S&P500 月例レポート ― 土壇場で調整局面入りの10%下落を回避 (4) ―
●注目点
○食品・飲料メーカー大手ペプシコ<PEP>は、値上げ後も需要が維持されていることから、7四半期連続で小売り価格を引き上げました(同社の発表によると、第3四半期利益は14%増)。
○大手小売チェーンウォルマート<WMT>の最高経営責任者(CEO)は、減量薬の使用(製薬会社ノボ・ノルディスク<NVO>の糖尿病薬オゼンピック)により、買い物客は食品の購入とカロリーの摂取量を減らしているようだと述べました。ケラノバ<K>(旧ケロッグ)もシリアル売上高の変化を指摘しています。
○米10年物国債利回りは16年ぶりに5%を超える水準で推移し、一時5.02%に達した後、4.92%に低下して月末を迎えました。2022年末は3.88%、2021年末は1.51%、2020年末は0.92%、2019年末(新型コロナウイルス感染拡大前)は1.92%でした。
○サイバー通貨ビットコインは2022年5月以降で初めて3万5150ドルに達し(2021年11月には6万8790ドルに達しています。2019年末時点は7194ドル)、3万4500ドルで月を終えました。上昇の背景には、投資家がビットコインの現物ETFの承認を見込んでいたことが挙げられます。
○報道によると、かつて高水準の企業価値(470億ドル)を誇った新興企業で、シェアオフィス事業を展開するウィワークは、近いうちに破産申請を行うとのことです。
●配当金
○現金配当は2023年9月に前年同月比で12.49%減少(配当額の変化よりもカレンダー上の要因が大きい)した後、2023年10月は前年同月比9.30%増となりました。年初来では5.15%の増加となりました。
⇒10月の配当支払い額は1株当たり4.16ドルで、2022年10月の3.81ドルから増加、支払総額は348億7000万ドルで、2022年10月の320億1000万ドルから増加しました。
⇒2023年10月までの12ヵ月間の配当支払額は1株当たり69.69ドルで、2022年10月までの12ヵ月間の65.30ドルから増加し、2023年10月までの12ヵ月間の支払総額は5830億7000万ドルで、2022年10月までの12ヵ月間の5519億8000万ドルから増加しました。
○2023年10月は、増配が28件、配当開始が0件、減配が3件、配当停止が0件であったのに対して、2022年10月は、増配が26件、配当開始が0件、減配が0件、配当停止が0件でした。
⇒年初来では、増配が284件、配当開始が8件、減配が23件、配当停止が4件であったのに対して、2022年の10月末までの10ヵ月間では、増配が307件、配当開始が6件、減配が5件で、配当停止はありませんでした。
○増配率の中央値は引き続き低下しており、10月は5.66%と、9月の6.06%を下回りました(8月は7.19%、7月は8.00%)。10月の平均増配率は7.49%と、9月の8.00%(同7.79%、同8.24%)から低下ました(いずれも2倍以上となった銘柄を除外しています)。年初来では、増配率の中央値は6.99%(9月末時点は7.27%、8月末時点は7.41%)、平均値は8.74%となっています(同8.87%、同8.93%)。
○注目すべき点として、今年は減配と配当停止が27件あり(昨年は5件)、これにより年間配当額は159億ドル分減少しています(対して、増配は292件で390億ドル分増加)。配当の減少は銘柄固有の要因によるものですが、エネルギー銘柄がこれら27件のうち10件、また減少額の41%(65億ドル)を占めています。一部の企業は配当方針を四半期の定額配当から変動配当に変更しています(その結果、過去の実績に基づく配当予想を提示)。
○2023年の予想配当支払額の前年比での水準は、3月に5%増に下方修正されました。これは、融資の伸び率低下に加えて、企業の需要減少と銀行の資本要件の引き上げの見通しに基づくもので、従来、シリコンバレー銀行(SVB)による銀行問題の発生以前は、6~7.5%増のレンジ(当時の予想は7%弱増)と推定されていました。現在は4%増が予想されており、この予想には最近の減配は状況に応じたもので広がらないこと、景気の力強さが持続し、消費者、企業、政府の支出(及びインセンティブ)が維持され、企業利益は横ばいないし微増となることが織り込まれています。
⇒2023年の予測では、銀行の更なる破綻はなく、FRBによる利上げも終了し、個人消費は安定的に推移することが想定されており、その結果、2023年の現金支払額は前年比4.0%増(2桁増の当初予想からは低下)が見込まれています。
