最高値更新続く国内金、イスラエルのガザ侵攻や円安が支援 <コモディティ特集>

特集
2023年11月8日 13時30分

国内金は、イスラエルのガザ侵攻で中東情勢の先行き懸念が高まったことや、日銀の金融緩和継続による円安を受けて一段高となり、先物(JPX金先限)が9743円、現物(店頭小売価格、税込)が1万0651円と最高値を更新した。ただ、中東の紛争拡大が抑制されたことから金は2000ドル台で利食い売りが出て上げ一服となった。

米国はイスラエルを全面的に支持しているが、水面下ではガザへの攻撃を抑制する方向に動いており、一定の成果が出ているとしている。しかし、イスラエルのネタニヤフ首相はイスラム組織ハマスが人質を解放するまで一時停戦には応じないと述べており、今後の行方を確認したい。

日銀は10月31日の金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の柔軟化を決定したが、金融緩和を継続したことから円相場は昨年10月以来となる1ドル=151円台後半まで円安に振れた。植田日銀総裁は長期金利が継続的に1%を大きく超えることはないとの見通しを示し、大規模緩和の修正時期については来年の春闘がポイントになるとした。

一方、米連邦公開市場委員会(FOMC)は2会合連続の金利据え置きを決定した。パウエル米連邦準備理事会(FRB)議長は追加利上げの可能性を示したが、市場では利上げのハードルは高くなっているとみられており、12月も利上げ見送りとの見方が強い。ドルの手じまい売りが続くと、円安が止まる可能性が出てくる。

●米政府機関の閉鎖を回避できるかどうかも焦点

第3四半期の米国内総生産(GDP)速報値は前期比4.9%増と約2年ぶりの高い伸びとなった。底堅い労働市場による堅調な個人消費が背景にある。ただ、コア個人消費支出(PCE)指数が2.4%上昇と前四半期の3.7%から伸びが鈍化した。一方、10月の米雇用統計で非農業部門雇用者数は前月比15万人増加と事前予想の18万人増加を下回った。失業率は3.9%と前月の3.8%から小幅上昇した。労働市場の減速が示され、12月の米FOMCの金利据え置きの確率が上昇した。ただ、インフレ率を2%まで戻すには長期間、高金利を維持する必要があるとみられており、CMEのフェドウォッチでは利下げは来年6月を織り込んでいる。

米下院は10月25日、共和党の保守派ジョンソン議員を次期下院議長に選出した。マッカーシー前議長は債務上限問題を超党派でまとめたが、共和党内の強硬派によって解任された。3週間の混乱はひとまず終息したが、11月17日に債務上限問題の期限を控えており、新議長がこれをまとめられるかどうかも当面の焦点である。

●金ETFから投資資金流出も利上げ停止見通しで押し目買い

世界最大の金ETF(上場投信)であるSPDRゴールドの現物保有高は、11月6日に867.57トン(9月末873.64トン)となった。米国債の利回り上昇を受けて2019年8月以来の低水準となる859.49トンまで減少したが、米FRBの利上げ停止見通しを受けて押し目買いが入った。

一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、ニューヨーク金先物市場でファンド筋の買い越しは10月31日に16万3425枚(前週14万9385枚)に拡大し、8月1日以来の高水準となった。10月10日に7万1433枚まで縮小したが、ハマスのイスラエル奇襲をきっかけに新規買い、買い戻しが入った。

(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)

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