笹木和弘氏【高速リバウンド局面に、9月相場は上か下か】(1)<相場観特集>
―日経平均3万2000円を挟んだ攻防で強弱観が対立―
週明け28日の東京株式市場は日経平均株価が500円を超える急反発に転じた。気がつけば明後日の30日から実質9月相場入り(8月権利落ち日)となる。9月相場は果たして日経平均が上昇トレンドを取り戻せるのかどうか。米国株市場の動向や中国の景気実態などに左右されやすく、先行き不透明感が拭えないなか、業界筋の見解も分かれるところだ。ここからの日本株や米国株の見通しについて、第一線で活躍する市場関係者2人に意見を聞いた。
●「『中国』と『米財政』の2大リスクを警戒」
笹木和弘氏(フィリップ証券 リサーチ部長)
米ジャクソンホール会議は、ほぼ想定の範囲内の結果だった。年内あと1回の利上げが想定され、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)は見送りで11月頃に実施との観測も出ているが、利上げがいつかは誤差の範囲程度とみることもできる。
ただ9月の米株式市場は、軟調相場となることが多く、今年も同様の展開となる可能性はありそうだ。警戒要因の一つは大手不動産企業の経営不安などが強まる「中国リスク」だ。もう一つは米国の「財政」問題であり、9月の米議会の再開後に来年度予算を巡り、紛糾する恐れがあることだ。場合によっては、米国債の格下げ懸念が再燃しないとも限らない。足もとで米実質金利が高水準にあることも警戒要因で、「中国」と「米財政」問題を背景に9月の米株式相場は軟調展開が予想される。
今後1ヵ月程度のNYダウの想定レンジは3万1000~3万4500ドル前後。トレンドは下向きで、NYダウは今年の安値を試す展開となることもあり得る。ナスダック総合株価指数も1万2000割れへとやはり軟調な展開が予想される。
個別銘柄では、電気自動車(EV)用電池に使われるリチウム生産大手のアルベマール<ALB>に注目している。旺盛なEV向け需要などでリチウムは不足状態が続くことが予想され、同社は経済安全保障の観点からも重要性は増している。
また、パランティア・テクノロジーズ<PLTR>は、軍事用などでの人工知能(AI)の活用に絡んで見直し余地は大きいだろう。アルファベット<GOOG>も「Other Bets事業」のポテンシャルに注目の余地があり、自動運転での展開などで、その実力はなお評価されていいだろう。更に英半導体設計大手、アーム・ホールディングスの上場が近づいているとみられるなか、半導体の電子設計自動化(EDA)関連のシノプシス<SNPS>なども注目されそうだ。
(聞き手・岡里英幸)
<プロフィール>(ささき・かずひろ)
証券会社にて、営業、トレーディング業務、海外市場に直結した先物取引や外国株取引のシステム開発・運営などに従事。その後は個人投資家の傍ら投資セミナー講師として活躍。2019年1月にフィリップ証券入社後は、米国・アセアン・香港・日本市場にまたがり、ストラテジーからマクロ経済、個別銘柄、コモディティまで多岐にわたる分野でのレポート執筆などに精力的に従事。
株探ニュース