2024年のドル円【フィスコ・コラム】
2年間続く円安が収束するか、2024年の相場予想で見方が分かれています。米金融引き締めの後退でドル売りに振れやすい地合いが見込まれるものの、日銀の政策決定が読み切れないためです。米大統領選後の市場の反応も不透明で、年後半は波乱が予想されます。
ドル・円相場は今年1-11月に127円21銭から151円90銭まで、24円超もドル高・円安が進行。昨年の113円47銭から151円95銭までの38円超に比べれば振れは落ち着いたものの2年連続で150円台への円安方向に振れ、1990年以来33年ぶりの水準に接近する場面が最近まで続きました。米連邦準備制度理事会(FRB)の引き締めと日銀の緩和継続で金利差が意識され、クロス円も強含んでいます。
FRBはインフレ率について物価目標上限を上回っているとしながらも、引き締めには慎重です。直近の米消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)の鈍化でインフレ沈静化は顕著になり、今月開催の連邦公開市場委員会(FOMC)も追加利上げは見送りの公算。タカ派寄りの当局者からのマイルドな見解で市場は引き締めの休止と来年の利下げを織り込みつつあり、目先はドル安がコンセンサスに。
一方、日銀は植田総裁がマイナス金利の廃止の可能性に言及したことから、市場は前のめりに緩和修正を消化しようとしています。ただ、日銀が想定するような賃金上昇を伴う形の物価上昇が実現するか、読み切れません。そんななか発表された日本の国内総生産(GDP)は3四半期ぶりにマイナスへ転落。賃上げが期待ほど進まないと日銀は緩和政策を維持せざるを得ず、再び円安を招いてしまいます。
米国に関しては消費の先細りが警戒されるものの、景気が安定的となり年央にかけてFRBの政策はシナリオ通りとみられます。が、その後は日銀の政策方針がクローズアップされ、緩やかな円高は巻き戻される展開も考えられます。9月の自民党総裁選に辛み総選挙の風も吹き始めるでしょう。政局流動化ならリスク回避の円買い要因ですが、選挙に金融政策が関連づけられれば円売りを誘発しかねません。
さらに11月の米大統領選は現時点で「バイデンVSトランプ」の見通し。上下両院の議会選も合わせ、どちらが勝とうと前回2020年よりもさらに国民の分断が進む恐れがあります。2025年以降は債務上限問題が再燃し、民主、共和両党の政策内容よりも格下げを警戒した米金利高が想定されます。年前半はドル売り主導でトレンド転換しやすい140円まで下げ、年後半はドル買い・円売りで155円を目指す展開を予想します。(吉池 威)※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。
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