S&P500 月例レポート ― 9月下落で市場は悪材料を織り込む? (4) ―

市況
2023年10月26日 11時41分

●雇用関係

○8月の月次雇用統計によると、非農業部門雇用者数は前月から18万7000人増となりました。市場予想は17万人増でした。7月分は当初発表の18万7000人から15万7000人に下方修正されました。

⇒失業率は3.5%で横ばいと予想されていましたが、3.8%に上昇しました(2023年6月3.6%、5月3.7%、4月3.4%、3月3.5%、2月3.6%、1月3.4%、2022年12月3.5%、8月~11月3.7%、6月~7月3.5%、3月~5月3.6%、2月3.8%、2020年の5月は13.3%、2月は3.5%)。

⇒労働参加率は7月の62.6%から62.8%に上昇しました。

⇒週平均労働時間は横ばいの34.3時間と予想されていましたが、34.4時間に増加しました。

⇒平均時給は7月の33.74ドルから8月は33.82ドルとなり、前月比0.2%増となりました。7月の0.4%増の後、8月の市場予想は0.3%増でした(6月0.4%増、5月0.3%増、4月0.5%増、3月0.3%増、2月0.2%増、1月0.3%増、2022年12月0.4%増、11月0.4%増、10月0.5%増、9月0.3%増、8月0.3%増、7月0.5%増)。前年同月比では7月の4.4%増から8月は4.3%増に低下しました(6月4.4%増、5月4.3%増、4月4.4%増、3月4.3%増、2月4.6%増、1月4.4%増、2022年12月4.9%増、11月4.8%増、10月4.9%増、9月5.0%増、8月5.1%増)。

○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は前月の170万2000件から165万8000件に減少しました。

⇒2023年9月7日発表の週間新規失業保険申請件数:21万6000件(当初の発表通り)

⇒2023年9月14日発表の週間新規失業保険申請件数:22万件

⇒2023年9月21日発表の週間新規失業保険申請件数:20万1000件

⇒2023年9月28日発表の週間新規失業保険申請件数:20万4000件

●レイオフ(および関連事項):

○全米自動車労働組合(UAW)は、米国の大手自動車メーカー3社(フォード<F>、ゼネラル・モーターズ<GM>、ステランティス<STLA>)に対して選択的ストライキを開始し、工場の閉鎖や短時間勤務を行いました。さらに、一部の工場は部品不足による稼働停止に陥っています。9月末時点では、労使双方が公然と相手を非難する中、選択的ストライキに入る工場が拡大されることになりました。

●M&A

○米連邦取引委員会(FTC)は、ヘルスケア大手のアムジェン<AMGN>によるアイルランドのバイオ医薬品持株会社ホライゾン・セラピューティクス<HZNP>の買収(280億ドル)の差し止めを求めて提訴していましたが、係争を終了し買収を容認すると発表しました。

○スナックやゼリーを製造している大手食品メーカーJMスマッカー<SJM>は、米国の名物菓子トゥインキーズの製造元であるスナックメーカーのホステス・ブランズ<TWNK>を46億ドルで買収する計画を明らかにしました。

○コミュニケーション・サービス企業のシスコ・システムズ<CSCO>は、サイバーセキュリティ企業のスプランク<SPLK>を現金280億ドルで買収すると発表しました。

●IPO、分配金、「空箱」SPAC

○ソフトバンクグループ <9984> [東証P]子会社の英半導体メーカー、アーム <ARM>(2016年にソフトバンクが320億ドルで買収)は、米国で今年最大規模となる新規株式公開(IPO)を行いました。公開価格は51ドル(想定仮条件1株当たり47~51ドルのレンジの上限)で、評価額は540億ドルでした。初値は56ドルで、一時69ドルを付けた後、53.52ドルで月末を迎え、時価総額は550億ドルとなりました。なお、エヌビディア<NVDA>が2020年にソフトバンクからアームを400億ドルで買収しようとしましたが、規制当局に阻止されました。

○サンフランシスコを拠点とする食料品配達会社メイプルベア<CART>は公開価格30ドル(想定仮条件28~30ドルのレンジの上限)で上場し、評価額は100億ドルとなりました(2021年の査定では評価額が390億ドル、最近の資金調達額は180億ドル)。初値は42ドルで、株価は一時43ドルに達した後、29.69ドルで月を終え、時価総額は80億ドルとなりました。

○マーケティング・オートメーション・プラットフォームを提供するクラビヨ<KVYO>は公開価格30ドル(想定仮条件は27~29ドル)で新規株式公開を行い、37ドルの初値を付け、39ドルまで上昇した後、34.50ドルで月末を迎え、時価総額は90億ドルとなりました。

