山岡和雅が2024年為替相場を大胆予測! <新春特別企画>

特集
2024年1月1日 14時00分

●大相場となった2023年のドル円、利上げサイクルは終局へ

2023年の外国為替市場でドル円相場は、1月に付けた127円23銭から11月に付けた151円91銭まで、24円70銭のレンジとなりました。1986年以来のレンジ幅となった2022年の38円46銭には届きませんが、2000年台に入って2022年に続く2番目の広さであり、かなりの大相場となっています。

2023年の相場を動かした材料は、世界的に進んだ物価高の落ち着きと、利上げサイクルの終了にあります。

アフターコロナの中、世界的に進んだ物価上昇。ピークは国・地域によって違いますが、主要国の消費者物価指数(前年同月比)を比べると、米国は2022年6月の+9.1%、ユーロ圏と英国は同年10月の+10.6%、+11.1%となりました。

その後、物価は落ち着きを見せ、最新2023年11月時点で米国が+3.1%(PCEデフレータは+2.6%)、ユーロ圏が+2.4%、英国が+3.9%となり、インフレターゲット2%の達成が現実味を帯びてきました。

こうした状況を受けて米連邦準備制度理事会(FRB)は7月26日、欧州中央銀行(ECB)は9月14日、イングランド銀行(BOE)は8月3日の利上げを最後に、政策金利の据え置きを続けています。各中銀とも追加利上げの可能性を否定しているわけではありませんが、可能性は低く、次のアクションは利下げと見込まれています。

一方、日本銀行は2016年から続く長短金利操作付き量的質的緩和(YCC:イールドカーブ・コントロール)の下、短期金利は-0.1%とマイナス金利を継続しています。長期金利も目標値は0%を継続。誘導幅を広げる柔軟化を2回行いましたが、かなり抑えられた水準での推移が続きました。これによって生じた海外と日本の金利差が外貨買い・円売りにつながりました。

2023年のドル円は1月に付けた127円23銭を安値に上昇。米国の中小金融機関からの資金流出問題や黒田前日銀総裁最後の会合での政策変更への期待が広がった3月、米国の物価鈍化や日銀によるYCC柔軟化実施のあった7月と2度の大きな調整を交えながら、米景気の力強さもありドル高・円安基調が継続。11月には151円91銭と、2022年の高値151円94銭に迫りました。その後は堅調であった米労働市場が弱さを見せたこともあって、米国の利下げ期待が強まる中で、年末にかけてドル売り・円買いが優勢となっています。

●2024年のドル円は137円台が最初のポイント

2024年に入っても物価動向と各国の金融政策動向が大きな材料となると見られています。

12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で示された2024年末時点での米政策金利水準見通しは4.50-4.75%と、2024年中に3回の利下げを示唆しました。市場の期待はより激しいものとなっており、金利先物市場および短期金利市場での2024年末時点での政策金利見通しは3.50-3.75%と3.75-4.00%が拮抗。2024年中に6回もしくは7回の利下げを見込んでいます。利下げ開始時期としては3月という見方が広がっています。

積極的な利上げを受けても底堅さを示してきた米経済ですが、ここにきてやや厳しさが見られます。雇用動向にその影響が強く見られ、市場が注目する米非農業部門雇用者数(NFP:前月比)は、直近2カ月続けて節目の20万人増を割り込む低い伸びに留まりました。米雇用動態調査(JOLTS)の求人件数も、10月末時点で873.3万人と2021年3月以来の低い水準を示しています。

米FRBの二大命題(デュアルマンデート)である「物価の安定」と「雇用の最大化」において、物価の安定が達成しつつあるタイミングで雇用の最大化が揺らいでおり、利下げが求められる状況になってきているという印象です。

一方、日本銀行のマイナス金利解除期待も広がっています。2022年4月以降、1年半以上にわたって消費者物価指数(生鮮除く前年比)がインフレターゲットの2%を超えており、マイナス金利を続けるには無理があるとの見方が海外勢を中心に強まっています。植田日銀総裁が就任以降掲げている「賃金上昇を伴った」2%の物価目標という観点からは、春闘の状況を確認し、その後3月か4月の会合でマイナス金利を解除するとの見方が一般的になっています。

米国の利下げは、米景気のサポートという面では米株式市場などの好材料となりますが、金利差が大きなファクターとなる外国為替市場ではドル売り材料となります。さらに、日本が-0.1%から0%へわずかながらも利上げすれば、日米両面からのドル安・円高圧力となります。

とはいえ、米FRBが示唆した3回利下げ程度であれば、日銀がゼロ金利に戻したところで金利差はかなり大きく、日米金利差を狙った取引が継続する形で下値を支えそうです。一方、金利市場が期待するような積極的な利下げが進むと、ドル円が大きく崩れる可能性があります。どこまで利下げが進むか、カギを握る米雇用情勢などを睨みつつの展開が見込まれます。

ドル円は7月に付けた137円台が最初のポイント。1月に付けた2023年の安値127円23銭を割り込む可能性も十分にあります。

ユーロ円も同様の動きを見込んでいます。ECB、BOEに対して市場は3月の利下げを本線として期待しており、その後の利下げ継続を見込んでいます。円との金利差縮小からドル円同様に円高が進む可能性が高いと見ています。ユーロ円は151円50銭前後が最初のポイント。対ドルでのユーロ買いもあり、1月に付けた137円40銭前後はかなり遠いですが、5月に付けた146円10銭台を試す可能性は十分ありそうです。

ポンド円も同様に円高圧力が見込まれますが、少し注意が必要です。英国の物価水準が米国、ユーロ圏に比べて高いこと、また英中銀自体が物価抑制に積極的なインフレファイターとして知られていることなどから、市場の期待に比べて利下げ実施が遅れる可能性があります。この場合は対ドル、対ユーロでのポンド高を誘い、ユーロ円などに比べて下げが抑えられると見ています。1月に付けた155円台が相当に遠く見えます。

2023年12月27日 記

★元日~4日に、2024年「新春特集」を一挙、"27本"配信します。ご期待ください。

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