明日の株式相場に向けて=いったん足を止めて「森」を見る
きょう(30日)の東京株式市場は、日経平均株価が前営業日比38円高の3万6065円と小幅続伸。強弱観が対立し目先方向感が見えにくくなってはいるが、日経平均が3万6000円台をキープできているということは、それなりに強い地合いであるといってよい。ただ、値下がり銘柄数の多さや売買代金の減少傾向を見る限り、ひと頃の高揚感はだいぶ剥落した印象を受ける。前日の米株高は市場のセンチメント改善につながった一方、足もと外国為替市場で円高含みに推移したことが、輸出セクター中心に重荷となった。
今週は米国でGAFAMの決算発表が相次ぎ、現地時間30日にアルファベット<GOOGL>、マイクロソフト<MSFT>、そして2月1日にアップル<AAPL>、アマゾン<AMZN>、メタ<META>が予定されており、この内容にマーケットの関心が高い。そして、週内のイベントとしては、何といってもあす31日に判明するFOMCの結果とパウエルFRB議長の記者会見に耳目が集まる。今回のFOMCでは4会合連続での政策金利据え置きが極めて濃厚だが、問題は会合後の記者会見でパウエル氏がどのような発言を行うかである。
現状、Fedウォッチでは5月利下げの線が過半を占め、最も可能性が高いとみられている。想定が正しければ、今回のFOMC後の会見でパウエル氏は何らかのハト派的なシグナルをコメントの中に織り込むはずである。また、もう一つ忘れてならないのがFRBによるバランスシート圧縮の動き、いわゆるQT(量的引き締め)をどうするかだ。利下げ局面への移行が意識されるなか、整合性を取るうえでQTも早晩見直しの動きが生じるのかどうか、マーケットの思惑が錯綜している。
一方、日本国内では遅かれ早かれ、日銀がマイナス金利の解除に動く可能性が高い。次回3月(18~19日開催)の会合での解除を予想する声もあるが、常識的には新年度入りした後の4月解除の線がシナリオとして最有力であろう。マイナス金利を解消すること自体は、現実問題として株式市場もそれほど恐れているとは思えないが、その先にゼロ金利に近い状態が当面続くというコンセンサスが前提となっているフシがあり、今後の物価動向次第で危うさもある。
日米の金融政策は同じ時間軸で変更の機が熟しつつある。日本は4月、米国は5月と、1カ月程度の差で政策変更の決断がなされる公算が大きい。ただし言うまでもなくベクトルの向きは真逆であり、緩和方向の米国に対し引き締め方向の日本という構図となる。理屈的には、日米金利差縮小に伴い外国為替市場では円高に進む。足もとで米長期金利が再び低下傾向を示し、1ドル=147円台前半で円が強含みに推移しているが、これはFOMCを目前に円買いの流れを想定した仕掛け的な動きも垣間見られる。
一方、新NISA導入に伴う証券会社の口座開設が爆発的に増えているが、その内訳としては「つみたて投資枠」中心にオール・カントリー(全世界株式)と米国株式が圧倒的人気となっている。これが円安効果をもたらしているものの、中期的に今のドル買いの流れが恒常化することは考えにくく、円高基調が定着すれば株式市場に向かい風となる可能性がある。また、今年に入ってから海外投資家の買いが顕著だが、これも若干怪しくなってきた。「前週(1月第4週)あたりから海外マネーの流入が細っている印象を受ける」(ネット証券マーケットアナリスト)という声が聞かれる。アジア株市場に目を向ければ中国や香港株市場が戻り一服局面で軟化しており、ここを踊り場に首尾よく2段上げに向かうかどうかは未知数だ。本格化する国内企業の決算発表も良くて当たり前のムードは逆にリスクの度合いを高める。外部環境に目を凝らして、いったん様子を見ておきたい気もする。
あすのスケジュールでは、日銀金融政策決定会合の主な意見(1月22~23日開催分)、12月の鉱工業生産速報値、12月の商業動態統計、12月の建機出荷、1月の消費動向調査、12月の住宅着工統計など。海外では、1月の中国製造業購買担当者景気指数(PMI)・中国非製造業PMI、10~12月期香港GDP、10~12月期台湾GDP、10~12月期フィリピンGDP、10~12月期豪消費者物価指数(CPI)、1月の独失業率、1月の独CPI速報値、1月のADP全米雇用リポート、10~12月期米雇用コスト指数、1月の米シカゴ購買部協会景気指数などが予定される。また、FOMCの結果発表とパウエルFRB議長の記者会見にマーケットの関心が高い。(銀)
最終更新日:2024年01月30日 18時37分