窪田朋一郎氏【3連休明けの日経平均急反騰、上値指向は続くか】(1) <相場観特集>
―3万1000円台後半へ、米CPIや中東リスクこなせるか?―
3連休明けとなった東京株式市場で日経平均株価は大幅反発に転じ、一気に3万1000円台後半に歩を進めた。9月の米雇用統計通過後に米国株市場が反騰局面に入ったことで、投資家のセンチメントが強気に傾き広範囲に買い戻しの動きが広がった。イスラム組織ハマスによるイスラエル攻撃で急浮上した中東の地政学リスクも、米株市場は売り圧力に屈せず上値指向を継続した。東京市場も足もとでこれに追随する動きとなったが、ここから更なる上値が見込めるのかどうかは未知数の部分も多い。第一線で活躍する市場関係者2人に今後の相場展望と物色の方向性を聞いた。
●「3万~3万2500円のボックス圏推移」
窪田朋一郎氏(松井証券 投資メディア部長 シニアマーケットアナリスト)
全体相場は目先空売りの買い戻しが全体指数を押し上げる形となっている。背景にあるのは米長期金利が足もと上昇一服感を強め、米連邦準備制度理事会(FRB)による11月の利上げ懸念が後退したことが挙げられる。
米長期金利が目先4.6%台まで低下しているが、これには主に二つの理由がある。一つは前週末に発表された9月の米雇用統計だ。非農業部門の雇用者数が事前予想を大幅に上回る伸びを示したが、雇用者数の増加はパートが急増したことが大きく影響しており、その関係で平均時給の伸び率がコンセンサスを下回る結果となったことで金利上昇圧力が緩和された。もう一つは、にわかに浮上した中東の地政学リスクが挙げられる。イスラム組織ハマスによるイスラエルの大規模攻撃では、イスラエル側の報復攻撃によって戦火が一段と広がった。このリスクオフの流れが安全資産である米国債を買う動きに反映され、長期金利の低下につながっている。
米長期金利の低下は今の米国の株式市場にとってはポジティブ材料として働きやすい。実際、NYダウなど主要株価指数は揃って続伸基調となったが、3連休明けの東京市場でもこれを引き継いだ。前週末段階で相場の軟化を見込み空売りを入れていた向きが慌てて買い戻したのが、きょうの日経平均の想定以上の戻りに反映された形だ。
今週は12日に米消費者物価指数(CPI)の発表を控える。コア指数は伸び率鈍化が予想され、想定通りなら11月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げ見送りとなり、結果的に9月時点で最終金利到達ということになる。ただしこれは、これまでの為替の円安トレンドを反転させる材料となることで注意も必要だ。また、中東情勢もイランを巻き込んで長期化した場合は原油高騰を誘発し、株式市場にとっても撹乱要因となる。
向こう1ヵ月の日経平均レンジとしては、上値が75日移動平均線近辺の3万2500円どころ、下値は200日移動平均線の位置する3万円大台ラインを想定。物色対象としては、短期的にはバリュー株優位が続き海運や鉄鋼株に着目。しかし、中期的にはグロース株の逆張りも考えたいところで、半導体関連などは押し目買い対象として有力となる。
(聞き手・中村潤一)
<プロフィール>(くぼた・ともいちろう)
松井証券に入社後、WEBサイトの構築や自己売買担当、顧客対応マーケティング業務などを経て現職。ネット証券草創期から株式を中心に相場をウォッチし続け、個人投資家の売買動向にも詳しい。日々のマーケットの解説に加えて、「マザーズ信用評価損益率」や「デイトレ適性ランキング」「アクティビスト追跡ツール」など、これまでにない独自の投資指標を開発。
株探ニュース