為替週間見通し:ドルは上げ渋りか、米インフレ緩和傾向強まる
【今週の概況】
■米追加利上げ期待低下でドルは伸び悩む
今週のドル・円は伸び悩み。米連邦準備制度理事会(FRB)が11月21日に公表した連邦公開市場委員会(FOMC)会合の議事要旨(10月31-11月1日開催分)によると、「インフレ低下の進展が不十分であることを示す情報が入ってきた場合にのみ、金利を引き上げる必要がある」との見解で一致していたことが判明し、追加利上げの可能性は高まっていないとの見方が浮上したことから、リスク選好的なドル買い・円売りは後退した。週初に149円99銭まで買われたが、21日に一時147円15銭まで反落した。22日発表の今週分新規失業保険申請件数は予想以上に減少し、11月ミシガン大学消費者信頼感指数の期待インフレ率確報値は市場予想を上回ったことから、ドルを買い戻す動きがみられたが、利上げ終了観測は後退せず、ドルは149円台後半で上げ渋った。
24日のニューヨーク外為市場でドル・円は一時149円67銭まで買われた。この日発表された11月S&Pグローバル製造業PMI速報値は市場予想を下回ったが、同サービス業PMI速報値は前回実績を上回っており、リスク選好的なドル買いが優勢となった。イスラム組織ハマスとイスラエルは戦闘休止で合意し、この動きを好感した円売りも観測された。ドル・円は149円47銭でこの週の取引を終えた。ドル・円の取引レンジ:147円15銭-149円99銭。
【来週の見通し】
■ドルは上げ渋りか、米インフレ緩和傾向強まる」
来週のドル・円は上げ渋りか。米インフレ率が低下すれば連邦準備制度理事会(FRB)による追加利上げ期待は後退し、ドルは失速するとの見方が多い。直近の連邦公開市場委員会(FOMC)ではインフレ抑制に前向きなスタンスを堅持しながらも、一段の利上げには慎重だったことが議事要旨で明らかになった。直近の米消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)は低下し、インフレ緩和傾向が鮮明。FRBは今後の政策決定についてデータ次第とするものの、市場は金融緩和へのシフトを織り込みつつある。11月30日発表予定の10月コアPCE価格指数は前回実績の前年比+3.7%から一段の低下が予想される。想定に沿った内容なら次回12月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)の会合で政策金利の据え置きは確実視され、ドル売り材料となりそうだ。
ただ、日本銀行による金融緩和策の継続によって日米金利差は維持されることから、リスク回避的なドル売り・円買いが一段と拡大する可能性は低いとみられる。また、中東情勢が大幅に改善した場合、ユーロ、英ポンド、豪ドルなどに対する円売りが強まり、この影響でドル・円の取引でもドル買い・円売りが優勢となる可能性は残されている。
【米・10月PCEコア価格指数】(11月30日発表予定)
11月30日発表の米10月PCEコア価格指数は前年比+3.5%と、9月の+3.7%から低下する見通し。市場予想と一致した場合、追加利上げ観測は一段と後退し、ドル売り要因となる。
【米・11月ISM製造業景況指数】(12月1日発表予定)
12月1日発表の11月ISM製造業景況指数は47.7と、前月から46.7から改善の見通し。ただ、節目の50を下回るため、追加利上げを後押しする要因にはなりにくい。
予想レンジ:147円50銭-151円50銭
《FA》