○ベトナムの電気自動車会社ビンファスト・オート<VFS>は9月15日に公開価格15ドル(想定仮条件レンジ12~93ドル)で新規上場を果たしました。株価は12.50ドルで月末を迎え、時価総額は290億ドルとなりました。

○報道によると、マイクロソフト<MSFT>が49%を所有する非上場企業のOpenAI(ChatGPTの所有者)は、従業員が社内持株会で保有する持株の売却を許可する方向で交渉しており、その評価額は800億~900億ドル(年初の評価額は290億ドル)になる見込みです。

●企業業績

○1週間以内にすべての銘柄が2023年第2四半期決算の発表を終える予定です(2023年9月29日終了時点)。499銘柄(完全なデータ付き)が2023年第2四半期決算の発表を終え、そのうち380銘柄(76.2%)で営業利益が予想を上回り、496銘柄中315銘柄(63.5%)で売上高が予想を上回り、四半期売上高は過去最高を更新しました。

⇒2023年第2四半期のEPSは前期比4.4%増、前年同期比17.0%増でした。売上高は前期比2.4%増、前年同期比7.1%増となり、(過去最高を記録した2022年第4四半期を僅かに上回る)3.96兆ドルに達し、過去最高を更新しました。

⇒2023年第2四半期の営業利益率は、第1四半期の11.64%から上昇して11.87%となりました(1993年以降の平均は8.34%、過去最高は2021年第2四半期の13.54%)。

⇒2023年第2四半期中に株式数の減少によってEPSが大きく押し上げられた発表済みの銘柄の割合は16.3%となっています。この割合は、2023年第1四半期は18.6%、2022年第2四半期は19.8%でした。

○2023年第3四半期の利益は前期比0.8%増、第4四半期は前期比3.8%増が見込まれており、過去最高となる見通しです(現時点での過去最高は2021年第4四半期)。

○2023年通年の利益は前年比11.7%増となる見通しで、この予想に基づく2023年の予想株価収益率(PER)は19.5倍となっています。

○2024年の利益は同11.7%増(2023年と同じ)が見込まれており、2024年予想PERは17.4倍となっています。

●個別銘柄

○中国は政府職員がアップル<AAPL>のiPhoneを使用や保有を禁止しました。

⇒アップルはiPhoneの新型モデル「iPhone15」を発表しましたが、新モデルの投入は毎年恒例であるため、投資家の反応は限定的でした。

○米司法省がGoogle(親会社ルファベット<GOOG>)を独占禁止法違反で訴えた裁判の公判が9月12日に始まりました。裁判は裁判官のみ(陪審員なし)で審理され、約10週間かかる見通しです。

○米連邦取引委員会(および17の州)は、eコマース小売業者のアマゾン・ドット・コム<AMZN>が独占的な立場を利用して自社製品を優遇し、競争を阻害しているとして提訴しました。

○S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスは、資産運用会社のブラックストーン<BX>と民泊仲介サイト運営企業エアビーアンドビー<ABNB>をS&P500指数に採用し、保険会社のリンカーン・ナショナル<LNC>と家庭用品メーカーのニューウェル・ブランズ<NWL>を除外しました。

●注目点

○新型コロナウイルスの感染拡大期に実施された米国連邦政府による学生ローンの返済猶予措置(1兆6000億ドル)が8月に打ち切られました。影響を受けた消費者が出費を減らすことで、小売売上高が減少すると予想する向きもあります。

○FRBの報告によると、7月の消費者信用(季節調整済み)は104億ドル増加して、前年同月比4.0%増で過去最高の4兆9860億ドルとなりました。

○米国の短期国債の金利コストが長期国債の金利コストを上回る見通しですが、このような事態はこの23年間で初めてのことです。

⇒米国10年国債の利回りは、2007年以来の高水準となる4.68%を記録しました。

○オンライン小売りのアマゾンは、来たるホリデーシーズンに向けてパートタイム職員を25万人増員(昨年の増員は15万人)し、時給を引き上げる計画を発表しました。百貨店のターゲット<TGT>は昨年と同様10万人増員、メーシーズ<M>は3万8000人増員(昨年の4万1000人からは減少)することを明らかにしました。

⇒9月末、ターゲットは犯罪、盗難、治安の悪化を理由に、約2000店舗のうち9店舗を閉店すると発表しました。

※「9月下落で市場は悪材料を織り込む? (5)」へ続く

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