明日の株式相場に向けて=全般手詰まりも低位の仕手系材料株が繚乱
きょう(26日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比363円安の3万2315円と反落。引け際に下げ足を強め安値引けとなった。前日にも触れたように騰落レシオと日経平均の値動きには大きなカイ離が生じている。今は過熱感無きままに調整圧力が働きやすい時間軸にあるといってよい。総論的には米長期金利が4.5%台に乗せてきたことで、株式から債券へと資金が誘導されやすくなっており、長期投資には慎重さも必要となる。「リスクを取らずに5%近い利回りを確保できるなら、運用者としてはそちらの方がはるかに魅力的」(中堅証券アナリスト)ということになるからだ。米10年債と2年債利回りの逆イールド縮小傾向も鮮明となっているが、これが更に進んで正常化する(10年債利回りが2年債利回りよりも高くなる)段階において、株式市場にクラッシュが起こりやすいというのも過去の事例としてある。
個別株に目を向けると期末特有の動きが随所にみられ、明確な材料無しに正体不明の株高を演じる銘柄も散見される。ネット証券マーケットアナリストによると「3月期末や9月中間期末は外資系証券などからの要請で貸した株式の返却を求める動きが出やすい。そのため銘柄によっては空売りの買い戻しが株価に浮揚効果を与えるケースがあり、それに合わせて買い仕掛けが入ったりすると思わぬ株高につながる場面もある」とする。これは東証信用残(売り残)とは関係なく、また非貸借銘柄であっても買い戻し圧力が働く理屈だ。
一方、3月や9月期末が接近すると、毎度のように高配当利回り銘柄に対する駆け込み権利取り狙いの買いが取り沙汰されるが、権利取り狙いもしくは「配当利回りの高さ」を買い材料としてハヤされ株価水準を切り上げている銘柄は、権利落ち後に配当分を超えた下げに見舞われることも少なくない。配当を確保することが一つの投資テーマとなって、プレミアムが乗った状態で買われ過ぎてしまうため、その反動が出るパターンである。その際には、逆に売り仕掛け(空売り)の対象ともなりやすく、短期トレード主眼なのにインカムゲインも欲しいという中途半端な短期筋の投げを誘発して下げがきつくなる。高配当利回り株は、駆け込みで配当を取りに行くというコンセプト自体あまり有効ではない。長期保有を決め込んでいるのであれば全く問題はないが、“権利取りプレー”というトレードの視点で捉えた場合、配当権利落ち後の下げを仕込みにいくか、権利取り直前に前倒し的な手仕舞い売りで大きく下げている場合に限り買い向かう、という手法の方が賢明といえる。
前述したように今の東京市場は前日時点の日経平均ベースの騰落レシオ(25日移動平均)が155%とかなりの過熱状態にあるが、これは個人投資家の体感温度とは大分開きがあるようだ。そこまで相場がフィーバーしているような印象を持っていないはずである。ただし、騰落レシオは嘘をつかないともいわれる。振り子の原理で行き過ぎても必ず戻ってくるのが相場であり、遅かれ早かれ今度はベクトルの向きが陰の極に向かう順番となる。
東京市場は目先手詰まり感が否めなくなっている。今週は配当権利落ちや機関投資家のリバランスの売り圧力などが想定されるなか、目先的に主力どころの優良株は手掛けにくい。そういう事情もあってか、直近は株価が低位に位置する銘柄群に消去法的に投機マネーが流れ込んでいる。今日の相場で派手な急騰パフォーマンスを演じているのも低位株の一群だ。仕手化本領発揮の日本精蝋<5010>に続き、キッズウェル・バイオ<4584>も人気化し、両銘柄ともストップ高で買い物を残した。
この流れを意識して、今日は値動きがおとなしかった低位株でマークしておきたい銘柄をいくつかピックアップすると、トルク<8077>、TOKYO BASE<3415>、SEホールディングス・アンド・インキュベーションズ<9478>、セキュアヴェイル<3042>、アプリックス<3727>、シダー<2435>などが候補として挙げられる。
明日のスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の議事要旨(7月27~28日開催分)が朝方取引開始前に公表。また、7月の景気動向指数改定値が開示される。IPOが2社予定されており、東証グロース市場にAVILEN<5591>、東証スタンダード市場にオカムラ食品工業<2938>が新規上場する。海外では8月の豪消費者物価指数(CPI)、1~8月の中国工業企業利益、タイ中銀の政策金利発表のほか、8月の米耐久財受注額などにマーケットの関心が高い。また、米国では5年物国債の入札も予定されている。(銀)