米国株式市場見通し:季節性要因が重し、ベージュブックに注目
9月は株価パフォーマンスが弱いという季節性に対する警戒感が上値を抑制しそうだ。また、FRBの金融政策を左右する新たな経済指標の結果にも注目だ。最近の経済指標や小売り企業の決算、見通しでは需要鈍化の兆候が目立ち始めた。労働市場は経済データが示す以上に悪化している可能性なども指摘されている。利上げはほぼ終了したとの期待は相場の支援材料となるが、今後は景気悪化への懸念が売り圧力になりそうだ。
8月雇用統計では失業率の上昇や賃金の鈍化が示されたほか、7月JOLTS求人件数は2年ぶりの低水準になるなど、労働市場の逼迫が緩和しつつあり、追加利上げの必要性が低くなってきた。一方、労働市場への懸念が広がると消費が控えられ、景気の減速につながり得る。
7月個人所得は前月比+0.2%と、伸びは予想外に6月(+0.3%)から鈍化し、昨年12月来で最低となった。一方で、同月の個人消費支出(PCE)は前月比+0.8%と、伸びは1月来で最大となった。良好な天候で、旅行やレストランなどでの支出に拍車がかかった。ただ、消費支出を支える実質可処分所得は-0.2%と減速し、貯蓄率は3.5%と昨年11月来で最低だ。貯蓄率は新型コロナパンデミックによる政府支援策や経済封鎖の影響で2020年4月には33%に達したが、その後正常化しつつある。今後は、労働市場の減速、支払い延滞率の上昇、学生ローン支払いの再開で消費者の経済状況が一段と悪化し、支出も鈍化することになりそうだ。
FRBは6日に地区連銀経済報告(ベージュブック)を発表する予定だ。この内容はFRBが9月連邦公開市場委員会(FOMC)で金融政策を決定する上で材料にするため注目だ。市場はFRBが9月会合で利上げを見送ると予想している。労働市場の減速や物価圧力の後退などが指摘されれば、政策金利据え置きの観測が一段と強まり、相場を支えるだろう。
経済指標では、7月耐久財受注(5日)、8月ISM非製造業景況指数、7月貿易収支、8月サービス業PMI確定値(6日)、4-6月期非農業部門労働生産性・単位人件費、新規失業保険申請件数(7日)、7月卸売売上高(8日)、などが予定されている。また、FRBは6日にベージュブックを発表する。なお、4日はレーバーデーの祭日で休場となる。
主要企業決算では小売りで、衣料小売りのアメリカン・イーグル・アウトフィッターズ、レストラン運営会社のデーブ・アンド・バスターズ・エンターテインメント、ゲーム販売のゲームストップ、高級家具販売のRH(6日)、デザイナー・ブランズ(7日)、スーパーマーケットチェーンのクローガー(8日)、そのほか、人口知能(AI)技術開発のC3ai(6日)、電子署名のドキュサイン(7日)、などが予定されている。
再生可能燃料会社のシェブロンの豪州にある液化天然ガス(LNG)施設の労働者が特定業務を停止するなど段階的なストライキを7日から開始すると、オーストラリア労働者組合とオーストラリア海事組合の連合組織「オフショア・アライアンス」が発表している。同社株の売り材料になりそうだ。施設労働者と同社は賃金などを巡る交渉を継続している。
(Horiko Capital Management LLC)
《FA》