明日の株式相場に向けて=秋雨前線ウェルカムの9月相場
きょう(29日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比56円高の3万2226円と続伸。取引終盤は目先筋の利食い急ぎの動きや戻り待ちの売りが出て上げ幅を縮小させたが、3万2200円台を維持し前場の安値を下回ることはなかった。前日のように半導体関連が買われるわけでもなく迫力に乏しい地合いながら、値上がり銘柄数は1200を上回りプライム市場の67%、つまり3銘柄のうち2銘柄は上昇した格好となっている。
早くも今日は8月の権利取り最終日であり、明日から受け渡しベースで実質9月相場入りとなる。振り返れば8月は厳しい相場環境を余儀なくされたが、最終コーナーを回った最後の直線で何とか脚力を発揮し意地をみせた。75日移動平均線を下放れなかったことで、9月相場に期待を残す形となった。もちろん、これは同じ時間軸での世界的株高と為替市場での円安が運よく味方をしたことが大きい。前日は日本株を含むアジア株市場が軒並み高かったが、欧州時間に入ってもリスクオンは変わらず主要国をはじめほぼ全面高商状、更に欧州からバトンを引き継いだ米国株市場も景気敏感株からハイテク株までおしなべて買われ、NYダウ、ナスダック指数ともに上昇した。勢いで世界株高がもう1周くらい続いてもおかしくないとの思惑が働いたのか、アジア株はきょうも一斉高の様相をみせた。
景気低迷が取り沙汰される中国だが、上海総合株価指数、香港ハンセン指数ともに連騰している。今週は原発処理水の海洋放出に絡み日中関係悪化が喧伝されるなかにあって、日本も中国も株式市場の方はいずれもどこ吹く風で強調地合いとなった。中国は証券取引印紙税の0.05%引き下げという市場活性化策を当局が打ち出したことで、これが奏功した形だがカンフル剤としては弱い。「前回に(印紙税引き下げを)打ち出した時は約1カ月程度効果を発揮した」(ネット証券アナリスト)というが、賞味期限1カ月として、その間に二の矢を継ぐことができるかにマーケットの関心が向くことになる。
東京市場は日経平均が3万2000円ラインを巡る攻防だが、3万1000円台では押し目買いが優勢でも3万2000円台に入ると、途端に戻り売りが湧き出てくる。5日・25日・75日移動平均線が収れんする時価近辺は“胸突き八丁”の株価水準で、容易には前に進めない。ちなみに8月は第3週に外国人の現物売りが炸裂し、この週の売り越し額は7400億円あまりに達した。これによって月間でも現状で売り越しとなっているが、元来8月は海外筋にとって“回収期間”であり、過去10年間遡って実に9回売り越している。8月に買い越した年は春先にコロナショックで暴落に見舞われた2020年のみだ。
では、9月はどうかというと、これまた外国人は買い気の乏しい月である。過去10年間で8回売り越し、しかも直近まで(昨年9月まで)何と8年連続で売り越している。外国人の売り越しイコール株安では決してないのだが、明確な買い主体が見えづらく9月は8月の残像を引きずって今一つはっきりしない“秋雨前線”相場となる可能性がある。
ただし、投資家にとって9月は逆の意味で重要な月となる。押し目を買い下がる好機として年内最後のバーゲンハントとなり得るからだ。ウォール街の有名な格言に「セル・イン・メイ(5月に売れ)」があるが、これには続きがあって「9月の第2土曜日を過ぎるまで戻ってくるな」で文章は締められる。つまり9月の第2土曜日を過ぎたら再び投資のタイミングをうかがう時期が訪れるという解釈も成り立つ。これを実証するデータとして10月の外国人売買動向がどうなっているかに興味を惹かれるが、これが期待を裏切らない。過去10年間で実に8回買い越しているからだ。9月は仮に冴えない地合いであったら、そこは買い向かうチャンスということを念頭に置きたい。具体的な銘柄はその時の地合いにもよるが、中期的観点に立てば今はまだ足もとが“ぬかるみ状態”の半導体関連が有力。その際、半導体に関する悪い話はウェルカムで、市況の回復が遅れれば遅れるほど、買いやすくなるという逆転の発想が必要となる。
あすのスケジュールでは、8月の消費動向調査が午後取引時間中に開示される。また、IPOが1社予定されており、東証グロース市場にインバウンドプラットフォーム<5587>が新規上場する。海外では7月の豪消費者物価指数(CPI)、8月の独CPIが注目されるほか、8月のADP全米雇用リポート、4~6月期米GDP改定値、7月の米仮契約住宅販売指数など米国の経済指標にマーケットの関心が高い。(銀)