明日の株式相場に向けて=日経平均上昇一服で低位株に活躍素地
きょう(17日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比141円安の3万5477円と続落。前日のアジア時間からリスクオフの流れで、欧州株市場はほぼ全面安商状となり、米国株市場も米10年債利回りの上昇が重荷となって、NYダウが230ドルあまりの下げで続落を余儀なくされた。ところが、折からのドル高・円安進行が味方して、日経平均株価は朝方から買いが先行した。円安については米国の早期利下げ期待が後退している一方、日銀のマイナス金利解除に向けた動きも遠のいており、日米金利差縮小を根拠とする円買いが鳴りを潜めていることが背景にある。だが、これだけではない。新NISA導入に伴い、個人投資家の「つみたて投資枠」で米国や世界株式などの海外投信を買う動きが活発で、これが円売り効果をもたらしているという。新NISAで海外に個人の資金が流れるのは本来あまり嬉しくない現象ながら、これが円安効果を生み、結果として日本株に心地良い風を吹かせているとしたら、皮肉なフォローウインドということになる。
もっとも、きょうは買い一巡後に日経平均は急速に値を消しマイナス圏でほぼ安値引けとなった。短期的な過熱感は百も承知で買われ続けてきたわけで、本来なら朝方から下値を探る展開となるのが自然だったが、600円超の上昇で3万6000円台を大きく回復してからの急降下は、俗に言う“味の悪い展開”といえる。ただ、これが今の新NISA礼賛ブームに水を差すほどのインパクトはない。きょうのプライム市場で5兆2000億円強の大商いを演じたのは過剰流動性の賜物といってよく、全体指数が不安定となっても、しばらくは個別株にチャンスの多い地合いが続きそうだ。
個別では前日の米半導体株高を受け、レーザーテック<6920>が相変わらずの大商いをこなして大きく上値を伸ばすなど再浮上の様相を示した。一方、さくらインターネット<3778>が生成AI関連のシンボルストックとして「株は需給」を地で行くストップ高人気となった。しかし、6連騰後のマド開け急騰はさすがに規格外で、目先は追撃買いも空売りも難しい局面。ここから先は荒れた値動きが予想され、観賞用としておくのが妥当か。 AI関連では下値リスクの限定的な出遅れ低位株に網を張っておくのも一法。例えばエクサウィザーズ<4259>の400円近辺は食指が動く。業績面では営業赤字が続いているものの、この手の銘柄はトップラインの伸びに着目するべきで、24年3月期の売上高は前期比5割増の85億円を見込む。M&A戦略が奏功し自社開発のAIサービスが企業のDX投資需要をとらえている。テクニカル的にも13週・26週線のGC接近で狙い目に見える。
このほか、低位株ではハイテク路線から目先を変えて内需系の銘柄にも焦点を合わせてみたい。「復興関連」という切り口はテーマとして囃(はや)されにくい面もあるが、コンクリート2次製品メーカー大手であるジオスター<5282>は空港向け舗装製品に強みを有しており羽田関連として注目したい。業績は24年3月期が大底とみられ、有配企業にして0.4倍台に放置されたPBRは何らかの株価刺激策への思惑を内包する。
また、コンクリート2次製品メーカーでは日本コンクリート工業<5269>も人気化素地を開花させつつある。きょうの後場取引時間中に23年4~9月期の決算を発表、営業利益は前年同期比約32倍の12億7300万円と回復色を鮮明とした。これについては前週11日に発表した上方修正で織り込み済みだったが、マド開け急騰後にもみ合い、時価はまだ400円台でPBRも0.6倍台と低い。3%近い配当利回りは魅力で継続注目。
このほか、新潟を地盤に北陸、東北に展開する建設コンサルのキタック<4707>は年明け早々にストップ高連発(ザラ場を含む)で470円台まで値を飛ばした後、調整局面に移行し300円台後半で売り物を枯らしている。同社もPBRは0.7倍台であり、業績回復色が鮮明なだけに改めてマークしておきたい。
あすのスケジュールでは、週間の対外・対内証券売買契約と、11月の機械受注が朝方取引開始前に発表されるほか、午前中に1年物国庫短期証券の入札、20年物国債の入札が行われる予定。午後取引時間中には11月の鉱工業生産確報値が開示される。海外では週間の米新規失業保険申請件数、1月のフィラデルフィア連銀製造業景況感指数、12月の米住宅着工件数、12月の米建設許可件数などにマーケットの関心が高い。なお、台湾の半導体受託生産最大手TSMC<TSM>の10~12月期決算も注目される。(銀)