日本株買い~海外勢復活の兆しも、信用倍率は8年ぶり高水準へ悪化【フィリップ証券】
日本株市場を取り巻く需給環境を主体別売買動向で見ると、2023年の現物委託売買代金の約68%を占めた外国人投資家は4月第1週、現物と先物の合計で8357億円買い越しと、3月最終週の現物と先物合計で1兆1777億円の売り越しから一転して大幅買い越し。現物だけでは1兆1821億円と、2013年4月第2週以来の大きさだ。年初来累計の買い越し額では3月上旬の2兆円超えから3月最終週に2766億円まで減少後、1兆1112億円まで回復。ただ、押し目狙いの買いに加えて配当金受け取りに絡んだ取引による「統計のアヤ」も入っている面もあり、外国人投資家の日本株への強気度を額面通りに受け取ってよいのかは注意が必要だろう。
他方、年金基金の売買動向を映すとされる信託銀行の現物株式の売り越し額が4月第1週に7887億円の売り越しとなった。金融機関による信託銀行経由の「期初の益出し」がかさんだ面があったとみられるなか、信託銀行は年初から一貫した売り越し基調でその年初来の累計額は約5兆円に上る。
外国人投資家のほかに年初来累計ベースで買い越しとなっている主な主体は、事業法人(7435億円)である、株主還元の一環としての自社株買いが引き続き活発に行われている面もあろう。
個人投資家は昨年9月以降買い越し基調に転じた後、昨年12月中旬から今年1月中旬まで売り越しが目立ったものの、今年3月以降買い越しが目立っている。年初来の累計売り越し額も、3/18-22週の1兆2740億円から4月第1週に1954億円まで減少した。
今後の日本株相場動向を占ううえで重要となりそうなのは、2市場(東証・名証)信用取引残高の買い残を売り残で割った「信用倍率」の高さだ。週次の数値である倍率は4/5基準で6.02倍と、昨年の最大値だった5.89倍(10月第1週)を超えて2016年1月第2週(6.04倍)以来の高さとなった。信用買い残の多さは将来の売り要因として、今後の日本株相場の上値を重くする懸念が高まろう。信用倍率が高過ぎない銘柄、または、全体相場の需給悪化の影響を受けにくい中小型銘柄が注目されよう。
また、消費・小売り関連が多い2月決算銘柄の中には好決算を発表しつつも、材料出尽くし的な売りに見舞われる銘柄も多い。PBR(株価純資産倍率)が1倍を大きく下回る銘柄であれば、大幅減益であっても1株当たり純資産が増加することにより株価との乖離が拡大する。その分、株価が下がりにくく、株主還元の方針変更やその他の状況変化によっては減益であっても株価がポジティブに反応する場合もあり得よう。3月決算銘柄の決算発表を迎えるに当たり、押さえておきたい点だろう。
関連銘柄(低PBR銘柄)
日機装<6376>
・1953年設立。インダストリアル(精密機器、ポンプシステム含む)、航空宇宙、深紫外線LEDの3事業の「工業部門」、メディカル事業の「医療部門」を展開。化学用精密ポンプと人工腎臓に強み。
・2/14発表の2023/12通期は、売上収益が前期比8.8%増の1926億円、営業利益が同82.8%減の58.85億円、受注高が同3.3%減。前期の連結子会社(LEWA社およびGeveke社)売却の影響を除く調整後ベースは受注高が同6.7%増、売上収益が同26%増、営業利益が▲59億円から黒字転換。
・2024/12通期会社計画は、売上収益が前期比10.6%増の2130億円、営業利益が同52.9%増の90億円、年間配当が同2.5円増配の30円。同社は炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製ジェットエンジンナセル部品「カスケード」で世界市場シェア90%超と航空機製造の「グローバルニッチ」企業としてだけでなく火力発電向け液体アンモニア用ポンプ開発でCO2排出削減と電力安定供給から注目されよう。
安田倉庫<9324>
・1919年に興亜起業として創立。旧財閥系で首都圏を中心に展開。物流事業と不動産事業を営む。損保ジャパン、明治安田生命保険、東京建物が株主上位3社。関西の中央倉庫<9319>と提携。
・2/2発表の2024/3期9M(4-12月)は、営業収益が前年同期比10.8%増の502億円、営業利益が同2.4%減の21.01億円。主力(売上比率91%)の物流事業は同12.3%増収、セグメント利益が同3.8%増(26億円)。不動産事業は施工工事減により同4.1%減収、セグメント利益が同3.7%減(14億円)。
・通期会社計画は、営業収益が前期比13.8%増の680億円、営業利益が同2.6%増の26億円、年間配当が同1円増配の27円。同社は物流拠点を羽田空港近隣に複数運営。立地の強みで北海道や九州へ緊急配送が可能から医療機器分野顧客に好評。更に昨年3月にエーザイ物流を完全子会社化し国内有数の医薬品物流プラットフォーム作りが進捗。地場運送会社買収で2024年問題へ対応。
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