昇。結局、マザーズ指数などは前の週末からの下落が続き、6日続落となった。なお、今週の騰落率は、日経平均が-3.15%だったのに対し、マザーズ指数は-5.94%、東証グロース市場指数は-5.62%だった。
個別では、決算を材料にjig.jp<5244>、INFORICH<9338>、Laboro.AI<5586>、GNI<2160>、シェアリングT<3989>、HENNGE<4475>などが大幅に上昇。一方、減益や赤字決算、増益率鈍化の決算に対しては厳しい売りが見られていて、モンスターラボ<5255>、マイクロアド<9553>、AtlasT<9563>、ブシロード<7803>、クリングル<4884>、AViC<9554>などは大きく下落。決算以外では、ラクスル<4384>が株式公開買い付け(TOB)の実施を発表したAmidAホールディングス<7671>がTOB価格にサヤ寄せする動きとなり急伸。直近の新規株式公開(IPO)銘柄であるGENDA<9166>は週末にかけて5日続伸し、騰勢を強めた。
■ジャクソンホール会議を前に動きにくい
来週の新興市場は一進一退か。手掛かり材料が少ないなか、最大の注目イベントである米カンザスシティー連銀主催のジャクソンホール会議でのパウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長の講演は、日本時間25日の午後11時頃と伝わっている。イベントを消化するのは翌週になるため、週末まで積極的な売買は手控えられることになりそうだ。
一方、今週、新興株の手仕舞い売りを誘った要因の一つである米長期金利については週末にかけて上昇が一服している。ジャクソンホール会議を前にした様子見ムードで、米長期金利が小康状態になれば、今週大きく下落した新興株には自律反発狙いの買いが入りやすいだろう。
ただ、地合いの悪化を招いたもう一つの要因である中国・香港株については依然として不透明感が強い。今週末、中国人民銀行が人民元の下支えを強化したことを受け、人民元の反発とともに中国・香港株も一時下げ止まったが、取引後半にかけては結局大きく下落し、投資家の警戒感は解消されていないようだ。中国・香港株がさらに下落するようであれば新興株も影響を免れないだろう。
今週は新興株だけでなく、東証プライム銘柄でも中小型のグロース(成長)株は厳しく売られていた。また、信用買い残が大きく増加していたオリンパス<7733>やダイキン<6367>などの銘柄が下値模索の展開となっており、個人投資家の含み損益の悪化も推察される。
米長期金利の動き次第では自律反発狙いの買いが入りやすいものの、中国・香港株の動向が不安定で、ジャクソンホール会議の結果反映が翌週となることを踏まえれば、戻り待ちの売りも強く、総じて上値の重い展開が続きそうだ。
個別では、初値を下回るまでに下落していたABEJA<5574>が週末にかけて短期底入れ感を示唆する動きになっており、注目したい。また、BuySell<7685>は決算が物足らなかったとはいえ、さすがに2日連続のストップ安などもあり、バリュエーション面では魅力を感じる水準になってきた。両銘柄の動きに注目したい。なお、BuySellは今週末の大引け後に自社株買いを発表している。
《FA》