酒井一氏【伸びきれない日経平均、年末年始でレンジ上抜けなるか】 <相場観特集>
―バブル後高値前に足踏み状態、日銀マイナス金利解除の観測が渦巻く―
週明け25日の日経平均株価は前週末に比べ一時240円を超す上昇となった後に失速し、終値は84円高と上値の重さが引き続き意識された。海外投資家がクリスマス休暇入りし、商いが低調となったのは致し方ないとはいえ、日経平均は6月以降のレンジ相場を上抜けられず、バブル崩壊後の高値3万3753円を手前に足踏み状態が続いている。過去最高値圏で浮揚力を強める米国株とは対照的な姿となっている東京市場のここからの相場展望について、水戸証券の酒井一チーフファンドマネージャーに話を聞いた。
●「日銀以外にも注視すべき2つのリスク」
酒井一氏(水戸証券 投資顧問部 チーフファンドマネージャー)
日経平均のこの先1ヵ月間の予想レンジは3万2000~3万4000円だ。6月以降のレンジを一時的に上抜けることがあっても、一段と買い上がっていく形になるのは難しい。自動車や機械など円安メリットセクターは、目先は低調に推移しそうだ。内需系の円高メリット株が消去法的に選好される格好となるだろう。
日銀の金融政策に関しては、マイナス金利政策の解除観測が根強い状況にある。来年1月22~23日に日銀の金融政策決定会合が予定されているが、会合前に政策が修正されるとの見方が再び台頭し、円高が進めば日本株の上値を圧迫することとなる。ただし、いつマイナス金利が解除されるのか、その時期について市場が気を揉む状態が長く続いてきた。解除後に日銀が継続して利上げに進むシナリオが想定しにくいとあれば、もしマイナス金利が解除となった場合は、株式市場にはアク抜け感が出るだろう。政策修正後の一方的な株安は想定していない。
日銀以外にも警戒すべきポイントが2つある。1つ目は、1月13日に投開票が行われる台湾総統選だ。まだ市場で大きな話題とはなっていないが、中国と対立する与党・民進党の候補がリードしていると伝わっている。今後の中国の動き次第では、台湾を巡る地政学リスクが高まることもあるだろう。米中が対立関係にあるなか、台湾有事が発生すれば日本は前線に立つこととなる。一時的に緊張感が高まった際に、日本株から海外投資家の資金が引き揚げられれば下押しは避けられない。もう1つは、米国の「つなぎ予算」の期限となる2月2日までの政治動向だ。政府機関の閉鎖リスクが再びクローズアップされやすい局面となり、米大手格付け会社が米国債の格付けを引き下げる場合などでは、金融市場が動揺する恐れがある。もっとも格下げ自体は、企業のファンダメンタルズに大きな影響を及ぼすものではないだろう。リスク回避ムードが一時的に強まったとしても、投資家心理はやがて持ち直しに向かうはずだ。
万一、台湾や米国発のショックに見舞われたとしても、日経平均が今年10月の安値3万500円近辺まで調整した際には買い場だと考えている。日本では東証が1月中に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」に関する開示企業の一覧表を公表する予定だ。低PBR(株価純資産倍率)の是正に向け、日本企業の取り組みが前進しているとの受け止めが広がれば、リスト公表を契機に海外投資家の日本株への買い意欲が強まると期待できる。新NISAの開始そのものも、需給面で日本株を下支えするとみている。
(聞き手・長田善行)
<プロフィール>(さかい・はじめ)
2009年水戸証券入社後、リテール営業を経て、11年より投資顧問部にてファンドラップの運用に携わる。17年よりチーフファンドマネージャー。
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