米国株式市場見通し:8月雇用統計やコア物価指数に注目
9月連邦公開市場委員会(FOMC)での金融政策を左右する8月雇用統計や7月PCEコア価格指数に注目だ。FRBは9月FOMCでは利上げを見送る一方で11月には0.25ポイントの利上げを再開するとの見通しも根強く、引き続き相場の重しになりそうだ。また、中堅銀の破綻を受けて、米連邦預金保険公社(FDIC)が資産総額1000億ドル以上の銀行を対象に、万一破綻した場合でも資本損失をカバーするのに十分な長期債発行を義務付けることを提案する計画で、高金利に加えて金融機関に対する規制強化の可能性は引き続き金融セクターの重しとなり、相場を抑制することになりそうだ。
FOMCの中でも金融政策決定において、パウエル議長や副議長と同等に影響力があるとされるNY連銀のウィリアムズ総裁やタカ派で知られるフィラデルフィア連銀のハーカー総裁は、金融政策が現状で十分に引き締まっているとの考えで利上げ終了を示唆した。一方、パウエル議長や一部FRB高官はインフレが依然高過ぎで追加利上げを除外していない。雇用関連やインフレ関連指標の結果を受け、利上げ軌道を巡る憶測に引き続き上下する商状になるだろう。
6月JOLTS求人件数は2021年以来の低水準になるなど、一部では雇用ひっ迫緩和の兆候も見られる。一方、週次新規失業保険申請件数は依然低水準を維持。8月雇用統計でも失業率が3.5%と50年ぶりの低水準付近で推移する見込みだ。ただ、非農業部門雇用者数は16.8万人増と、7月からは伸びの鈍化が予想されており、9月の政策金利据え置きを正当化する可能性がある。FRBがインフレ指標として注視している7月のPCEコア価格指数は前年比で伸びが拡大すると予想されており、もし、予想通りにインフレ鈍化が進まないとなると、年内の追加利上げの思惑は完全に払しょくせず、相場の上昇を抑制することになるだろう。
経済指標では8月ダラス連銀製造業活動指数(28日)、6月FHFA住宅価格指数、6月S&P20都市価格指数、7月JOLTS求人件数、8月消費者信頼感指数(29日)、8月ADP雇用統計、7月前渡商品貿易収支、4-6月期GDP改定値、7月中古住宅販売仮契約(30日)、8月週次新規失業保険申請件数、7月PCEコア価格指数、8月シカゴPMI(31日)、8月雇用統計、8月製造業PMI確定値、8月ISM製造業景況指数(9月1日)などが予定されている。
主要企業決算では小売りで、ディスカウント小売りのビッグ・ロッツ(29日)、カルバンクラインなどのブランドを運営するPVH(30日)、ディスカウント小売りのダラー・ゼネラル、ヨガアパレルのルルレモン(31日)、ハイテク関連では、コンピュ―ターメーカーのHP、ソフトウェア開発会社のボックス(29日)、クラウド型ソフトウェア会社のセールスフォース、サイバーセキュリティサービスを提供するクラウドストライク・ホールデイングス(30日)、コンピューターメーカーのデル・テクノロジーズ、半導体メーカーのブロードコム(31日)、そのほか、食品メーカーのJMスマッカー(29日)、などが予定されている。
ディスカウント小売りのダラー・ゼネラルは同業ダラー・ツリーと同様、見通しの下方修正に警戒しておきたい。また、ヨガアパレルのルルレモンも、他のスポーツ用品小売りのナイキなどの決算が芳しくないため警戒したい。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》