巨大IT企業の株価がもしバブルなら、何がきっかけで弾ける?
巨大IT企業は依然として株式市場のドライバーとなっている。株式市場は今年も強気を維持する中で、これらの銘柄の上昇が1990年代のITバブルを彷彿とさせるかどうかについての議論が一部で高まっている。それについてストラテジストは以下のように言及している。
マグニフィセント7が米国株の上昇を牽引し続け、株価指数を記録的な水準まで押し上げている。その分、マグニフィセント7の運命が逆転すれば、市場全体に大きな影響を与える可能性は大きい。マグニフィセント7とは、エヌビディア<NVDA>、アルファベット<GOOG>、アマゾン<AMZN>、アップル<AAPL>、テスラ<TSLA>、メタ<META>、マイクロソフト<MSFT>の時価総額の高い巨大IT企業だ。
これらの銘柄は人工知能(AI)ブームの最大の受益者になるとの期待から昨年の株式市場ではリターンを独占した。今年はアップルとテスラは冴えないものの、残りの5銘柄に全体の主導権がますます集中している。
市場は特定の銘柄のどの程度集中しているのだろうか。現在、S&P500の時価総額上位10銘柄で指数全体の32%を占めている。1990年代のITバブルのピーク時の上位10銘柄の比重を約6ポイント上回っている状況。その上位10銘柄の大部分はマグニフィセント7が占めているが、それにイーライリリー<LLY>などが加わる。
このような特定の銘柄が指数を支配し、それらの銘柄間の相関性も高い。そのため、指数が本来持っている分散投資の効果も薄れている状況。逆に言えば、これらの銘柄の業績悪化は市場全体の最大リスクであるということでもある。
巨大IT企業の株価が、もしバブルだとするならば、何がきっかけで弾けるのか?
◆業績期待
巨大IT企業は全体として力強い成長を続けており、他のセクターとの差も広げているが、今年のアナリストのコンセンサス予想を上回るのは難しいという。昨年のマグニフィセント7の成長は10%の増益となり、アナリスト予想を軽々と上回った。そのため今年も利益が過去最高を更新するという期待のもと、さらに22%の増益を達成すると期待されている。ただ、その期待の達成を懐疑的に見ている。
AIの進歩は中期的には収益性を高めるのに役立つかもしれないが、多くの上振れ予想はすでに織り込み済みだと主張している。技術革新の恩恵を受けるには長い時間がかかることは歴史が証明しており、特定の企業が最終的な勝者になる保証はないという。
◆引き伸ばされたバリュエーションと利回り上昇
マグニフィセント7のバリュエーションは、再び引き伸ばされていると指摘。現在、マグニフィセント7の1年先の予想ベースの株価収益率(PER)は平均29倍で取引されているのに対し、S&P500の他の銘柄は16倍となっている。一方、現在の米国債利回りは過去平均を大きく上回って推移しているが、それは遥か将来の期待収益に基づく高バリュエーションを持つ銘柄にとっては重荷となる。
そのため、インフレが予想ほど鎮静化せず、利回りが短期的に上昇し続ければ、それらの銘柄は調整されやすいという。22年のマグニファイド7は利回り急上昇と伴にアンダーパフォームし、昨年第3四半期は好業績にもかかわらず、パフォーマンスに苦労していたことからもうかがえる。
◆政治面の不確実性
11月には米大統領選が控えおり、政治面での不確実性が高まっている。特にITセクターは反トラスト法の観点からも引き続き注目されており、選挙戦では民主党の重要な争点となる可能性が高い。
また、ITセクターは貿易政策を巡る不確実性の高まりにもさらされる可能性がある。ITセクターは中国や台湾へのエクスポージャーが大きく、ここ数年の相対リターンは貿易の不確実性の指標と負の相関関係があるという。共和党候補の再選であれば、そのリスクへの意識は高まる。
MINKABU PRESS編集部 野沢卓美