○2024年の配当に関して、当初予想は景気と配当のパターンの変化が背景となり、僅かながらもポジティブとなっています。筆者は、FRBによる2024年第3四半期の利下げ開始に加えて、景気の大幅な減速は回避され、政府の財政政策の大きな調整はない(政策とインセンティブの継続を予想)との見通しを織り込んでおり、2024年の実際の現金支払額は、現在の筆者の2023年の予想値から4~5%程度増加して、6130億ドルになると予想しています。これにより2024年の現金支払額は、15年連続の増加と13年連続の過去最高の更新が見込まれます。
●インデックス・レビュー
◇S&P 500指数
S&P500指数 は10月に2.20%下落して4193.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはマイナス2.10%)。9月は4288.05で終え、4.87%の下落(同マイナス4.77%)でした。過去3ヵ月では8.61%の下落(同マイナス8.25%)、年初来では9.23%の上昇(同プラス10.69%)、過去1年では8.31%の上昇(同プラス10.14%)でした。2022年は19.44%の下落(同マイナス18.11%)、2021年は26.89%の上昇(同プラス28.71%)でした。2022年1月3日の高値からは12.57%の下落(同マイナス9.93%)、コロナ危機前の2020年2月19日の高値からは23.85%の上昇(同プラス31.45%)でした。
9月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は9月の0.88%から1.28%に上昇し、年初来では1.09%となりました(2022年は1.83%)。10月の出来高は、9月の3%減少の後に、2%減少し(営業日数調整後)、前年同月比では20%の減少でした。2023年10月までの過去1年では前年比10%増加しました。
10月は、9月と同様に11セクター中10セクターが下落しました。10月のパフォーマンスが最も良かったのは、1.23%上昇して唯一プラスのセクターとなった公益事業です(ただし、年初来では15.51%の下落で、指数内で最低、2021年末比では16.73%下落)。騰落率最下位となったのはエネルギーで、10月は6.08%下落しました(年初来では3.02%下落、2021年末比では54.24%上昇で、指数内で最高)。
10月は1%以上変動した日数は、22営業日中8日(上昇が3日、下落が5日)でした。9月は1%以上変動した日数は、20営業日中3日(3日とも下落)。年初来では、1%以上変動した日数は209営業日中56日(上昇が29日、下落が27日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。2022年は1%以上変動した日数は122日(上昇が59日、下落が63日)、2%以上変動した日数は46日(上昇が23日、下落が23日)でした。10月は22営業日中16日で日中の変動率が1%以上となり、2%以上の変動は1日で、3%以上の変動はありませんでした。年初来では、1%以上の変動が104日、2%以上の変動が13日で、3%以上の変動はありませんでした(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。2022年は1%以上の変動が218日、2%以上の変動が89日、3%以上の変動が20日、4%以上の変動が4日ありました。
10月は値下がり銘柄数と値上がり銘柄数の差が縮小しました。10月の値上がり銘柄数は148銘柄(平均上昇率は3.66%)で、9月の74銘柄(同2.89%)から増加しました。10%以上上昇した銘柄数は7銘柄(同12.60%)で、9月の2銘柄(同11.49%)から増加し、25%以上上昇した銘柄は9月と同様にゼロでした。一方、10月の値下がり銘柄数は355銘柄(平均下落率は7.50%)と、9月の429銘柄(同6.62%)から減少しました。10月は10%以上下落した銘柄数は93%銘柄(同15.67%)で、9月の75銘柄(同13.56%)から増加し、25%以上下落した銘柄数は9月と同様にゼロでした。
年初来では、値上がり銘柄数は211銘柄(9月末時点の年初来は250銘柄)で、値下がり銘柄数は290銘柄(同252銘柄)でした。10%以上上昇した銘柄数は137銘柄(同164銘柄)、10%以上下落した銘柄数は189銘柄(同159銘柄)でした。58銘柄(同67銘柄)が25%以上上昇し、72銘柄(同39銘柄)が25%以上下落しました。
[執筆者]
ハワード・シルバーブラット
S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス
シニア・インデックス・アナリスト
※このレポートは、英文原本から参照用の目的でS&Pダウ・ジョーンズ・インデックス(SPDJI)が作成したものです。SPDJIは、翻訳が正確かつ完全であるよう努めましたが、その正確性ないし完全性につきこれを保証し表明するものではありません。英文原本についてはサイトをご参照ください。
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