三井郁男氏【史上最高値を連日更新、株高はどこまで続くか?】 <相場観特集>

特集
2024年2月26日 18時30分

―4万円大台乗せが視界に、過熱感高まるなかで迎える年度末相場の展望を読む―

連休明けとなる26日の東京株式市場で、日経平均株価は3万9000円台に乗せたまま一段と水準を切り上げ、史上最高値を連日で更新した。約34年間の長いトンネルをようやく抜けた株式市場には高揚感が広がり、短期的な過熱感が意識されながらも売り込む姿勢は限られた。日経平均が4万円に接近しつつあるなか、年度末となる3月相場はどのような展開をみせるのか。国内外の金融機関で40年近くにわたり日本株運用に携わってきたアイザワ証券の三井郁男氏に今後の見通しを聞いた。

●「実体を伴う株高で上昇トレンドは不変、大型株主導の展開が継続」

三井郁男氏(アイザワ証券 投資顧問部 ファンドマネージャー)

生成AIに関連するような一部の銘柄には過熱感がある。全体相場も短期的に調整局面を迎えても不思議ではない。年度末に差し掛かり、機関投資家を中心とした一定の売り需要が想定されるほか、3月8日に算出されるメジャーSQに絡んだ売買も、目先の相場の変動要因となるだろう。一方、日本株は今後数年間の長期的な上昇相場のスタートラインにようやく立ったところでもある。企業の稼ぐ力をもとにした「実体を伴った株高」となっている以上、短期的に下落しても上昇トレンドに大きな変化はなさそうだ。この先1ヵ月間は4万円を手前に日柄調整が進むとみているが、企業業績に関しては来期も増益基調が続くと予想されている。夏場にかけて日経平均は4万2000円を上回る水準まで上昇してもおかしくはない。

市場参加者の関心が集中する米エヌビディア<NVDA>を巡っては、いつまで同社の一人勝ちの状況が続くかは分からない。だが、競合する企業が現れたとしても、AI関連の総需要自体は増加するため、日本の半導体製造装置・材料メーカーの業績にとって追い風が吹く状態が続くだろう。日本株をアンダーウエートにしてきた多くの海外投資家がポジションをニュートラルに修正する足もとの流れに関しても、短期で終息するとは考えにくく、実体を伴う株高との見方が定着すれば、個人投資家もどこかのタイミングで買い越しの姿勢を鮮明にしそうだ。

日銀が3月18~19日の金融政策決定会合でマイナス金利政策の解除に動いたとしても、株高のトレンドに変化はないと考えている。今年の春闘における企業の賃上げ率は4%を上回る水準となるとの試算がある。物価の伸びを上回る賃上げにより、実質賃金は夏頃にプラスに転じる可能性が高く、適度なインフレ環境下での日本経済の「好循環」のシナリオが一層、現実味を帯びてくる。日銀のマイナス金利の解除はこうした景気に対する前向きな見方を後押しすることとなると見込まれ、日本株を売り込む材料にはならないはずだ。日銀の政策変更が視界に入るなかでは、メガバンクなど金融株が物色されるシナリオが想定される。次世代自動車でフルラインアップ戦略を展開するトヨタ自動車 <7203> [東証P]など、大型株主導の相場も当面は続きそうだ。ソフトバンクグループ <9984> [東証P]もNAV(時価純資産)ベースでは割安感がある。

(聞き手・長田善行)

<プロフィール>(みつい・いくお)

1984年からファンドマネージャーとして日本株運用を40年近く続ける。国内銀行投資顧問、英国の投資顧問会社、国内大手信託銀行を経て、投資顧問会社を設立。2013年からアイザワ証券の投資顧問部で日本株ファンドマネージャー。自ら企業調査するボトムアップ運用を続けている。

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