国内株式市場見通し:日経平均33500円が基調の分岐点の判断材料に
■6月のバブル後高値を更新
今週の日経平均は週間で40.33円高(+0.1%)の33625.53円と小幅ながら4週連続で上昇した。週明け20日の東京市場は朝方にバブル崩壊後の戻り高値33772.89円(2023/6/19)を更新した。ただ、その後は短期的な目標達成感と1ドル=147円台半ばと円安進行が一服したドル・円の動きが逆風となったほか、21日に控える米半導体大手エヌビディアの決算や前回開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨の公表を控えて膠着感が強まった。
注目された21日発表の米エヌビディア決算は、市場予想を上回る結果だったものの事前期待が大き過ぎたためか、決算発表後に時間外取引で同社株が下落。やや肩透かしを食らい売り先行で始まった22日の東京市場だが、中東情勢の地政学リスクが緩和されるなどの支援材料もあり底堅さをみせ、日経平均は3日ぶりに反発した。ただ、祝日を控えて後場は様子見ムードが強かった。祝日明けの24日の日経平均は22日の米国株高と為替が再び円安方向へシフトしたことを好感し、一時20日高値に迫る場面もあった。ただ週末事情などから後場は上げ幅を縮小した。
■配当再投資が需給を下支え
来週の日経平均は日米で市場に影響が大きい、経済・労働統計の発表スケジュールもなく、手掛かり材料難のなか、NY市場をにらんだ、もみあいの展開が予想される。
祝日明け短縮取引となった24日のNYダウは続伸、ナスダック総合指数は反落とマチマチの展開だった。
注目された21日発表の米半導体大手エヌビディアの8-10月期決算は、生成AI(人工知能)向け半導体需要が拡大し前年同月比で売上高が約3倍、純利益が約14倍という特大の変化率だったにも関わらず、市場における事前の期待が大きかったためか、サプライズとはならずに、発表後の時間外取引で株価は下落し、22日も軟調な展開となった。やや肩透かしとなった22日の東京市場だが、それでも日経平均は小幅ながらも反発に転じた。その背景材料となっているのが、3月期決算企業の中間配当金の支払いが始まったことによる配当再投資への期待だ。その配当金総額は昨年の6.5兆円規模から今年は7.7兆円規模に膨らんでいるとの観測があり、配当再投資による需給改善期待が相場を下支えている。日経平均やTOPIXが3日ぶりの反発となった22日の東京市場の主要株価指標で、無配株が多い東証グロース250指数がマイナスだったことも興味深い。
ただし、勤労感謝の日の休場を挟んだ週の翌週は昨年まで2年連続で日経平均がマイナスパフォーマンスとなっていることは気掛かりだ。この配当再投資の動きと並行して、年末とクリスマス休暇を控えた機関投資家のポジション整理の売りが一時的に高まる傾向がある。11月30日はMSCI日本株指数に絡む機関投資家の銘柄入れ換えの売買による一時的な波乱が生じる可能性もあることには留意が必要だ。
一方、22日発表の米新規失業保険申請件数が労働市場の底堅さを示したことや、ミシガン大消費者信頼感指数の確報値が上方修正されたことをきっかけにドルの買い戻しが強まっている。一時、1ドル147円台中盤まで進行した為替が円安傾向に転じることで、下値抵抗感も増してくることが想定される。
翌週8日のメジャーSQと11月雇用統計発表を控えて、週後半にかけては神経質な展開となり、引き続き日経平均は、33500円を基調の分岐点として、下で推移するか、上で推移するかが騰勢判断のポイントとなってこよう。
■半導体関連株に循環物色の期待
日米金利の低下を受けた金融株一服、およびバルチック海運指数の上げ一服から大手海運株調整、自動車中心の輸出関連は為替動向次第とバリュー株物色の方向性は定まりにくくなっている。ただ、年初から好パフォーマンスとなっている日本株に海外投資家を含めた注目が集まる可能性は十分にあり、先高期待は依然根強い。
手掛かり難の中、引き続き半導体関連株が物色人気の中心となりそうだ。「半導体受託生産最大手の台湾TSMCが第3半導体工場の建設を検討」、「SBIホールディングス<8473>が台湾のPSMCと共同、宮城県に半導体工場を新設」、「クラボウ<3106>は熊本に半導体製造装置向け高機能樹脂の新工場を建設」と、国内での半導体投資に関連するニュースが今月に入り、再び増えてきている。製造装置や設備投資関連、技術者派遣といった半導体周辺株に循環物色の輪が広がりそうだ。また、この循環物色の輪にはエヌビディアの決算を受けて東証グロースにも関連株が多い「生成AI」関連も加わることになりそうで、中小型株物色も高まる期待が膨らむ。
このほか、季節的にクリスマス、年末商戦に向けたニュースフローが出やすい時期でもあり、小売り・百貨店、外食、ホテル、レジャー関連も物色されやすいだろう。
■10月鉱工業生産速報、米10月個人消費支出、など
来週は国内では28日が11月末権利付き最終日、30日に10月鉱工業生産、12月1日に失業率・有効求人倍率(10月)の発表が予定されている。海外では、29日に米・地区連銀経済報告(ベージュブック)、米・GDP改定値(7-9月)、30日に米・個人消費支出(10月)、米・MNIシカゴ購買部協会景気指数(11月)、12月1日に中・財新製造業PMI(11月)などの発表が予定されている。
《FA》