S&P500 月例レポート ― 利上げ終了を期待、前年下落分をほぼ埋める (3) ―
●米国経済
○10月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は50.0となり、9月の49.8から上昇しました。
○10月のISM製造業景気指数は46.7となりました。市場予想は9月から横ばいの49.0でした。
○10月のサービス業PMIは50.6となり、9月の50.2から上昇しました。
○11月の総合PMI速報値は50.7となっています。製造業PMIは前月の49.9から低下して49.4、サービス業PMIは同50.5から上昇して50.8となりました。
○10月のISM非製造業景気指数は51.8に低下しました。市場予想は9月の53.6から低下の53.0でした。
○2023年第3四半期の労働生産性(速報値)は4.7%上昇しました。市場ではそれよりも低い4.2%上昇が予想されており、第2四半期は3.5%上昇でした。単位労働コストは0.8%低下しました。市場予想は0.7%上昇、第2四半期は2.2%上昇でした。
○10月の消費者物価指数(CPI)は予想が前月比0.1%上昇だったのに対し、横ばいとなりました(9月は0.4%上昇)。前年同月比は3.2%上昇となり9月の3.7%上昇から低下しました。コアCPIは前月比0.2%上昇、前年同月比では4.0%上昇となり、9月の4.1%上昇から低下しました。
⇒このニュースに市場は反応し、FRBの利上げ終了を示唆すると解釈しました(いまや利下げがいつ開始されるかに話題は移っています)。CPI発表当日に市場は1.91%上昇しました。金利市場も反応を見せ、米10年物国債利回りは4.62%から4.44%に低下しました。先物市場が示唆する追加利上げの可能性は30%から1%未満へ低下しました。
○10月の生産者物価指数(PPI)は市場予想の前月比0.1%上昇に対して0.5%低下となりました(9月は0.5%上昇)。消費者にとっては朗報ですが、企業の利益率にとっては悪材料です。前年同月比では1.3%上昇となり、9月の2.2%上昇から低下しました。ピークは2022年6月で11.3%上昇でした。コアPPIは前年同月比で2.4%上昇となり、9月の2.7%上昇から低下しました。
○2023年第3四半期の国内総生産(GDP)成長率改定値は前期比年率換算で5.2%となり、速報値の4.9%から上方修正されました。個人消費の伸びは同3.6%となり、速報値の4.0%から下方修正されました。
⇒2023年第3四半期の企業利益の改定値は同7.8%減となり、速報値から変わらずでした。
○10月の個人所得は前月比0.2%増と、予想通りの結果となりました(9月は0.3%増)。10月の個人消費支出は前月比0.2%増となりました(同0.7%増)。
⇒個人消費支出(PCE)価格指数は前月比横ばい(9月は0.4%上昇)、前年同月比では3.0%上昇(同3.4%上昇)となりました。
○10月の鉱工業生産指数は前月比0.6%低下しました。設備稼働率は78.9%となり、9月の79.5%から低下しました。
○9月の建設支出は前月比0.4%増となり、予想通りの結果でした。8月は当初発表の0.5%増から1.0%増に上方修正されました。前年同月比は8.7%増と、8月の7.6%増から伸びが加速しました。
○9月の製造業受注は前月比2.8%増となり、予想の1.6%増を大幅に上回りました。8月は当初発表の1.2%増から1.0%増に下方修正されました。
○10月の耐久財受注は予想の前月比3.2%減に対し、5.4%減となりました。9月は当初発表の4.7%増から4.0%増に下方修正されました。
○9月の卸売在庫は前月比0.2%増となりました。8月は当初発表の0.1%減から横ばいに上方修正されました。
⇒10月の卸売在庫は前月比0.2%減でした。
○10月の小売在庫は前月比横ばいとなりました。9月は当初発表の0.9%増から0.4%増に下方修正されました。
○9月の企業在庫は予想通りの前月比0.4%増となりました。8月も0.4%増でした。
○10月の小売売上高は市場予想の前月比0.3%減に対し、0.1%減となりました。高額商品の減少が顕著でした。9月は当初発表の0.7%増から0.9%増に上方修正されました。
○2023年第3四半期の電子商取引売上高は2.3%増となり、第2四半期は当初発表の2.1%増から2.2%増に上方修正されました。
