【村瀬智一が斬る!深層マーケット】手数料無料化で個人の中小型株物色が活発に
「手数料無料化で個人の中小型株物色が活発に」
●配当志向の物色は一巡も、ハイテク株にシフトしづらい
日経平均株価は、9月15日高値の3万3634円をピークに調整を続け、足もとで節目の3万2000円を下回ってきた。
米国では9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通りに政策金利が据え置かれたが、金融引き締め長期化への警戒感は根強い。米長期金利の高止まりや原油価格の上昇に加えて、全米自動車労組(UAW)のスト長期化が経済に与える影響が懸念される。
一方で、東京市場では日銀金融政策決定会合で緩和政策が据え置かれたことが好感され、いったんは買い戻す動きも見られた。ただし、来年春にも政策変更に踏み切るといった見方も燻り、長期的な緩和政策を背景に積み上げてきたポジションの調整が意識されやすい。
9月下旬は、半期末に伴う配当志向の物色や日経平均株価構成銘柄の定期入れ替えに伴うリバランス、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の株式配分比率の調整など需給要因の影響を受けやすい相場展開だった。そのため、押し目待ち狙いの買い意欲は強まらず、一段と需給の影響を受ける状況となった。配当志向の物色一巡で、本来であればハイテク株などのリバランス買いが想定されるところだが、米中対立など不透明要因が重石となり、明確な資金シフトは期待しづらい面がある。需給イベントを通過することで10月相場は落ち着きを取り戻す可能性はあるものの、外部環境を睨んでの相場展開となろう。
そのなかで、インデックスなどの影響を受けにくい、中小型株に個人主体の資金が向かいやすいと考えられる。SBI証券、楽天証券が日本株の取引手数料を無料化することで、「1カイ2ヤリ」の取引でも収益を上げやすくなり、短期的ながらも活発な取引が期待される。低迷が続いていたマザーズ指数は、9月22日の年初来安値更新で目先底を打った格好であり、売り込まれていた中小型株のリバウンド狙いに向かわせやすいだろう。
●活躍が期待される「注目5銘柄」
◆レーザーテック <6920> [東証P]
EUVマスクブランクス欠陥検査装置が業界標準の検査装置として採用されている。2024年6月期の連結売上高、営業利益はともに連続で過去最高を更新する見通し。半導体デバイスメーカーは設備投資に慎重な姿勢をみせているが、 生成AIの普及を背景にAIサーバー向けの半導体チップが好調で、半導体需要の押し上げが期待される。株価は2万2500円処を中心とするレンジで推移していたが、日経平均株価の構成銘柄に採用されたこともあり、足もとでレンジを上放れつつある。信用倍率は1倍台で、買い残高はピーク時からほぼ半減するなど、需給調整は一巡したと考えられる。
◆カバー <5253> [東証G]
Vチューバーからメタバースまで、バーチャル領域で事業を展開。2023年11月17日よりニューヨークで開催される北米東海岸最大級のアニメコンベンション「Anime NYC」に、同社所属タレントの「星街すいせい」、所属ユニット「ホロライブEnglish -Advent- 」が出演する。日本のマンガ・アニメ・ゲームに関係する企業が多数出展するイベントであり、同社の認知度拡大にもつながろう。株価は6月20日に付けた上場来高値の3170円をピークに調整を続けてきたが、8月17日安値の2028円で底を打ち切り返している。足もとは膠着感を強めているが、25日、75日移動平均線が支持線として意識されており、再動意に期待したい。
◆クラダシ <5884> [東証G]
フードロス削減を目指すショッピングサイト「Kuradashi」を運営。「日本で最もフードロスを削減する会社」をビジョンに掲げ、フードロスの削減に取り組むと同時に、SDGs17の目標を横断して支援する。2024年6月期(非連結)は3期ぶりに最終黒字を計画。株価は6月末の上場時に付けた879円をピークに調整を続け、8月17日には初値から半値近くの413円まで売られた。その後はリバウンドを見せる場面もあり、足もとでは25日移動平均線を上回ってきた。上場後の需給整理は一巡していると考えられ、リバウンドの本格化に期待したい。
◆ヘッドウォータース <4011> [東証G]
対話AIアプリケーション開発やリアルタイム画像解析で使われるエッジAIなど、AIと現場のシステムを結びつけるためのシステムを開発する。9月27日にはマネジメントソリューションズ <7033> [東証P]と協業し、企業への生成AI導入を推進するプロジェクト型伴走支援ソリューション「生成AIプロジェクトラボ」を提供すると発表。 6月末の1対2の株式分割を手掛かりとした買いで7月3日に年初来高値の1万6630円を付けたが、その後は調整を続けている。足もとで200日移動平均線が支持線として機能しており、ボトム形成が意識されやすい。
◆オカムラ食品工業 <2938> [東証S]
9月27日に東証スタンダードに上場。公開価格1680円を53%上回る2564円で初値を付け、その後3065円のストップ高まで買われた。翌日28日は13%の下落となり、資金の逃げ足の速さには注意する必要はある。ただし、世界の水産資源や漁獲高が年々減少傾向にあると言われるなか、水産物の中でも人気が高いサーモンの養殖を中核としたビジネスへの成長期待は大きいだろう。 日本食ブームを背景にシンガポールやマレーシア、台湾などで現地日系スーパーや日本食レストランに日本食材を販売していることも材料視され、押し目狙いのスタンスで注目したい。
(2023年9月29日 記)
株探ニュース