S&P500 月例レポート ― 利上げ終了を期待、前年下落分をほぼ埋める (1) ―
S&P500月例レポートでは、S&P500の値動きから米国マーケットの動向を解説します。市場全体のトレンドだけではなく、業種、さらには個別銘柄レベルでの分析を行い、米国マーケットの現状を掘り下げて説明します。
●THE S&P 500 MARKET:2023年11月
個人的見解:サンタクロースは早く来たが、このまま居続けてくれるだろうか?
11月は七面鳥料理が2度提供されました。1つは感謝祭の食卓に並べられ、もう1つは11月中にショートポジションを解消した投資家が例外なく手に入れました (6月と7月の相場を思い起こさせます)。そして再び、保有していたポジションにもよりますが、過去3ヵ月間の下落相場(累積で8.61%下落)において空売りで手にした利益は、11月の上昇相場で被った損失で相殺されてしまいました(11月は8.92%上昇したので、正味リターンはマイナス0.46%)。年初来の騰落率は18.97%の上昇となりましたが、彼らはおそらくマグニフィセントセブン銘柄を除いた493銘柄の中から投資銘柄を厳選してポートフォリオを組んでいたのでしょう。
株式市場では、(少なくとも次のリセッションまでの)利上げ終了を確信させるに十分な経済指標の発表が続いたことが材料視されました。議会はつなぎ予算の成立を決断し、次回の土壇場での与野党合意(と政府機関閉鎖の可能性)を2024年1月19日まで先延ばししました(一部予算については期限を2月2日に延長)。期限が二段階となったのは、法案に盛り込む内容を詰めることができなかったからでしょう(ただし、特に他の誰かが資金を提供してくれる場合は、内容について考えることは好きなため、彼らは内容を詰めるでしょう)。多少の綻び(消費者の支出額は増加しているが、購買数量は減少) や懸念材料(債務コスト、クレジットカード残高や自動車ローン、住宅ローンの借り換え)はあるものの、引き続き米国経済は緩やかなペースで拡大し続けています。
11月の消費活動は予想を上回るペースとなりました (そして、その勢いはクリスマス商戦に突入しても続いています)。ブラックフライデーのオンライン売上高は過去最高の98億ドル、サイバーマンデーの売上高も過去最高となる120億ドルと推定されます。感謝祭期間(5日間のインターネット通販と実店舗)の売上総額は380億ドルが見込まれています。特筆すべきは、 マスターカード<MA>のデータによると、オンライン売上高が急増している一方で、実店舗での買い物は低調だったことです。 個人向け金融サービスサイトのバンクレート・ドット・コムによると、流通系のクレジットカードの平均金利が28.93%なのに対し、全クレジットカードは21.19%となっています(国債や銀行預金、債券の利回りとは大違いです)。 今後のホリデーシーズンに関して言えば、小売業者は割引率を引き上げたり、バーゲン期間を長期化したりすることにたじろいでいると当初は考えられています(地下鉄が次々と到着するのと同様に、この後にも別のバーゲンセールが予定されています)。選別志向を強めている消費者による支出額は2022年比3%増が予想されていますが、物価の上昇を踏まえると、実質的に販売数量は減少が見込まれます。
12月に関して言えば、相場にお化粧買いの動きが戻ってくることが予想されます。マグニフィセントセブン銘柄の偏った値上がりを背景に、株式市場の年初来リターンは18.97%となっていますが、保有銘柄の株価が低迷している(非インデックス運用の)投資家が多くいるはずだからです。12月前半に公表予定の経済指標 (PMI、ISM景気指数、雇用統計、 CPIそしてPPI)が株式市場を下支え、個人投資家は「取り残されることを恐れる」心理状態に陥り、彼らが金利5%の短期金融商品に眠らせている数兆ドルの保有資金の一部を株式市場にシフトさせる可能性があります。そして、もし売り手が気弱であれば株式資金への資金流入が需給の不均衡を生み出し、自己増殖的に株価が上昇することになります。
米連邦準備制度理事会(FRB)に関しては、高官の発言が報道されるたびに警戒感が一段と強まることになるでしょうが、2024年上半期に利下げが実施されると予想する向きが今や多数派のようです。けれども私は相変わらず少数派に属しています。FRBはインフレの燃え殻が完全に消えることを重視しており、かすかといえどもインフレの痕跡が残るようなリスクは取らないでしょう。要するに、FRBは2024年第3四半期まで政策金利を据え置くということです (2024年前半の雇用市場は引き続き堅調だとみられ、利下げ開始の助け舟にはならないでしょう)。
