プラチナはレンジ内で軟調、米利下げ観測後退や中国不安が圧迫 <コモディティ特集>
プラチナ(白金)の現物相場は2月、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ観測後退や中国経済の先行き懸念を受けて軟調となり、昨年11月以来の安値865ドル台をつけた。一方、3月に入ると、米ISM製造業景気指数が予想外に低下し、米FRBの利下げが6月に開始されるとの見方が強まり金が急伸したが、プラチナの反応は限られた。
中国で5日に開幕した全国人民代表大会(全人代)で大規模な景気刺激策は期待薄との見方が強く、プラチナの積極的な買いは見送られた。ただ、今後発表される経済指標で米FRBの利下げ期待が高まれば買い戻し主導で上昇するとみられ、中長期的には850~1000ドルのレンジ相場を継続することになりそうだ。
1月の米消費者物価指数(CPI)や米生産者物価指数(PPI)が事前予想を上回り、米FRBの利下げ観測が後退した。1月の米CPIは前年比3.1%上昇と前月の3.4%上昇から伸びが鈍化したが、事前予想の2.9%上昇を上回った。家賃や宿泊費などを含む住居費の上昇が背景にある。米PPIも前月比0.3%上昇と事前予想の0.1%上昇を上回り、5ヵ月ぶりの伸びとなった。サービス価格が大幅に上昇した。
CMEのフェドウォッチでは、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)まで金利据え置きの見方が強まり、6月の利下げ確率が上昇した。一方、1月の米個人消費支出(PCE)デフレータは前年比2.4%上昇と前月の2.6%上昇から伸びが鈍化し、2021年2月以来の低い伸びとなった。前月比で拡大したが、予想通りとなった。また、2月の米ISM製造業景気指数が予想外に低下すると、6月の利下げ開始の見方が強まった。同指数は47.8と前月の49.1から低下し、事前予想の49.5を予想外に下回った。内訳を見ると、新規受注が49.2(前月52.5)、生産は48.4(同50.4)、雇用は45.7(同47.1)に低下した。当面は6~7日にパウエル米FRB議長の議会証言、8日に2月の米雇用統計の発表がある。
●中国の不動産不況に対する懸念も大規模な景気刺激策は見送り
中国の春節休暇での個人消費堅調が伝えられたことに加え、中国当局の株安対策を受けて中国株の下落が一服した。ただ、不動産不況に対する懸念が残っている。中国の不動産開発大手、碧桂園は、約16億香港ドル相当のタームローンファシリティーの不払いと未払利息に関連し、香港で債権者のエバー・クレジットから清算の申し立てを受けたと発表した。碧桂園は昨年10月にドル建て債で事実上のデフォルト(債務不履行)となっていた。最初の審理は5月17日に開かれる。香港の高等法院(高裁)は1月29日に中国恒大集団に清算命令を出しており、不動産市場の混乱が続くと、中国の株式投資は敬遠されることになりそうだ。
中国の全人代が5日から始まり、11日まで開催される。2024年の経済成長率目標を5%前後に設定したが、今年の達成は難しいとみられている。また、成長戦略も示される見通しだが、昨年12月の会議で政策は事前に決定されており、大規模な景気刺激策は期待薄とされた。全人代閉幕後に李強首相は記者会見を行わない予定だが、協議の内容を確認したい。
●NY市場で大口投機家の買い越しは縮小
プラチナETF(上場投信)残高は4日の米国で31.56トン(1月末31.73トン)、2月29日の英国で12.32トン(同12.21トン)、1日の南アフリカで11.73トン(同11.79トン)となった。米国と南アで投資資金が流出したが、英国で安値拾いの買いが入った。
一方、米商品先物取引委員会(CFTC)の建玉明細報告によると、2月27日時点のニューヨーク・プラチナの大口投機家の買い越しは3601枚(前週8495枚)に縮小した。1月2日の2万9039枚をピークとして新規売りが出て縮小傾向にある。900ドル割れの割安水準では買い戻しが入りやすいが、欧米が高金利を維持しており、高値を買い進む向きは少ない。
(MINKABU PRESS CXアナリスト 東海林勇行)
株探ニュース