プラチナはもみ合い、リスク回避と米利上げ観測後退で <コモディティ特集>

特集
2023年10月25日 13時30分

プラチナ(白金)の現物相場は10月、米国債の利回り上昇や金急落を受けて約1年ぶりの安値851ドル台をつけた。その後は中東情勢の緊迫化をきっかけに金が急騰したことが下支えになったが、地政学的リスク回避の動きが出て908ドル台で上値を抑えられた。ただ、パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言を受けて利上げ観測が後退したことで押し目を買われ、850~910ドルのレンジを形成した。当面は中東情勢の行方が焦点である。

イスラム組織ハマスがイスラエルを奇襲攻撃し、中東情勢の先行き懸念が高まった。イスラエルはガザ侵攻を準備し、避難のため約70万人が北部から移動した。イスラエルがガザを空爆するなか、米国、ドイツ、英国、フランス、オランダの首脳が同国を訪問し、人道支援などを協議した。しかしガザの病院が爆破され、数百人が死亡したと報道されると、米大統領とアラブの指導者らとの会談がキャンセルされるなど地政学的リスクが更に高まった。

欧米が人質解放を優先するため、イスラエルにガザ侵攻を遅らせるよう圧力をかけるなか、イランを後ろ盾とする組織が中東の米軍基地を攻撃しており、紛争が拡大する懸念も残っている。イスラエル軍とレバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラとの戦闘が激化していることも懸念要因である。イスラエルがガザ侵攻を開始し、リスク回避の動きが強まるようならプラチナの圧迫要因になるとみられる。

米FRBが高金利を長期間維持するとの見方を受けて米国債の利回りが上昇し、米10年債利回りは一時、2007年以来の高水準となる5%台をつけた。ただ、米国債の利回り上昇が景気を抑制するとの見方が出ると、利上げ停止観測が強まった。また、パウエル米FRB議長はニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演で、政策決定は「慎重に進める」と述べたことも利上げ停止観測につながった。CMEのフェドウォッチでは、10月31日~11月1日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で金利据え置きの確率が98.0%(前月72.5%)となっており、これを受けてドル安に振れればプラチナの下支えになる。

●中国の景気回復期待も下支え要因

第3四半期の中国の国内総生産(GDP)は前年比4.9%増加した。第2四半期の6.3%から伸びが鈍化したが、事前予想の4.4%を上回った。9月の鉱工業生産や小売売上高も予想以上となり、景気刺激策の効果がようやく出始めたとの見方が出た。上海プラチナの出来高が安値で増加しており、中国勢の安値拾いの買い意欲が強いこともプラチナの下支え要因である。

ただ、不動産開発大手に対する懸念が残っている。経営再建中の恒大集団の株式の取引が香港取引所で再開されたが、許家印会長が資産を国外に移転した疑いで警察の監視下に置かれた。また、碧桂園(カントリー・ガーデン)はオフショア債の利払いを履行できず、債務不履行(デフォルト)懸念が高まった。不動産危機の行方も当面の焦点である。

●NY市場で大口投機家が一時売り越しに転じる

プラチナETF(上場投信)残高は10月24日の米国で30.21トン(9月末30.65トン)、23日の英国で13.05トン(同13.16トン)、23日の南アフリカで11.87トン(同11.99トン)となった。各国中銀の高金利長期化の見方などを受けて投資資金が流出した。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、10月10日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の取組が36枚売り越しとなった。8月29日の1万5038枚買い越しをピークとして売り圧力が強まり、売り方に転じた。10月17日は349枚買い越し。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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