「アクティブETF」上場間近、投資家層拡大の「起爆剤」に熱視線
―海外では急成長、新NISA開始のタイミングでラインアップは多様化へ―
「アクティブ運用型ETF」の上場が目前に迫っている。東京証券取引所は8月21日、アクティブETF6本の上場を初承認した。これまでインデックス連動型ETFの上場しか認められていなかったが、米テスラ<TSLA>など成長株に集中投資していることで知られるアーク・イノベーションETF<ARKK>をはじめ、世界では既に数多くのアクティブETFが取引されている。来年の新NISA(少額投資非課税制度)の開始を前にしたETFのラインアップの多様化は、個人投資家層の拡大に弾みをつけそうだ。
●6月の上場ルール見直しを機に誕生
アクティブETFは、株価指数など連動対象となる指標が存在せず、ファンドマネジャーらが専門知識を生かしながら組み入れ銘柄の選定などを行うのが最大の特徴だ。これまでも非上場のアクティブ型日本株投資ファンドは存在していたが、6月に上場ルールが見直されたことに伴い、国内で解禁されることとなった。ETFとなることで東証の立会時間中のリアルタイムの価格で売買ができるようになる。
海外ではアクティブETFの普及が進み、個人投資家による売買も活発化している。ETFの調査会社であるETFGIによると、世界のアクティブETFへの投資資産は7月末時点で6280億ドル(91兆6880億円)となり、年初から3割近く増加した。
アクティブETFはインデックスとの連動を前提としておらず、運用会社にとってより柔軟な商品設計が可能となる。成長株投資に重点を置いて高いリターンを追求する商品や、債券への資産配分を増やして相場急変時のリスク耐性を高めた商品など、投資家のニーズにあわせて、さまざまなアクティブETFが誕生することへの期待が膨らんでいる。
●9月7日に6本のアクティブETF上場へ
9月7日に新規上場する6本のETFは、個性的なものばかりだ。独立系運用会社のシンプレクス・アセット・マネジメントからは、「PBR1倍割れ解消推進ETF<2080>」「政策保有解消推進ETF<2081>」「投資家経営者一心同体ETF<2082>」の3本が誕生する。
「PBR1倍割れ」はその名の通り、PBRが1倍未満の銘柄を組み入れ対象とするETF。利益水準や財務状況、流動性などを踏まえたうえで、投資対象とする銘柄を選定する。東証がPBR1倍割れの企業に状況の是正を求めるなか、資本コストや株価に対する上場企業の意識を一段と強めるための一石を投じる形となりそうだ。
「政策保有解消」は、政策保有株式の純資産における比率が一定以上の銘柄を投資対象とする。日本市場全体でみれば、上場企業による政策保有株の圧縮の流れは加速しているものの、依然として持ち合い株式を多く保有する企業が存在している現状がある。こうした企業の経営陣の意識を刺激することで、経営の質の改善や企業価値の向上を狙う。「投資家経営者」は取締役やその親族、資産管理会社などの議決権保有割合の合計が相当程度ある銘柄を投資対象としたETF。オーナー系企業などの中期的な企業価値の拡大を期待してユニバース(投資候補群)を形成する。
●運用会社は新商品の投入検討へ
このほか、野村アセットマネジメントから2本、三菱UFJ国際投信から1本のアクティブETFが登場する。
野村アセットが手掛けるのは「NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信<2083>」と「NEXT FUNDS 日本高配当株アクティブ上場投信<2084>」だ。前者は個別企業の調査・分析を重視したボトムアップ・アプローチにより、ビジネスモデルや経営戦略、財務戦略などを評価し、中長期的に高い自己資本利益率(ROE)が見込める銘柄を中心に組み入れる。後者は高水準の配当と中長期的な値上がり益を合わせたトータルリターンの追求を目指す。
三菱UFJ国際投信の「MAXIS高配当日本株アクティブ上場投信<2085>」も配当と値上がり益の両方を狙うもの。大型・中型株の中から30銘柄以上に投資することを基本とする。
今回の3社によるアクティブETFにとどまらず、運用会社各社ではさまざまな商品の投入が検討されている。日本株にとどまらず、債券や外国株などさまざまな資産をもとにしたアクティブETFが誕生することも見込まれており、個人投資家にとっては投資対象の幅が一段と広がることとなる。
2024年1月に始まる新NISAでは現行制度に比べ投資枠が拡大する。政府が資産所得倍増策に注力をするタイミングで、海外で急拡大するアクティブETFの国内上場が相次げば、新たな投資家層の市場参入を促し、金融市場の活性化に大いに貢献しそうだ。
株探ニュース