OPECプラスは無風通過か?イスラム諸国はイスラエル制裁を見送り <コモディティ特集>

特集
2023年11月15日 13時30分

●急遽開催された合同会議で明るみに出た温度差

先週末に開催されたイスラム協力機構(OIC)とアラブ連盟の合同首脳会議で、ガザ地区などにおけるパレスチナ人に対する攻撃についてイスラエルを非難する声明が採択されたが、具体的な措置でイスラム諸国がまとまることはなかった。中東各国は声高に非難しているものの、イスラエルへの態度には明らかな温度差がある。

急遽合同で開催されたOICとアラブ連盟の首脳会合では、イスラエルやその同盟国への石油輸出の見送り、イスラエルへの兵器供給にアラブ諸国内の米軍基地の利用を禁止すること、イスラエルとの外交凍結などが提案されたようだ。アルアラビー・アルジャディード紙やAFP通信などが伝えた。シリアのアサド大統領は「もし我々が圧力となる真の手段を持たなければ、どのような一歩を踏み出そうとも、どのような演説を行おうとも、何の意味もなさないだろう」と述べたが、一連の提案は否決された。アラブ各国は国連が発するような空虚な非難を真似ただけだった。

イスラエルとその同盟国に対する強力な制裁案に反対した国は明らかとなっていないものの、「影響力のある4ヵ国」、あるいは「アラブ首長国連邦(UAE)とバーレーンを含む少なくとも3ヵ国など」と伝わっている。サウジアラビア、ヨルダン、エジプトも反対が疑われている。イランが声高に対イスラエル制裁を主張しているなかサウジアラビアは口をつぐみがちであり、中東の盟主であるサウジアラビアが制裁に反対したと疑われる余地があると思われる。サウジに米軍基地がある一方、イランにはなく、対立の拡大を警戒するならばむやみに対イスラエル制裁を口にできない。また、中東にはすでに米国の原子力潜水艦が配備されており、核ミサイルの射程圏内にある。イスラエル閣僚の発言からすると、イスラエルも核保有国であることが明らかで、核の脅威の前では対等に振る舞えるはずがない。イランは相応の反撃能力をおそらく有しているのではないか。

●西側との対立を避けOPECプラスは無風通過か

イスラエルとその同盟国に対する 石油の禁輸が現実となっていたなら、影響力は絶大だっただろうが、欧州や米国など親イスラエルの西側各国を敵に回すことになりかねない。ガザ地区の死者数が1万人を超えても、西側が完全な敵となることはイスラム国家にとって避けなければならない事態である。BRICSの台頭が示すように非西側の勢力が拡大し、経済的に米国や欧州から距離を置く動きが加速しているとはいえ、中東の舵取り役にとって西側との軍事的な対立は非現実的だ。イスラエルのネタニヤフ首相はアラブ各国に「自分たちの権益を守るのであれば、すべきことは一つで、沈黙を守れ」と述べたが、一部のイスラム国家はパレスチナ人が蹂躙されることに目をつむる価値があると判断したのだろう。

今月26日には石油輸出国機構(OPEC)プラスの閣僚会合が予定されている。パレスチナ自治区の惨状を認識しつつも、主要産油国が石油を武器として利用しないのであれば、ほぼ無風で通過することになりそうだ。

(minkabu PRESS CXアナリスト 谷口 英司)

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