以上は将来の見通しですが、現時点でS&P500指数 の配当込みのトータルリターンは年初来でプラス20.80%となり、昨年の18.11%の下落分をほぼ取り戻しました(2021年末比では4.16%下落、トータルリターンはマイナス1.08%でした。2021年末の米2年物国債の利回りは0.73%)。1928年以降で見ると、12月は月間騰落率が最も良い月です。72.6%の確率で上昇しており、平均上昇率は 1.28%の上昇です(とはいえ、2022年12月は5.90%下落したことには触れておくべきかもしれません)。サンタクロースがまだ去っていないことは大いに期待できます。数少ない勇気ある強気派はS&P500指数が2022年1月3日に付けた終値での最高値4796.56を目標値に掲げていますが、そこに到達するには現在の水準から4.77%上昇する必要があります(夢は持つべきでしょう。でも、計画を持って売り指値注文を入れる方がはるかに安心できるかもしれません)。
●インデックスの動き
○S&P500指数は8.92%上昇して4567.80で月を終えました(配当込みのトータルリターンはプラス[一大1]9.13%で、2022年7月の9.11%以来、最高の月となりました)。10月は4193.80で終え、2.20%の下落(同マイナス2.10%)、9月は4288.05で終え、4.87%の下落(同マイナス4.77%)でした。過去3ヵ月では1.33%の上昇(同プラス1.74%)、年初来では18.97%の上昇(同プラス20.80%)、過去1年では11.95%の上昇(同プラス13.82%)でした。
ダウ・ジョーンズ工業株価平均(ダウ平均)は8.77%上昇(同プラス9.15%)して3万5950.89ドルで月を終えました。S&P500指数のプラス8.92%を下回り、年初来ではS&P500指数のプラス18.97%に対してプラス8.46%(同プラス10.01%)と、引き続きS&P500指数を大きく下回っています。このかい離は、ウェイト付け(時価総額に対して単純株価)によるものですが、歴史的に見ると追随しています。
⇒S&P500指数の時価総額は11月に3兆1780億ドル増加(10月は8030億ドル減少)、年初来では6兆1800億ドル増加し、38兆1690億ドルとなりました。
○11月の日中ボラティリティ(日中の値幅を安値で除して算出)は、10月の1.28%から0.75%に低下、年初来では1.06%となりました。2022年は1.83%、2021年は0.97%、2020年は1.51%でした。
○11月の出来高は、10月に前月比1%減少した後、4%増加し(営業日数調整後)、前年同月比では17%の減少でした。2023年11月までの過去1年では前年比4%増加しました。2022年は同6%の増加でした。
○11月は1%以上変動した日数は、21営業日中4日(上昇が4日、下落が0日)でした。10月は22営業日中8日(上昇が3日、下落が5日)でした。年初来では、1%以上変動した日数は230営業日中60日(上昇が34日、下落が26日)、2%以上変動した日数は2日(上昇が1日、下落が1日)でした。11月は21営業日中6日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日はありませんでした。10月は22営業日中17日で日中の変動率が1%以上となり、変動率が2%以上の日はありませんでした。年初来では1%以上の変動が111日、2%以上の変動が13日、変動率が3%以上の日はありませんでした。(直近で3%以上の変動があったのは2022年11月30日)。
過去の実績を見ると、11月は61.1%の確率で上昇し、上昇した月の平均上昇率は4.02%、下落した月の平均下落率は4.16%、全体の平均騰落率は0.88%の上昇となっています。2023年11月のS&P500指数は8.92%の上昇でした。
12月は72.6%の確率で上昇と1年で最高の月となっており、上昇した月の平均上昇率は2.97%、下落した月の平均下落率は3.19%、全体の平均騰落率は1.28%の上昇となっています。
今後の米連邦公開市場委員会(FOMC)のスケジュールは、2023年は12月12日-13日、2024年は1月30日-2月1日、3月19日-20日、4月30日-5月1日、6月11日-12日、7月30日-31日、9月17日-18日、11月6日-7日、12月17日-18日となっています。
※「利上げ終了を期待、前年下落分をほぼ埋める (2)」へ続く
株探ニュース