米銀行株は厳しいスタート 金利低下で短期的に収益圧迫
前日終値
JPモルガン<JPM> 167.99(-1.06 -0.63%)
シティグループ<C> 51.87(-0.75 -1.43%)
バンカメ<BAC> 32.12(-0.68 -2.07%)
ウェルズ・ファーゴ<WFC> 46.82(-0.58 -1.22%)
ゴールドマン<GS> 380.45(+2.70 +0.71%)
モルガン・スタンレー<MS> 85.97(-3.73 -4.16%)
今年の銀行株は厳しいスタートとなっており、株価も軟調に推移している。先週から今週にかけて大手銀の10-12月期(第4四半期)決算が発表になっていたが、昨年春の地銀破綻に伴う米連邦預金保険公社(FDIC)への支払いといった一時費用の計上や、その他の特異な事象が、大手銀の利益を圧迫していた。シティグループ<C>は数々の一時的な費用を計上し、第4四半期は18億ドルの損失を計上。モルガン・スタンレー<MS>は前日の決算を受けて4%超下落していたが、ブロック取引の詐欺容疑に関する規制当局との和解金2億4900万ドルと、こちらもFDICに関連する2億8600万ドルの損失計上で大幅な減益となっていた。
ただ、最近の銀行株下落で最も大きな役割を果たしているのは「金利低下」だとアナリストは指摘する。過去2年間、銀行にとっての大きな話題は金利上昇に伴う純受取利息(NII)の増加であった。しかし、FRBが年内に利下げを開始した場合、貸出金利が低下するため、銀行は短期的に収益圧迫に直面する可能性があるという。金利低下により預金者に支払う金利などの調達コストも低下するが、そのペースは貸出金利よりも遅くなる可能性があるという。
実際、FRBによる追加利上げがなくなったにもかかわらず、直近の銀行の資金調達コストは上昇している。銀行は預金獲得を巡って競争しているだけでなく、金融市場とも競争しているという。23年第3四半期の銀行業界の預金コスト総額は2.1%に上昇し、第2四半期から0.32%ポイント上昇した。譲渡性預金(CD)やその他の高コスト商品が預金の大部分を占めるようになるにつれ、預金獲得コストは上昇が続いているという。1年物CDの金利が4%を超える銀行の数は12月15日現在749行で、昨年6月末から46%増加し、昨年3月末の2倍以上になっている。一方、高金利環境下で融資も伸び悩んでいる。消費者が高金利を嫌っているのもあるが、銀行自体が融資基準を引き締めていることも要因となっている。
ただ、悪い話ばかりではない。最終的に低金利環境になれば、銀行の他の事業に利益をもたらす可能性がある。例えば、住宅ローンやその他のローン金利が下がれば、ローンの設定件数が増えることが期待される。また、投資銀行業務は過去2年間低迷していたが、低金利環境は資本市場、発行、M&Aの活動を支援することも期待されそうだ。
経済のソフトランディングと、より正常な金利環境への回帰が重なれば、銀行にとっては良いシナリオになるとアナリストは言う。ただ、その道のりは当面険しいかもしれないとも付け加えた。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美