明日の株式相場に向けて=政局混迷と円高で揺さぶられる市場

市況
2023年12月14日 17時00分

きょう(14日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比240円安の3万2686円と4日ぶり反落。朝方は高く始まったが、取引開始後はあっという間に失速し後場寄り早々に一段安に売られた。日経平均の下げ幅は一時400円を上回った。取引終盤は買い戻しで下げ渋ったが、アジア株市場のなかで日本だけが売りの砲火を浴びる格好となった。

前日の米国株市場ではNYダウが500ドル超の上昇をみせ未踏の3万7000ドル台に突入、22年1月以来約1年11カ月ぶりに史上最高値を更新した。また、ナスダック総合株価指数とS&P500指数も最高値には届いていないものの年初来高値を揃って更新し、上値指向の強さを顕示している。FOMCの結果と会合後のパウエルFRB議長の記者会見については、事前にこのビッグイベントを警戒視する声はあまり聞かれなかったが、一方でパウエル氏がハト派的であることへのマーケットの期待感も希薄であった。ところが、今回の会合は思わぬ形で米株市場に強力な上昇気流をもたらすことになる。

FRBは3会合連続で政策金利(FFレート)の据え置きを決め、事実上これは利上げ局面が終了したことを意味するに等しい。ターミナルレートは5.25~5.50%ということになりそうだ。ただ、投資家サイドは既に利上げ云々については念頭にない。気にしているのは来年の利下げがどういうタイミングで、何回行われるかということである。

今回のFOMCでは24年末のFFレートが4.6%という見方が示されたが、これは通常の1回あたり0.25%で換算すれば、24年中に3回分の利下げを想定していることになる。利下げ回数に対する見方はさまざまで、コンセンサスとしてははっきりしない。FRBが示唆した3回というのは微妙なところだが、少なくともパウエルFRB議長が会合後の記者会見で、「(この日の会合で)利下げの開始時期が議題に上がった」と述べたことは、これまでの言動では見られなかったリップサービス的な“告白”であった。少なくともマーケットはパウエル氏のハト派傾斜を実感したはずだ。NYダウが最後に来てこのパウエル発言で買い直され、史上最高値を更新したのは、今年のショート筋の敗北を象徴するような出来事となった。特に11月と12月の2カ月間で売り方と買い方の体勢が劇的に入れ替わった印象を受ける。NYダウやナスダック総合、S&P500など全体株価は将来への期待も含めた企業のファンダメンタルズ評価の集大成であり、であれば米国企業の底力恐るべしというよりない。ただし、現在でもなお米10年債利回りと2年債利回りの逆イールドが依然として続いている状況である。順風満帆に見えて火種はくすぶっている。

一方、きょうの東京市場は米国と比較して弱さが浮き彫りとなった。ひところは“バフェット効果”などが囃(はや)され、日経平均がNYダウにキャッチアップして近いうちに両指数の水準は逆転するのではないかという見方も市場にはあった。しかし、今の時点で日経平均が3万2683円であるのに対し、NYダウは3万7090ドルとおよそ4400もの差が生じてしまっている。ダウの背中は遠くなるばかりである。

だが悲観に傾き過ぎるのも考えものだ。きょうはFOMC通過後の米長期金利低下を背景とした、為替市場での過激な円高と政治不信が株価急落の元凶となっている。皮肉な話だが、足もとの円高によってドル建てチャートで見た日経平均は堅調そのもの。国内投資家の見ている景色は、海外筋のそれとは隔たりがあるという指摘もある。また、岸田政権における安倍派閣僚の総交代については、派閥内でも不協和音が物凄く、市場では「先生不在で安倍派の学級崩壊」(ネット証券アナリスト)などと揶揄する声も聞かれる。ただ、政局混迷で相場が下振れることはあっても、全体トレンドまで転換させるケースは過去にほとんど例がない。「政局で売りとなれば、そこは買い」というのが相場の世界の不文律である。

あすのスケジュールでは、10月の第3次産業活動指数のほか、3カ月物国庫短期証券の入札が行われる。また、東証グロース市場にS&J<5599>、東証スタンダード市場に魁力屋<5891>が新規上場する。海外では11月の中国70都市の新築住宅価格・中国工業生産高・中国小売売上高・中国固定資産投資・中国不動産開発投資、12月の仏購買担当者景気指数(PMI)速報値、12月の独PMI速報値、12月のユーロ圏PMI速報値、ロシア中銀の政策金利発表、11月の米鉱工業生産・設備稼働率、12月のニューヨーク連銀製造業景況指数、12月の米PMI(S&Pグローバル調査・速報値)など。(銀)

出所:MINKABU PRESS

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