○9月の貿易統計によると、財とサービスを合わせた貿易収支の赤字額は615億ドルとなり、8月の587億ドルから赤字が拡大しました。
⇒10月の貿易統計(速報値)によると、貿易赤字額は898億ドルとなりました。輸入は横ばい(9月は2.7%増)、輸出は1.7%減(同2.9%増)でした。
○10月の輸入物価指数は、前月比0.3%低下の予想に対し、0.8%低下となりました。前年同月比では2.0%低下(9月は1.7%低下)となりました。輸出物価指数は前月比1.1%低下(予想は0.2%低下)となり、前年同月比では4.9%低下(9月は4.1%低下)しています。
○11月のミシガン大学消費者信頼感指数(速報値)は60.4となり、前月の63.8から低下しました。予想は63.5でした。1年先のインフレ期待は4.4%で、10月の4.2%から上昇しました。
⇒その後に発表された11月ミシガン大学消費者信頼感指数(確報値)は61.3となり、速報値の60.4から上方修正されました。また、1年先のインフレ期待(確報値)は4.5%となり、速報値の4.4%から上方修正されました。
○10月の景気先行指数は、予想が前月比0.6%の低下だったのに対し、0.8%低下しました。
○民間調査機関コンファレンスボードが発表した11月の消費者信頼感指数は102.6となり、市場予想の 100.0を上回りました。9月は当初発表の103.0から104.3に上方修正されました。
●雇用関係
○ADP全米雇用統計によると、10月の民間部門雇用者数は市場予想の14万5000人増を大幅に下回る11万3000人増となりました(9月は8万9000人増)。
○10月の雇用統計では非農業部門雇用者数が前月比15万人増となり、市場予想の17万9000人増を下回りました。9月分も当初発表の33万6000人増から29万7000人増に下方修正されました(それでも当初予想の16万人増を大幅に上回る)。
⇒10月の失業率は前月比横ばいの3.8%と予想されていましたが、3.9%(2023年1月以来の高水準)に上昇しました(8月は3.8%、7月は3.5%。なお2020年2月は3.5%でしたが、同年5月には13.3%となりました)。
⇒労働参加率は9月から変わらずの64.8%の予想に対して、62.7%に低下しました。
⇒週平均労働時間は9月から横ばいの34.4時間の予想に対して、34.3時間に減少しました。
⇒平均時給は前月比0.3%増が見込まれていましたが、0.2%増となりました(34.00ドル)。9月分は当初発表の0.2%増から0.3%増に上方修正されました(8月は0.2%増、7月は0.4%増)。前年同月比では、9月分が当初発表の4.2%増から4.3%増に上方修正され、10月は4.1%増となり、9月から低下しました(8月は4.3%増、7月は4.4%増)。
○9月のJOLTS(求人労働移動調査)によると、求人件数は8月の949万7000件から小幅に増加して955万3000件となりました。
○失業保険継続受給件数(季節調整済み)は、前月の173万9000件から192万7000件に[一大2]増加しました。
⇒2023年11月2日発表の週間新規失業保険申請件数:21万7000件(当初の発表通り)
⇒2023年11月9日発表の週間新規失業保険申請件数:21万7000件
⇒2023年11月16日発表の週間新規失業保険申請件数:23万1000件
⇒2023年11月23日発表の週間新規失業保険申請件数:20万9000件
⇒2023年11月30日発表の週間新規失業保険申請件数:21万8000件
●レイオフ(および関連事項):
○全米自動車労働組合(UAW)は、米国の大手自動車メーカー3社(フォード<F>、ゼネラル・モーターズ<GM>、ステランティス<STLA>)と、4年間で25%の賃上げおよび福利厚生の拡大で合意し、ストライキを終えました。
⇒UAWの和解の影響はすぐに表れ、自動車メーカーのトヨタ自動車 <7203> [東証P](週間では1.0%下落)は自動車工場労働者の給与の9%引き上げと福利厚生の拡大を発表しました。
○ファストフードレストランを運営する非上場企業のパネラブレッドは、予定されているIPOに先立ち、1800人の事務員のうち300人を解雇すると発表しました。
※「利上げ終了を期待、前年下落分をほぼ埋める (4)」へ続く
株探ニュース