馬渕治好氏【日経平均上昇一服、中銀ウィーク後の展望は】 <相場観特集>
―3連休明けは反落で波に乗れず、半導体株に逆風―
3連休明けとなった19日の東京株式市場は、前週後半の先物主導による上昇の反動が出て日経平均株価は下値を模索する展開を強いられた。前日の米国株市場では主要株価指数が小幅プラス圏で引けたものの、前週末に半導体などハイテク株中心に売られてナスダック総合株価指数が1.6%安と大きく下落したことが影響した。今週は日米で中央銀行の金融政策会合が行われることもあり、足もとで積極的な買いが入りにくい面もあるが、果たして来週以降の相場はどういう波動を描くのか。独自の目線で株式市場や経済見通しに定評があるブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏に話を聞いた。
●「目先買われ過ぎで下値リスクを警戒」
馬渕治好氏(ブーケ・ド・フルーレット 代表)
前週後半に日経平均が上昇基調を強め年初来高値更新を視界に入れる場面があったが、需給先行でイレギュラーに買われ過ぎた感は否めない。きょうはその反動が出た形だが、ここからは下値リスクが大きいとみている。全体相場の方向性を支配していた半導体関連株は、ソフトバンクグループ <9984> [東証P]傘下の英アーム<ARM>の米ナスダック市場への新規上場に絡み、やや楽観ムードが漂っていたが、アーム株のセカンダリーの動きが軟調でそれが剥落した。更に前週末に台湾の半導体受託生産最大手TSMC<TSM>が、最先端半導体製造装置の納入を遅らせることを取引メーカーに要請していることが伝わり、一転して同関連株には利食い急ぎの動きが表面化した。
ファンダメンタルズから判断しても、日本経済はそれほど悪くないが米経済は今後減速感が強まる公算が大きい。米国ではクレジットカードの延滞率が上昇していることなどが個人消費に影を落としており、原油市況の高騰もインフレ警戒感を再燃させる背景となっている。差し当たって、今週行われるFOMCでは利上げ見送りが濃厚とみられるが、これについて米株市場は既に織り込み済みである。週後半に行われる日銀金融政策決定会合も現状維持の可能性が高いとみているが、会合後の記者会見も含めて株式市場への影響は限られそうだ。
国内の企業業績は7~9月期決算に対するマーケットの期待が高過ぎるきらいがある。確かに足もと外国為替市場で円安が進んでいることは輸出採算の向上につながるが、それ以上に世界景気減速を背景とした数量ベースでの低迷が失望売りにつながる可能性がある。結論として、日経平均は前週末終値3万3500円どころが年内のボックス圏の上限ラインに近く、今週以降は再び下値を試す地合いとなりそうだ。向こう1ヵ月でみて、日経平均は3万円トビ台(3万1000円を下回る水準)までの深押しがあっても不思議はない。また、もう少し長いタームで見た場合は売り圧力が強まり、3万円大台を下回って推移するような局面に遭遇するケースも十分に考えられる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(まぶち・はるよし)
1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米MIT修士課程修了。米国CFA(証券アナリスト)。マスコミ出演は多数。最新の書籍は「コロナ後を生き抜く 通説に惑わされない投資と思考法」(金融財政事情研究会)。日本経済新聞夕刊のコラム「十字路」の執筆陣のひとり。
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